そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
194 / 231

194話 トリック・オア・トリート⑤

しおりを挟む
 腹から氷の杭のような矢を受けた大猪が、霧状となり魔力へと還る。
 それと対を成すように、やってきた透明な流体が人の形を成し、表面に色が着き見慣れた姿となる。
 そのまま歩み寄ってくる、救援要請を受けた相手であるナナノハ。知ってはいても、その異形感あふれる登場方法は中々慣れるものではなく、反射的に一歩引いてしまう。

「大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとかな。」
 憑装を解き、ロロも帰還させる。ロロの消え際に、不満げな様子が見えた。
「悪い、救援の手間かけさせて。」
「いえ、戦闘に得手不得手があるのはボクもですし、運が悪かったと割り切りましょう。」
 ソロで全解決できないのは、この間のナナノハの戦いを見て割り切ったつもりだった。けど、いざ実際に文字通り刃が立たないのを見ると、思う所はある。
「それで、何があったか説明お願いできます?」
「あぁ、分かった。」


「なるほど、魔力探知にかかりにくい土の操り人形ですか。」
 こうして落ち着いてから思い返した情報を、自分でも思考を纏めるつもりで言葉にする。
「反応が弱いというよりは、紛らわしいというか。
 色で例えると、濃い灰色の中に黒い点があるみたいな?」
「似た報告は既にあったので、納得がいきました。
 端末に一瞬だけ反応があったとか、何らかの視線のような気配があったとか。
 でも反応の地点に向かっても何も無く、おそらく既にどこかへと移動していたのでしょう、正体を掴めずにいたのです。」
「…ただ、すぐに分身体は消して逃げれるみたいだけど、有用な情報になるのか?」
「反応の正体が分かれば、観測された事自体が有用な情報になります。
 例えば遠隔で操作する魔術は魔力的な繋がりを要するので、分布から情報を探るのに繋がりますし。」
「その分身体自体が自我を持ってる可能性はないのか?」
「…そうだとしたら索敵が破綻する線ですが、状況を聞くに考えづらいとは思います。
 目的が怪異の解放なら、そこまでの自我を持たせる必要はありませんし。」


 それから残りの情報も、順番に話した。
 目的っぽい話の事、勧誘みたいな事をされた事、ゴーストファインダーの奴との関係は不明だった事。
 それを聞いて少しののち、ナナノハからの問い。
「確かに無視できない情報ばかり…ですが、ここまで情報を聞き出すに至った根拠は?」
「まず、いきなりで情報量も多くて、疑うとか考える余裕が無かった…ってのは正直ある。
 けど、流れとはいえ話を聞いてた感じ、あれは話したがりのタイプだと思う。そういうのって嘘で一時的な優位を取るより、嘘は言わず長期的に優位取りたいもんだろうし。
 それに、考え方は無茶苦茶だけど、話に破綻も見当たらなかったし。」
 おそらく引き入れたいというのも、本音だったなのだろう。あまりにも胡散臭かったけども。
「…なるほど。
 一応その『土人形の主』とでも仮称すべきでしょうか、その者の話が嘘という線も警戒しつつ、接触情報として共有・精査してみましょう。」
「大丈夫なのか? これからハロウィンで大がかりな忙しい時なのに。」
「だからこそです。
 連鎖的に拾える情報がある可能性もありますし、危険があるなら前もって警戒してあたるべきです。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...