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215話 そして近付く大一番①
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「なんだか懐かしいですね、この感じ。」
元日の昼、呼ばれての卓でハルルが言う。
去年と同じように、俺とハルル、キリとショウヤでコンビニおでんを囲んでの卓だ。
ハルルによる召集の為、場所はハルル部屋。相変わらず趣味の品が無い分質素には見えるが、利便性を考えた配置になってるキッチンの生活感は、最初の頃とは違う「慣れ」を感じる。
「で、わざわざ呼び集めた理由は何だ? このタイミングでのんびり過ごす為に呼んだ訳じゃないだろう?」
そう話に切り込んだのはキリだった。
「もちろんそれもあります、けどそれだけではありません。
怪異活性化の一連、その話から離れてた二人への状況の話もしたく、呼ばせてもらいました。」
確かに封印を受けてから、暫く干渉なかったもんな。
…二人?
「もう一人って…ショウヤか?」
「いや、うちだ。うちの妖術じゃ、戦いについていけなかったからな。
けどそれでも戦力になれる物が作られてるらしくて、再招集が来たってわけだ。」
なるほど魔法銃。意外と身近なメリットに繋がるのか。
「単刀直入に、本題に行きます。
『オロチ』との決戦の日が決まりました。6日後です。」
閑話休題、ハルルが場を仕切る。
「オロチ…確かそこの山に封印されてるっていう奴だよな?」
「あぁそうだ。
『龍脈の大蛇』って名前で、ゴーストファインダーのレイドボス指定が入ったんだ。」
そう答えたのはショウヤ。自分でもアプリでレイドスケジュールを見てみる。6日後の予告は、確かにその山を指していた。
そしてハルルがバトンタッチして話を続ける。
「それに伴い、予定より前倒しなので急ぎにはなってしまいますが、こちらもその日を決戦として備える事になりました。
それにどう答えるかはさておき、まずはそれを伝えねばと。」
俺はあくまで任意協力の立場か。
とはいえ聞かれる前から、そのつもりではいた。
「俺は参加したい。補助程度でもまぁ戦力なれるだろうし。」
「うちはその道具次第だから、一旦返答は保留だな。無茶した結果、足手まといはヤだし。」
「それと、これは個人的な話に寄るのですが。」
「なんだ、急に改まって。」
話を切り替えにかかったハルルに、反射的に答える。
「こちらの戦いの中で大きなものに立ち会う事、そしてもうじきこちらの暦で都合のいい節目がある事。
そこで、あちらの世界に帰る事になると思います。」
不意の方向の話に、思考に大根ひとかじりの間がかかった。
「それって、ずっとなのか?」
「分かりません。ですが2年分のこちらの生活の経験、現状の報告と対策、仮に再びこちらに来れるとしても、時間はかかってしまうでしょう。」
「……そうか。」
いつか来る話ではあったんだろうが、いざ直面すると、すぐには言葉が湧いてこなかった。
「あれ、意外とあっさりなんですね。」
「まぁ、いざとなれば俺の方から行く方法もあるだろうし、後生の別れって訳じゃないんだろ?
だから別に深刻になる事でもないかなって。」
「それは、そうですけど。
ただ、こちらに居た時間は短いはずなのに、こちらの世界の事も好きになって。このおでんという料理も、あちらの世界にも似た料理があって、不思議なつながりを感じて。
だから、その行く末への干渉から一歩離れるのが、寂しいというか…怖いです。」
暖房の風の隙間に挟まる冷たい空気が、その雰囲気を増長させる。
「…俺がいるから大丈夫、ってのじゃだめかな?」
「そういうのは一度でも私に勝ってから言ってください。」
「それは…まぁ、そうだな……。」
元日の昼、呼ばれての卓でハルルが言う。
去年と同じように、俺とハルル、キリとショウヤでコンビニおでんを囲んでの卓だ。
ハルルによる召集の為、場所はハルル部屋。相変わらず趣味の品が無い分質素には見えるが、利便性を考えた配置になってるキッチンの生活感は、最初の頃とは違う「慣れ」を感じる。
「で、わざわざ呼び集めた理由は何だ? このタイミングでのんびり過ごす為に呼んだ訳じゃないだろう?」
そう話に切り込んだのはキリだった。
「もちろんそれもあります、けどそれだけではありません。
怪異活性化の一連、その話から離れてた二人への状況の話もしたく、呼ばせてもらいました。」
確かに封印を受けてから、暫く干渉なかったもんな。
…二人?
「もう一人って…ショウヤか?」
「いや、うちだ。うちの妖術じゃ、戦いについていけなかったからな。
けどそれでも戦力になれる物が作られてるらしくて、再招集が来たってわけだ。」
なるほど魔法銃。意外と身近なメリットに繋がるのか。
「単刀直入に、本題に行きます。
『オロチ』との決戦の日が決まりました。6日後です。」
閑話休題、ハルルが場を仕切る。
「オロチ…確かそこの山に封印されてるっていう奴だよな?」
「あぁそうだ。
『龍脈の大蛇』って名前で、ゴーストファインダーのレイドボス指定が入ったんだ。」
そう答えたのはショウヤ。自分でもアプリでレイドスケジュールを見てみる。6日後の予告は、確かにその山を指していた。
そしてハルルがバトンタッチして話を続ける。
「それに伴い、予定より前倒しなので急ぎにはなってしまいますが、こちらもその日を決戦として備える事になりました。
それにどう答えるかはさておき、まずはそれを伝えねばと。」
俺はあくまで任意協力の立場か。
とはいえ聞かれる前から、そのつもりではいた。
「俺は参加したい。補助程度でもまぁ戦力なれるだろうし。」
「うちはその道具次第だから、一旦返答は保留だな。無茶した結果、足手まといはヤだし。」
「それと、これは個人的な話に寄るのですが。」
「なんだ、急に改まって。」
話を切り替えにかかったハルルに、反射的に答える。
「こちらの戦いの中で大きなものに立ち会う事、そしてもうじきこちらの暦で都合のいい節目がある事。
そこで、あちらの世界に帰る事になると思います。」
不意の方向の話に、思考に大根ひとかじりの間がかかった。
「それって、ずっとなのか?」
「分かりません。ですが2年分のこちらの生活の経験、現状の報告と対策、仮に再びこちらに来れるとしても、時間はかかってしまうでしょう。」
「……そうか。」
いつか来る話ではあったんだろうが、いざ直面すると、すぐには言葉が湧いてこなかった。
「あれ、意外とあっさりなんですね。」
「まぁ、いざとなれば俺の方から行く方法もあるだろうし、後生の別れって訳じゃないんだろ?
だから別に深刻になる事でもないかなって。」
「それは、そうですけど。
ただ、こちらに居た時間は短いはずなのに、こちらの世界の事も好きになって。このおでんという料理も、あちらの世界にも似た料理があって、不思議なつながりを感じて。
だから、その行く末への干渉から一歩離れるのが、寂しいというか…怖いです。」
暖房の風の隙間に挟まる冷たい空気が、その雰囲気を増長させる。
「…俺がいるから大丈夫、ってのじゃだめかな?」
「そういうのは一度でも私に勝ってから言ってください。」
「それは…まぁ、そうだな……。」
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