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124話 訪れる変化⑤
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目立つ大通りから外れ、自宅の前に。
首後ろの毛に何かが張り付いてる感触はまだ残ってる。これを追って来てくれるといいのだが。
「今一度問おう。何をしている?」
ソウクロウのその声は、2階を挟んだ屋根の上から。もうそれくらいじゃ驚かなくなってきた。
紙人形をいくつか纏い、ゆっくり直に降下してくる姿にも、最早何の意外性も無い。
ドアの方に目をやりながら道を開け、意思伝達を試みる。伝わってくれるといいが……。
「入れ、と?」
うなずき、ドアノブに手をかけるソウクロウを邪魔しない事で意思表示。
ソウクロウの後を追う形で、自分も室内へと。
よかった、鍵はかけれてなかったが、部屋荒らされてはいなかった。
そして状況を見て何かを探り、ソウクロウは察してくれたようだ。
「なるほど、そういう事か。
して、そっちの霊体の方は言葉は発せれないのか?」
…異常事態過ぎて思考から抜けて、試して無かったな、そういや。
「あ、あー、どうだろう、言葉になってる?」
「発声できているな。それに早く気付いていれば、事は楽であったろうに。」
「それは…なんか、ごめん。」
「そんな事より、本題に入ろうか。」
「それで『そういう事か』ってどういう事なんだ?」
「俗に言う幽体離脱というものだ。意思が肉体から剥離し、幽体として漂うというもの。
だがお前の場合、妖術に知見があり、かつ明確な妖術イメージがあるが故に、少々変わった形となったのだろう。」
「その…どうにかできないか?」
「類例を対処した経験はある。おそらく問題無い。
始めようか。体に触れる位置まで来い。」
「おそらくって……。」
不安はあるが、他に手は思いつかない。指示された場所、自分の体の隣に着き、ソウクロウが何かを始める。
眠気に似た意識の朦朧、今の体の感覚が無くなっていき。
そして気が付いた時には、元の人間の体だった。
まだぼんやりする意識の中、時計を見るにさっきから10分と経ってなくて。ソウクロウはまだ隣に控えていて。
…体が重く感じる。元々これだったはずなのに、慣れって怖い。
「…ありがと、助かった。」
「いや、いい。何が起こってもおかしくない予兆は見えていたからな。
とはいえまさか、それに貴様が巻き込まれるとは思わなかったが。」
「予兆?」
「最近、妙なのだ。この辺り一帯の妖力の高さが。
…これも例のゲームとやらの影響か。」
例のゲーム…スマホゲーム「ゴーストファインダー」の事か。
実際の心霊スポットがターゲット指定され、それを3陣営に分かれて奪い合う、という位置情報ゲームアプリ。
しかしその実、これまでその現地を回って調べたが、その心霊現象や土地に争奪の関心を集める事で活性化させるものだった。
「まぁ、その話は今度にしよう。
今は休んでおくがいい。」
首後ろの毛に何かが張り付いてる感触はまだ残ってる。これを追って来てくれるといいのだが。
「今一度問おう。何をしている?」
ソウクロウのその声は、2階を挟んだ屋根の上から。もうそれくらいじゃ驚かなくなってきた。
紙人形をいくつか纏い、ゆっくり直に降下してくる姿にも、最早何の意外性も無い。
ドアの方に目をやりながら道を開け、意思伝達を試みる。伝わってくれるといいが……。
「入れ、と?」
うなずき、ドアノブに手をかけるソウクロウを邪魔しない事で意思表示。
ソウクロウの後を追う形で、自分も室内へと。
よかった、鍵はかけれてなかったが、部屋荒らされてはいなかった。
そして状況を見て何かを探り、ソウクロウは察してくれたようだ。
「なるほど、そういう事か。
して、そっちの霊体の方は言葉は発せれないのか?」
…異常事態過ぎて思考から抜けて、試して無かったな、そういや。
「あ、あー、どうだろう、言葉になってる?」
「発声できているな。それに早く気付いていれば、事は楽であったろうに。」
「それは…なんか、ごめん。」
「そんな事より、本題に入ろうか。」
「それで『そういう事か』ってどういう事なんだ?」
「俗に言う幽体離脱というものだ。意思が肉体から剥離し、幽体として漂うというもの。
だがお前の場合、妖術に知見があり、かつ明確な妖術イメージがあるが故に、少々変わった形となったのだろう。」
「その…どうにかできないか?」
「類例を対処した経験はある。おそらく問題無い。
始めようか。体に触れる位置まで来い。」
「おそらくって……。」
不安はあるが、他に手は思いつかない。指示された場所、自分の体の隣に着き、ソウクロウが何かを始める。
眠気に似た意識の朦朧、今の体の感覚が無くなっていき。
そして気が付いた時には、元の人間の体だった。
まだぼんやりする意識の中、時計を見るにさっきから10分と経ってなくて。ソウクロウはまだ隣に控えていて。
…体が重く感じる。元々これだったはずなのに、慣れって怖い。
「…ありがと、助かった。」
「いや、いい。何が起こってもおかしくない予兆は見えていたからな。
とはいえまさか、それに貴様が巻き込まれるとは思わなかったが。」
「予兆?」
「最近、妙なのだ。この辺り一帯の妖力の高さが。
…これも例のゲームとやらの影響か。」
例のゲーム…スマホゲーム「ゴーストファインダー」の事か。
実際の心霊スポットがターゲット指定され、それを3陣営に分かれて奪い合う、という位置情報ゲームアプリ。
しかしその実、これまでその現地を回って調べたが、その心霊現象や土地に争奪の関心を集める事で活性化させるものだった。
「まぁ、その話は今度にしよう。
今は休んでおくがいい。」
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