そして俺は召喚士に

ふぃる

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141話 夜明け①

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 気が付いた時、俺は手を後ろで縛られ、土の上にいた。

 何があったか思い返す。
 怪異を倒したと思ったらもう1体いて、そいつがソウクロウに襲い掛かって。
 それを止めたはいいけど、弾いた槍に左腕をやられて。
 …確かに受けたはずの傷が無い。
 その後確か…だめだ、まだ頭が痛い。


「気が、ついたか?」
 覇気の無い声、その主のソウクロウ。
 周りをよく見ると、何かに備えていたのだろう、ここを囲むように紙人形が4体配備されている。
「一体何が──」
「その前に答えろ。お前のフルネームは何だ?」
「…長良 悠斗ながら ゆうと。」
「この僕とお前の出会いはいつ、どこだ?」
「去年の9月、学校近くのバス停で。」
「7×6は?」
「…42?」
「無事、正気に戻ったようだな。」
「いやまって最後のは何だよ。」
 そうツッコむ余裕はあるんだな、と自分でもひと安堵。

 落ち着いて思い出す、うっすらとした意識の中の記憶。怪異2体を倒し、その後ソウクロウに襲い掛かった自分。
 夢だった、なんてオチではない事は、ソウクロウの様子からして明らか。
「それで一体何が…いや、俺は何をしたんだ…?」
 現状把握を進めるよりも、怖さが溢れてきた。
 自分の意思ではなかったにせよ、その原因を作ったのは自分。その結果、何をしてしまったのか……。
「…警戒を怠った僕にも責任はある。だから思い詰めるな。」
 そう言い、脇に置いていた槍を持ち上げ示す。あの不意打ちしてきた方のが持ってた槍だ。
 よく見ると、刃の部分がドリル状にねじった骨のような物だ。
 …こうして遠目で見てるだけでも気味が悪い。吐瀉物のにおいを嗅いでる感覚に近い。
「原因となったのはこの槍の先。複数の呪具を溶かして混ぜ合わせた物のようだ。
 これに斬られた事で、内包されていた西洋の古い呪いにかかってしまった。」
 聞きながら、徐々に記憶がはっきりしてくる。
 あの時の体の感覚、武器として使った部位。そしてソウクロウの情報で、ひとつの答えに至る。
「……人狼か。」
「知っているのか。」
「流石にファンタジーの中でも有名すぎるからな。」
 でも自分がそれになったというの、実感が湧かない。
 と思い始めると昨日の記憶がフラッシュバックして、気持ちをどこに落ち着ければいいのか分からなくなる。
「呪いを祓うとか、そういうのはできないのか?」
「単純に消失させればいいだけの怪異と違って、お前自身と混じる呪いだけというのは非常に困難だ。
 強引に取り除くだけならできるだろうが、どんな影響が残るかもわからん。
 それに西洋の魔術に関しては専門外だ。人狼の記録を探す所から始めねばならん。」
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