そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
197 / 231

197話 さらなる向上と③

しおりを挟む
 ハロウィンの事後処理が終わった頃だろう、ナナノハからの呼び出しがあった。

 場所はナナノハの部屋。以前、会議の声が聞こえた通り、作戦室も兼ねているのだろう。
 既にメンバーは揃っていて、座ってる並びの空いてるところに通される。

 メンバーは俺の他にハルル・ナナノハ・アイナ、丁度向かいの残り2人は深くは知らないけど何度か挨拶した事がある。
 要はこのアパートの総戦力だ。
 物が少ないナナノハ部屋の中央卓に地図が広げられてるのはいよいよ何らかのアジトの様相だが、やっぱりアパートの内装ではあるのが、なんだかシュール。

 遠征組の責任者としてはナナノハがリーダーとの事だが、戦術面はハルルが指揮を執ってるようで。
 普段の明るい雰囲気からは打って変わって、同席してるだけで言葉を発しがたい緊張感を漂わせている。


「では、改めて現状の確認から。
 ミシカンド派遣調査チームと東妖衆の混成戦力が今や12、それが分担して丁度この地図の範囲を担ってます。」
 と言いながら、ハルルが芯を引っこめたボールペンで範囲を示す。
 情報処理が進んだからだろう、複数の地図を繋げられて、前に見た時より広域の地図となっている。
 端の方には分布を示す付箋が少なく、この地図の外はさほど問題になっていない事がうかがえる。。
「そして私たちアルファの分担は、この拠点に近いこの一帯。」
 くるりと囲んで指し示したのは、放射状に広がる川のような分布の塊の内のひとつ。
 前に見た時は途切れ途切れだったが、今や中心から長くずっと伸びている。
「随分と法則的だけど、何か理由でもあるのか?」
 向かい席の片方の問いに、ハルルが答える。
「それが共有したい情報でもあります。
 まずはこの分布、これは龍脈という、大地に走る魔力の力線に沿ってるとの事です。」
「待て龍脈ってあの龍脈か? その上でバトってるって、流石にやばいだろ。」
 というアイナの発言に対し、ハルルが返す。
「そう、これまでの戦地の指定からしても、敵の狙いはそれでしょう。
 怪異による魔力上昇での龍脈の活性化、そして龍脈の流れの先にあり龍脈が集まるこの一点。」
 トンと叩きと指し示す中心。辛うじて見える下の地図を見るに、山だ。
「その場所に敵の目的がある、と。」
 そう呟いたのは、向かい席のもう一人の方だった。
「書庫の情報の深い所に、関する話がありました。
 情報が古く名称不明、文献の中では『オロチ』と称されてる古い強大な怪異。
 それが、この山に封印されてる、とありました。」
「でも、それだけ古い存在で、しかも封印し続けられていたのなら、そこまで警戒する程なのかな?」
「実際、その文献が記された時から今までの1200年以上、その通り弱体化により無力となっていました。
 対し封印の方は、具体的な手順は部外秘との事ですが、龍脈を使い封印を補強し、今まで解かれずに至ったそうです。
 しかし今は状況が変わり、封印の補強を行えず、混ざり合った怪異の魔力が集まっていってる。
 封印優位だった力関係が危うくなっている、というのが現状です。」

「で、これからどうするってんだ?」
 1人目の方の向かい席の問いに、ハルルが答える
「当初は復活阻止のつもりでした。しかし、現状から封印を維持しようとすると、時間経過による弱体化を待つしかなく、リスクの高い選択となってしまいます。
 なので、可能な限り力の流入を抑えた上で一度封印を解除、直接戦闘によって弱体化させ再封印、という方針です。」
「でも、それって敵側の思惑通りなんじゃ?」
 思った事をつい言葉にし、それにハルルが反応する。
「そうですね…その点で言えば後手に回ってしまった点はこちらの負けと言わざるを得ません。
 ですが、最終的に勝利に返す為にこの場の被害を最小限に抑え込む、そういう戦いになります。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...