そして俺は召喚士に

ふぃる

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139話 連戦③

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 あれから2日後の夕暮れ、例によってソウクロウと共に。
 標的の発見から戦闘への移行まで、もう慣れたものだった。

 対象怪異は「屋根渡り」とよばれるもの。「何かが屋根の上を走り渡っていった気がする」という錯覚が誇張され、妖怪として語られはじめた存在。
 だけど目の前にいるのは、二尾の大イタチ。明らかに他の怪異も混じってる。


 その屋根渡りが巨躯での突撃、それはソウクロウが張った壁に阻まれる。
 だけどその壁を回り込むよう胴体をねじり、尻尾を振るう。
 そこに斧でカウンター。斬撃こそ被毛に止められダメージには至らないが、屋根渡りの攻撃を止める。
 途中まで振られた尻尾の先に空気の刃が飛び、木に深い跡を残す。

 飛びのき、体勢を立て直そうとする屋根渡り。
 だがそこに、ウルフによる追撃。不安定なままの空中を捕らえ、叩き落とす。
 その隙にソウクロウがワイヤー状の魔力で拘束。追撃として武器となる尻尾を斧で切り落とす。


「判断と行動が板についてきたな、お前も。」
 浄化の為の紙人形5体を取り出しながら、ソウクロウが屋根渡りに歩み寄る。
「まぁ、こんだけ経験重ねちゃ、さすがにな。」
「初めに出会った時には、録に術も扱えんかったのにな。
 今となっては最早頼もしい限りだ。」
 瞬間、紙が破けるような音とともに、屋根渡りの拘束の一部がほどける。
「…まだ余力があったか。」
 ソウクロウが拘束の紙人形を追加、さっきよりも念入りにワイヤー状の魔力で縛る。
 そして陣を敷き、円と五芒星がえがかれる。

 同時に、背後から物音。反射的にそっちに目が行く。
 草木の陰から現れる、別の怪異。
 長物を持った、ローブを被った人のような容貌。鎌ではなく槍だが「死神」というのが最初に浮かんだ印象だ。
 存在を推察する暇も無く、それが槍を振りかぶる。
「ソウクロウ避けて!」
 目線、構え、狙いはソウクロウだ。
 斧も振るうが、同時に動かしたウルフの方が初速がある。本体に飛びつき、制圧を図る。
 しかし槍の勢いは止まらず、そいつの手からすっぽ抜ける。それに運よく遅れた斧が当たり弾く。
 刃はソウクロウの所までは届かなかったが、弾き方が悪く、槍の刃先が俺の左腕から血を弾く。
 油断から覚悟の薄れてた、負傷の痛み。ソウクロウの叫び声が聞こえるが、それを言語として受ける意識の余裕は無かった。
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