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178話 修学旅行②
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初日は宿に直行し、一晩経ち。
本格的な行動は2日目の団体行動からだ。
来たのは山の斜面にある寺、黄泉津寺。
林の上に突き出る舞台のような外観は、一度見たら忘れられない印象深さ。だけど上からの一望も壮観の一言。
だけどその風景の脇で目立つのが、ショウヤとハルルだった。
ショウヤの話に、ハルルが耳を傾けている。
「──そしてこの特異なる立地と建築は『空へと至る港』、つまり死者の国に繋がる場所であると考えられた。
だからこの祀られてる像、左は死者を送り届ける者、右は悪いものが来ないよう守る者、とされている。」
「死者の国…私には馴染みの無い概念です。どのようなものなのでしょ?」
「主に昔の人の思想かな。
死後の魂が向かう国があるっていう教えは多くて、例えば善行を──」
ガイドそっちのけ、ハルルに解説するショウヤ。この2人の組み合わせはなんか新鮮な感じだ。
行程に流されるがまま、気が付けば初日の日程が終わり。
落ち着いて見れる時間は少なく、そういうのは明日に回すと割り切ってからは余計に時間が早く感じた。
そして夕食後の自由時間、自販機前の休憩所にハルルが居た。
「どう? 大分熱心な解説受けてたけど。」
自分も缶ジュースを1本買い、隣に座る。
「とても楽しんでます!
ショウヤさんのお陰で、今まで気づけなかったこちらの世界の考え方とか色々知れましたし!
それに料理も目新しいものばかりで、場所も魔力に溢れて、明日はもっとゆっくり見れるんですよね!?」
「あぁ、班の自由行動の日だからな。」
ショウヤが積極的過ぎて心配だったが、どうやら杞憂だったらしい。
…考えてみればそれもそうか。ナナノハほどでなくても早期の人員って事は、相応に好奇心のひとか。
「でも、だからこそ『何も起こらなかった』のが気になります。
こんなに魔力に溢れて、魔力的な要点もあるのに、その存在を見かけないなんて。
なのに、常に見られてるような視線は感じていて……。」
それが視線なのかどうかまでは自分には分からなかったが、確かに一帯を満たす魔力とは別に、妙な気配は感じていた。
「まぁこっちの奴らにも色々あるんだろう。悪いように思わないでやってくれ。」
あの位置情報ゲームアプリ「ゴーストファインダー」は全国を戦場としている。ここも影響を受けてるとしたら、事情は察する。
…なんてしんみりした考えも、また杞憂だった。
「…余計に興味そそられてしまいます!」
「え、監視されてるようで嫌とかじゃなく?」
「警戒されるのは当然でしょう。よそ者は私の方、それを忘れるつもりはありません。でもこちらの魔力生命体がどのようなものか気になって仕方ないです!
それに私の立場上、誰かを監視する事はあっても監視される事は無かったので、なんだか新鮮で!」
ここまで目を輝かせてるハルルを見るのは、いつ以来だろうか。
「…一応言っておくけど、変な干渉はしてやるなよ。」
「分かってますよ。あちらからの接触が無い限り、無理な干渉はしません。」
本格的な行動は2日目の団体行動からだ。
来たのは山の斜面にある寺、黄泉津寺。
林の上に突き出る舞台のような外観は、一度見たら忘れられない印象深さ。だけど上からの一望も壮観の一言。
だけどその風景の脇で目立つのが、ショウヤとハルルだった。
ショウヤの話に、ハルルが耳を傾けている。
「──そしてこの特異なる立地と建築は『空へと至る港』、つまり死者の国に繋がる場所であると考えられた。
だからこの祀られてる像、左は死者を送り届ける者、右は悪いものが来ないよう守る者、とされている。」
「死者の国…私には馴染みの無い概念です。どのようなものなのでしょ?」
「主に昔の人の思想かな。
死後の魂が向かう国があるっていう教えは多くて、例えば善行を──」
ガイドそっちのけ、ハルルに解説するショウヤ。この2人の組み合わせはなんか新鮮な感じだ。
行程に流されるがまま、気が付けば初日の日程が終わり。
落ち着いて見れる時間は少なく、そういうのは明日に回すと割り切ってからは余計に時間が早く感じた。
そして夕食後の自由時間、自販機前の休憩所にハルルが居た。
「どう? 大分熱心な解説受けてたけど。」
自分も缶ジュースを1本買い、隣に座る。
「とても楽しんでます!
ショウヤさんのお陰で、今まで気づけなかったこちらの世界の考え方とか色々知れましたし!
それに料理も目新しいものばかりで、場所も魔力に溢れて、明日はもっとゆっくり見れるんですよね!?」
「あぁ、班の自由行動の日だからな。」
ショウヤが積極的過ぎて心配だったが、どうやら杞憂だったらしい。
…考えてみればそれもそうか。ナナノハほどでなくても早期の人員って事は、相応に好奇心のひとか。
「でも、だからこそ『何も起こらなかった』のが気になります。
こんなに魔力に溢れて、魔力的な要点もあるのに、その存在を見かけないなんて。
なのに、常に見られてるような視線は感じていて……。」
それが視線なのかどうかまでは自分には分からなかったが、確かに一帯を満たす魔力とは別に、妙な気配は感じていた。
「まぁこっちの奴らにも色々あるんだろう。悪いように思わないでやってくれ。」
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…なんてしんみりした考えも、また杞憂だった。
「…余計に興味そそられてしまいます!」
「え、監視されてるようで嫌とかじゃなく?」
「警戒されるのは当然でしょう。よそ者は私の方、それを忘れるつもりはありません。でもこちらの魔力生命体がどのようなものか気になって仕方ないです!
それに私の立場上、誰かを監視する事はあっても監視される事は無かったので、なんだか新鮮で!」
ここまで目を輝かせてるハルルを見るのは、いつ以来だろうか。
「…一応言っておくけど、変な干渉はしてやるなよ。」
「分かってますよ。あちらからの接触が無い限り、無理な干渉はしません。」
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