そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
217 / 231

217話 そして近付く大一番③

しおりを挟む
 肯定の意思とともに、ロロが身構える。
 こちらも全力で行く。人狼姿を纏い、ハルバードを構える。

 先に動いたのはロロだった。シンプルな突撃での距離詰め、そして跳躍。
 単純な軌道、返しにハルバードを振りぬく。
 けどそんなものはロロも織り込み済みだったらしい、いいように足場にされ軌道が変わる。
 咄嗟に姿勢を低くし、目の前でロロの爪が空を切る。
 反撃にハルバードの大振り。だが強引な動き、既にそこにロロはおらず刃が空振る。

 その間にロロは次の動き、思ったより早い!
 変に急所に貰うよりは、と左腕で受け払う。これくらいなら魔力の毛皮で防げるが、切り裂かれるような痛みは走る。
 同時に思う。ハルバードじゃ取り回しが重くて使い物にならない。消失させ、代わりに最初の頃に使ってた軽量な斧へ。
 それに、別に受けに回り続ける必要も無い。ロロが立て直してる間に、こっちも仕掛ける。

 だが身軽になったからといって、ロロは簡単に捕らえられるものでもない。
 振った斧を足場にされ、けどそのパターンは見た。跳び先を見る前に距離を取り、即切り返す。
 場所を予測し、斧を振るう。だが思ったより跳ねが高い、再び足場にされ更に跳ばれる。
 けど、ふわっと浮いての無防備状態。こっちも跳んで追いかけ、すれ違いに一閃。多少ズラされたが、確かな感触。
 しかし今度はこっちが待たれる側。身動きの厳しい空中に、地上からロロが襲い掛かってくる。
 爪は斧の柄で受け止める、が、そのまま詰められる。牙の方は防ぐ手立てが無かった。
 もつれ合いながら不安定な着地、強引にロロを振りほどく。

 仕切り直し、になる前に一気に詰め寄る。
 ロロの着地と同時、斧の横薙ぎ。無理矢理後方によけたロロが態勢を崩す。
 更に追撃、と踏み込み詰める。

 このまま振ればロロの喉元、決着を付けれると思った時。
 不意に浮かぶ迷い、一瞬遅れる斧の振り。
 それが決定的な、ロロの反撃のチャンスとなった。
 タイミングの崩れた斧の振りは体勢を崩す要因となり、その隙を見逃すロロではなかった。
 自分を踏み台にしながら背後に回り込むロロを、止める事はできなかった。


 うつ伏せでロロにのしかかられ、首元に添えられる爪。
 ここから状況を返す手は、もう無い。
 決着はついた、と降りるロロからは、不満の念が伝わってきた。
「結果に納得できない、か?
 …俺自身も意外だったよ。あんな迷いが出るなんて。」
 ロロからの疑問と追究の意思に、立ち上がりながら答える。
「いやさ、最後にちょっと思っちゃったんだよ。ロロのハルルへの想いを、力でねじ伏せちゃっていいのかなって。
 どうしようもない甘さだよね。俺から仕掛けた勝負なのに。ロロは覚悟の上で受けてくれたのに。」
 そして返ってくるロロの答えは、呆れ、そして……。
「…なんだよそれ。じゃあ勝負なんて仕掛けた俺がバカみたいじゃん。」
 ロロの召喚体が、肯定の意思と共に魔力へとほどける。
 最初の印象に釣られて、全く気付いていなかった。
 既にハルルに対してかそれ以上に、俺の事を認めてくれてたって事に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...