そして俺は召喚士に

ふぃる

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194話 トリック・オア・トリート⑤

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 腹から氷の杭のような矢を受けた大猪が、霧状となり魔力へと還る。
 それと対を成すように、やってきた透明な流体が人の形を成し、表面に色が着き見慣れた姿となる。
 そのまま歩み寄ってくる、救援要請を受けた相手であるナナノハ。知ってはいても、その異形感あふれる登場方法は中々慣れるものではなく、反射的に一歩引いてしまう。

「大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとかな。」
 憑装を解き、ロロも帰還させる。ロロの消え際に、不満げな様子が見えた。
「悪い、救援の手間かけさせて。」
「いえ、戦闘に得手不得手があるのはボクもですし、運が悪かったと割り切りましょう。」
 ソロで全解決できないのは、この間のナナノハの戦いを見て割り切ったつもりだった。けど、いざ実際に文字通り刃が立たないのを見ると、思う所はある。
「それで、何があったか説明お願いできます?」
「あぁ、分かった。」


「なるほど、魔力探知にかかりにくい土の操り人形ですか。」
 こうして落ち着いてから思い返した情報を、自分でも思考を纏めるつもりで言葉にする。
「反応が弱いというよりは、紛らわしいというか。
 色で例えると、濃い灰色の中に黒い点があるみたいな?」
「似た報告は既にあったので、納得がいきました。
 端末に一瞬だけ反応があったとか、何らかの視線のような気配があったとか。
 でも反応の地点に向かっても何も無く、おそらく既にどこかへと移動していたのでしょう、正体を掴めずにいたのです。」
「…ただ、すぐに分身体は消して逃げれるみたいだけど、有用な情報になるのか?」
「反応の正体が分かれば、観測された事自体が有用な情報になります。
 例えば遠隔で操作する魔術は魔力的な繋がりを要するので、分布から情報を探るのに繋がりますし。」
「その分身体自体が自我を持ってる可能性はないのか?」
「…そうだとしたら索敵が破綻する線ですが、状況を聞くに考えづらいとは思います。
 目的が怪異の解放なら、そこまでの自我を持たせる必要はありませんし。」


 それから残りの情報も、順番に話した。
 目的っぽい話の事、勧誘みたいな事をされた事、ゴーストファインダーの奴との関係は不明だった事。
 それを聞いて少しののち、ナナノハからの問い。
「確かに無視できない情報ばかり…ですが、ここまで情報を聞き出すに至った根拠は?」
「まず、いきなりで情報量も多くて、疑うとか考える余裕が無かった…ってのは正直ある。
 けど、流れとはいえ話を聞いてた感じ、あれは話したがりのタイプだと思う。そういうのって嘘で一時的な優位を取るより、嘘は言わず長期的に優位取りたいもんだろうし。
 それに、考え方は無茶苦茶だけど、話に破綻も見当たらなかったし。」
 おそらく引き入れたいというのも、本音だったなのだろう。あまりにも胡散臭かったけども。
「…なるほど。
 一応その『土人形の主』とでも仮称すべきでしょうか、その者の話が嘘という線も警戒しつつ、接触情報として共有・精査してみましょう。」
「大丈夫なのか? これからハロウィンで大がかりな忙しい時なのに。」
「だからこそです。
 連鎖的に拾える情報がある可能性もありますし、危険があるなら前もって警戒してあたるべきです。」
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