そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
165 / 231

165話 同盟結成?①

しおりを挟む
 それからしばらく日が経った、ある日の事。
 買い出しから帰ってきた時に「らしくない」姿が見えた。

 同じアパートの逆端、白狐の獣人アイナの部屋。そのベランダに、その部屋主は居た。
 俺は俺自身の事で手一杯であまり関わる事はなかったが、それでも時々見かける事はあった。
 元気が一番良かったのは最初、オカルト研究同好会の活動部屋で出会った時。その後は日が経つにつれ、じわじわとテンションが下がっていってるようだった。
 そして今、手すりにもたれかかって黄昏ていた。
 こういう場合、そっとしておいてあげた方がいいだろう。そう思い、歩を進める。

「おい。おめー今見ないふりしてスルーしようとしただろ。」
 やべ、ばれた。
「いや、まぁ、触れない方がいいのかなぁって。」
「そうだ、おめーは『こっちのモン』だよな?」
「『こっち』って、魔界側の人じゃないって意味で?」
「そーだよ。この辺、異界の奴らが幅利かせてっけど、お前確か違っただろ?
 ちょっとツラかせや。」


「で、どういう用件だよ。」
 荷物だけ自室の所に置いてきて、アイナの部屋のベランダ前へと。
「そう、同盟組もうぜ同盟! こっちのモン同士でさ! えーとお前……。」
「ユートだ。とりあえず落ち着いて話聞かせろ、最初から。」
 …そういえば最初に会った時、流れに負けて名乗ってすらいなかった気がする。

「なんか最近異界の奴ら増えただろ?」
「そう、らしいな。」
「もうここら一帯、そいつらの管轄みたいなもんじゃん。」
「そう、かなぁ…?」
「なんかヤだろ。あたしらの世界の事なのに、よその世界の奴らに任せるなんて。
 こっちの世界の問題くらい、こっち側で解決したいだろ。」
「…一応、あっちの世界にとっても関係ある事らしいよ。こっちの魔力増大に共鳴して、あっちも異変が起きてるとかなんとか。
 それに、ある程度は事の成り行きは聞いて知ってるけど、立場上はそっちの方が上じゃないの?」
 情報源として東妖衆に頼る所も大きいようだし、それ以外でも魔界組がこっちでの生活で東妖衆を頼ってる所は大きいだろう。
 加えてほぼ形だけだろうとはいえ、わざわざお目付け役としてアイナを付けているのも、手綱という面もあるのだろう。
「だとしても実感がねーんだよ! 戦力がほぼあいつらだし、その細かい指揮もそっちに詳しいあいつら側だし!
 マリ姐から大まかな指示は来て伝えちゃいるけど、人数多いしそれぞれの戦力も把握しきれないし、『細かい判断は任せる』しかできてねーの!」
 柵から身を乗り出しながら、アイナが言葉を続ける。
「だから、立場復権させんだよ。けどあの陰陽師の奴はもう意地もなんもねぇし、お前がなんか戦力になれ。」
「いや俺は別に現状のままでも何も──」
「お前ちょっと手伝え。10分後な。」
 返事を待たず、アイナは部屋に引っ込んでしまった。
 …とりあえず乗ったように振舞って、てきとーなとこで誤魔化す方が良さそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...