そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
185 / 231

185話 修学旅行中の波乱⑤

しおりを挟む
 ハルバードが操り人形を切り裂き、素材である木の葉に戻って散る。
 こうやって処理したのも、もう5体目だ。
 より高い位置、建物の陰から出て狙撃の射線に入る場所のは最初のと同じようにキリが対処。棍で銃弾を弾き、反撃の射撃で仕留める。
 特に波乱が起きる事も無く、舗装された区域を駆け抜け、山のふもとの林の前に。


 古びた石造りの鳥居と階段、そこを進めば目的の拠点だろうが、あまりにも露骨。
 それでもここで止まる訳にはいかない、とキリが先に踏み出す。

 何かの接近の気配、咄嗟に飛びのくキリ。
 高台から打ち下ろす形で、弾が地面を撃つ。
「…流石にこのまま素直にとはいかないか。」
 そう呟くキリ。見えた弾道の出所を追うと、葉の屋根に遮られている。
「ここ、狙撃ポイントから見えないよな?」
「どうせ操ってる人形が目になってるんだろ。よくある手法だ。」
 なるほど、攻撃ユニットであると同時に、索敵のビーコンみたいなものでもある訳か。
「それを潰せば狙撃は止まるか?」
「この視界じゃ狙撃は無理だろうな。
 けど、索敵範囲が終わってるのはまずはこっち側だ。こうもうるさいと、人形の場所を探れねぇ。」
 確かに木の葉の揺れこすれる音に紛れて、葉人形の音を聞き分けるのは無理だろう。それはキリも同じらしい。
 けど。
「…キリの射程はどれくらいだ?」
「ここから本体まで届くと思う。けど狙うのに時間要るから、本体狙いはできねぇぞ?」
「つまり実質無限と見ていいんだな?」
「まぁ、そうだな、この場においては。」
「なら、プランはある。」

 狙撃の射線が通らない建物の陰、ここにいる内に魔力探知に集中。
 ロロが居る時や満月の夜ほどの精度ではない。が、今の人狼姿を模した状態でも大分探知は利く。
「相手の索敵距離と攻撃射程、同じだと思うか?」
 把握が曖昧だったところを、キリに確認する。
「と、思う。ここまでのは常に一定距離で動き出してた、探知に入ってすぐ自動攻撃ってとこだろうな。」
 だとしたらあっちの索敵距離は大体把握してる。そして、その長さはこちらの方が上だ。

 時間が止まったかと錯覚するような間、を貫く射撃音。
 交差する枝の隙間を、弾丸が通り過ぎる。
 そして不自然な位置にある葉の塊、敵の葉人形を貫き散らす。
「当たった、のか?」
 脇で見ていたキリがぽつりとつぶやく。
「あぁ、反応が消えたから当たったはずだ。」
 キリが妖術で生成したスナイパーライフルを借り、標的との間の直線状に銃口を置き、放つ。
 重力落下や風の影響とかはここでは存在しないようで、狙った方向の一直線を貫いてくれる。
「なんか、銃なんて初めてなのにこうも当たるの、逆に怖いな。」
「実際の射撃の腕より、当てる、当たって当然という意思が大事なんだよ。」
「なるほど、実銃のイメージより、あくまで魔法の延長線上か」
 狙いをつける時にエイム補正でもかかってるかのような吸いつきを感じたが、そういう事か。

 順当に処理が進み、探知範囲内に残り2体、となったところで相手に動きがあった。
「…どうした?」
 様子を見ていたキリの問いに答える。
「反応が動き始めた。撤退してる?」
「待つだけ無駄と判断したんだろうな。
 移動しながら探知、任せられるか?」
「…やってみる。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...