そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
215 / 231

215話 そして近付く大一番①

しおりを挟む
「なんだか懐かしいですね、この感じ。」
 元日の昼、呼ばれての卓でハルルが言う。
 去年と同じように、俺とハルル、キリとショウヤでコンビニおでんを囲んでの卓だ。
 ハルルによる召集の為、場所はハルル部屋。相変わらず趣味の品が無い分質素には見えるが、利便性を考えた配置になってるキッチンの生活感は、最初の頃とは違う「慣れ」を感じる。

「で、わざわざ呼び集めた理由は何だ? このタイミングでのんびり過ごす為に呼んだ訳じゃないだろう?」
 そう話に切り込んだのはキリだった。
「もちろんそれもあります、けどそれだけではありません。
 怪異活性化の一連、その話から離れてた二人への状況の話もしたく、呼ばせてもらいました。」
 確かに封印を受けてから、暫く干渉なかったもんな。
 …二人?
「もう一人って…ショウヤか?」
「いや、うちだ。うちの妖術じゃ、戦いについていけなかったからな。
 けどそれでも戦力になれる物が作られてるらしくて、再招集が来たってわけだ。」
 なるほど魔法銃。意外と身近なメリットに繋がるのか。


「単刀直入に、本題に行きます。
 『オロチ』との決戦の日が決まりました。6日後です。」
 閑話休題、ハルルが場を仕切る。
「オロチ…確かそこの山に封印されてるっていう奴だよな?」
「あぁそうだ。
 『龍脈の大蛇』って名前で、ゴーストファインダーのレイドボス指定が入ったんだ。」
 そう答えたのはショウヤ。自分でもアプリでレイドスケジュールを見てみる。6日後の予告は、確かにその山を指していた。
 そしてハルルがバトンタッチして話を続ける。
「それに伴い、予定より前倒しなので急ぎにはなってしまいますが、こちらもその日を決戦として備える事になりました。
 それにどう答えるかはさておき、まずはそれを伝えねばと。」
 俺はあくまで任意協力の立場か。
 とはいえ聞かれる前から、そのつもりではいた。
「俺は参加したい。補助程度でもまぁ戦力なれるだろうし。」
「うちはその道具次第だから、一旦返答は保留だな。無茶した結果、足手まといはヤだし。」

「それと、これは個人的な話に寄るのですが。」
「なんだ、急に改まって。」
 話を切り替えにかかったハルルに、反射的に答える。
「こちらの戦いの中で大きなものに立ち会う事、そしてもうじきこちらの暦で都合のいい節目がある事。
 そこで、あちらの世界に帰る事になると思います。」
 不意の方向の話に、思考に大根ひとかじりの間がかかった。
「それって、ずっとなのか?」
「分かりません。ですが2年分のこちらの生活の経験、現状の報告と対策、仮に再びこちらに来れるとしても、時間はかかってしまうでしょう。」
「……そうか。」
 いつか来る話ではあったんだろうが、いざ直面すると、すぐには言葉が湧いてこなかった。
「あれ、意外とあっさりなんですね。」
「まぁ、いざとなれば俺の方から行く方法もあるだろうし、後生の別れって訳じゃないんだろ?
 だから別に深刻になる事でもないかなって。」
「それは、そうですけど。
 ただ、こちらに居た時間は短いはずなのに、こちらの世界の事も好きになって。このおでんという料理も、あちらの世界にも似た料理があって、不思議なつながりを感じて。
 だから、その行く末への干渉から一歩離れるのが、寂しいというか…怖いです。」
 暖房の風の隙間に挟まる冷たい空気が、その雰囲気を増長させる。
「…俺がいるから大丈夫、ってのじゃだめかな?」
「そういうのは一度でも私に勝ってから言ってください。」
「それは…まぁ、そうだな……。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...