152 / 231
152話 試行錯誤⑥
しおりを挟む
不意に、ウルフの接続が切られる感覚。だけどウルフが消失した訳ではなく、まだそこにいる。
独立して動き襲い掛かってくるウルフを、咄嗟に長柄の斧を作り出し、柄で防御。
こんなファーストコンタクトにはなったが、確かに「自分でない何か」がウルフに宿っていた。
柄に噛み付くウルフを押し返す。弾いた体躯は空中で身をひねり、爪の音を僅かに響かせフローリング上に軽やかに着地する。
思惑は通った。次のプランを考える為、一旦ウルフを戻す。
…戻せない。拒否された? 例えるなら回線切れのような感覚。
ウルフは消滅せず、少しの距離を空け、こちらに警戒の様子を見せている。
術に慣れて、召喚の維持時間も伸びてきている。とはいえこちらの操作を受け付けない状態、それでいて維持の為の魔力が俺から取られているんだとしたら、それはまずい状況。
それに、ここで暴れられると部屋が大変な事になってしまう。
…けど、鎮圧するにもどうやって?
自分のこの斧の戦闘スタイルは、ウルフを従える事を前提としたもの。小回りを要する事をウルフに任せ、それで足りない威力を補う為の斧。
つまりウルフがこちらにいない今、斧だけでの戦闘なんて、不完全もいいとこだ。加えてリーチと威力と防御の為の長い柄も、部屋という狭さの中では裏目でしかない。
なんて考えてる間に、ウルフの跳躍。
策を練る猶予なんて無い、斧の刃を逆にして振るう。
手荒な手段にはなってしまうが、とにかく暴れさせたくはない。刃の背面がウルフを捉える。
けど手応えが無い。斧を足場とし、ウルフが更に上へと跳躍する。
とはいえそこまで高さに余裕は無い天井、進行を邪魔する位置に置くように、斧を振る。
再びウルフが斧を足場に反転跳躍、少し離れた所に着地する。位置取りが丁度いい、ウルフの背後にキッチンそして玄関側。
とりあえず目的のひとつ、部屋荒らしは阻止できそうだ。
だけどそれはそれで余計に狭い場所、こっちの武器には不利。
せめてもとエンパイアハントで使ってるものと同じように、長さ普通の斧に。この短さに、懐かしさを感じる。
こちらから詰め寄ると、警戒して寧ろあちらが引いてくれる。
けどそれだけで追い詰めるには至らない。途中で意を決したように、不意に踏み込んでくる。
どうにか反応し、同じように斧の背で迎え撃つ。やはり手応えは無くウルフは壁蹴りのように跳ね、玄関のドアを足場に再び仕掛けてこようとする。
けどそこで想定外の事。ドアを蹴ろうとしたウルフの足が、僅かなずり落ちの時にドアノブに引っかかる。
壁蹴りは勢いを失い不発。不安定な体勢の空中から、着地と同時に飛びのく。
その退路にあったはずの障壁は、先ほどの蹴りで開け放たれていた。
…まってそれはそれでヤバい。逃げられたら捕縛が無理なんてもんじゃない。
誰か頼ろうにもそんな余裕──
…いや、既にそこにいた。物音から様子を身に来たのだろう、玄関脇までハルルが来ていた。
ハルルの方が邪魔と判断したのだろう、ウルフがハルルの方に襲い掛かる。声をかける猶予なんて無いままに。
「えっと……これはどういう状況なのでしょうか?」
だがそんな心配なんていらなかったらしい。
事は一瞬、ウルフを地面に押さえ付ける形で制圧完了していた。
独立して動き襲い掛かってくるウルフを、咄嗟に長柄の斧を作り出し、柄で防御。
こんなファーストコンタクトにはなったが、確かに「自分でない何か」がウルフに宿っていた。
柄に噛み付くウルフを押し返す。弾いた体躯は空中で身をひねり、爪の音を僅かに響かせフローリング上に軽やかに着地する。
思惑は通った。次のプランを考える為、一旦ウルフを戻す。
…戻せない。拒否された? 例えるなら回線切れのような感覚。
ウルフは消滅せず、少しの距離を空け、こちらに警戒の様子を見せている。
術に慣れて、召喚の維持時間も伸びてきている。とはいえこちらの操作を受け付けない状態、それでいて維持の為の魔力が俺から取られているんだとしたら、それはまずい状況。
それに、ここで暴れられると部屋が大変な事になってしまう。
…けど、鎮圧するにもどうやって?
自分のこの斧の戦闘スタイルは、ウルフを従える事を前提としたもの。小回りを要する事をウルフに任せ、それで足りない威力を補う為の斧。
つまりウルフがこちらにいない今、斧だけでの戦闘なんて、不完全もいいとこだ。加えてリーチと威力と防御の為の長い柄も、部屋という狭さの中では裏目でしかない。
なんて考えてる間に、ウルフの跳躍。
策を練る猶予なんて無い、斧の刃を逆にして振るう。
手荒な手段にはなってしまうが、とにかく暴れさせたくはない。刃の背面がウルフを捉える。
けど手応えが無い。斧を足場とし、ウルフが更に上へと跳躍する。
とはいえそこまで高さに余裕は無い天井、進行を邪魔する位置に置くように、斧を振る。
再びウルフが斧を足場に反転跳躍、少し離れた所に着地する。位置取りが丁度いい、ウルフの背後にキッチンそして玄関側。
とりあえず目的のひとつ、部屋荒らしは阻止できそうだ。
だけどそれはそれで余計に狭い場所、こっちの武器には不利。
せめてもとエンパイアハントで使ってるものと同じように、長さ普通の斧に。この短さに、懐かしさを感じる。
こちらから詰め寄ると、警戒して寧ろあちらが引いてくれる。
けどそれだけで追い詰めるには至らない。途中で意を決したように、不意に踏み込んでくる。
どうにか反応し、同じように斧の背で迎え撃つ。やはり手応えは無くウルフは壁蹴りのように跳ね、玄関のドアを足場に再び仕掛けてこようとする。
けどそこで想定外の事。ドアを蹴ろうとしたウルフの足が、僅かなずり落ちの時にドアノブに引っかかる。
壁蹴りは勢いを失い不発。不安定な体勢の空中から、着地と同時に飛びのく。
その退路にあったはずの障壁は、先ほどの蹴りで開け放たれていた。
…まってそれはそれでヤバい。逃げられたら捕縛が無理なんてもんじゃない。
誰か頼ろうにもそんな余裕──
…いや、既にそこにいた。物音から様子を身に来たのだろう、玄関脇までハルルが来ていた。
ハルルの方が邪魔と判断したのだろう、ウルフがハルルの方に襲い掛かる。声をかける猶予なんて無いままに。
「えっと……これはどういう状況なのでしょうか?」
だがそんな心配なんていらなかったらしい。
事は一瞬、ウルフを地面に押さえ付ける形で制圧完了していた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる