118 / 231
118話 撃退を成し①
しおりを挟む
意識がうっすらと戻ってくる。
程々のベッド、見覚えはある天井。ここはあの医務室か。
…なにやらお腹のところに重みがある。
触ってみると弾力のあるざらざら、特に温度は感じない。
最初の時以来まともに触れはしなかったが、間違える訳は無い。あの子だ。
…このままじゃちょっと起き上がれない。寝てそうだけど、どかして大丈夫かな?
いやちょっと動いた。起きてるなこいつ。
「気が付いた?」
というエンの声。
ちょっと子供ドラゴンの場所をずらさせてもらいながら、身を起こす。
「大体の察しはついてるけど、一応何があったか聞かせてくれる?」
何が起こったのか自分でも明確に把握できた訳ではないが、気を失う前の事を思い返す。
「確かこの子に呼ばれて、引っ張られるような変な感覚がして。
その後、この子に乗り移ったような感じになって、魔力が切れて誰かが拾ってくれるところで……。」
自分で言ってて、実は夢だったんじゃないかと思うような話だな。
「意識の過剰接続ね。
本来なら竜騎手が竜と連携するための手段だけど、パワーバランスが偏って一方的に取り込まれるようになってしまった、その結果。」
「…それで無茶させちゃったみたいなんだけど、こいつは大丈夫なのか?」
「もう衰弱の方は心配いらないくらいには回復してる。
だけど魔力を消費しすぎちゃったから、当面は安静と経過観察ね。」
という事は、こいつが休む場所として「ここ」を選んだのか?
そういえばツノにかけてあった輪が無い。前に着けてたものは騒動で紛失したのかもしれないけど、改めて着けられてないのは不要になったからだろう。
「全く、その子もだけど、あなた自身も無茶して……。
でも、その活躍もあったから、最悪の被害は避けれた。倒壊は無かったし、軽い修繕で済むって。」
相変わらずこいつの感情表現は見た目では分からない。
けど、今なら分かる。こいつはこの状況が「良い」んだ。
そして安心しきってるのを見て、俺もそれに安堵を感じてる。
いつの間にかあの少し離れた距離感に慣れて、それが日常になっていた。
それが今の距離に居てくれる事がうれしいくらいに、こいつとの時間が特別になっていた。
けど……。
「それでひとつ伝言を頼まれてたんだけど。」
そう改めて切り出すエン。
それを聞きじんわり思い出した事が、答え合わせのように発せられる。
「転移ゲートの目途が立ったって。
明日の昼前だから、今日が最後の……。」
程々のベッド、見覚えはある天井。ここはあの医務室か。
…なにやらお腹のところに重みがある。
触ってみると弾力のあるざらざら、特に温度は感じない。
最初の時以来まともに触れはしなかったが、間違える訳は無い。あの子だ。
…このままじゃちょっと起き上がれない。寝てそうだけど、どかして大丈夫かな?
いやちょっと動いた。起きてるなこいつ。
「気が付いた?」
というエンの声。
ちょっと子供ドラゴンの場所をずらさせてもらいながら、身を起こす。
「大体の察しはついてるけど、一応何があったか聞かせてくれる?」
何が起こったのか自分でも明確に把握できた訳ではないが、気を失う前の事を思い返す。
「確かこの子に呼ばれて、引っ張られるような変な感覚がして。
その後、この子に乗り移ったような感じになって、魔力が切れて誰かが拾ってくれるところで……。」
自分で言ってて、実は夢だったんじゃないかと思うような話だな。
「意識の過剰接続ね。
本来なら竜騎手が竜と連携するための手段だけど、パワーバランスが偏って一方的に取り込まれるようになってしまった、その結果。」
「…それで無茶させちゃったみたいなんだけど、こいつは大丈夫なのか?」
「もう衰弱の方は心配いらないくらいには回復してる。
だけど魔力を消費しすぎちゃったから、当面は安静と経過観察ね。」
という事は、こいつが休む場所として「ここ」を選んだのか?
そういえばツノにかけてあった輪が無い。前に着けてたものは騒動で紛失したのかもしれないけど、改めて着けられてないのは不要になったからだろう。
「全く、その子もだけど、あなた自身も無茶して……。
でも、その活躍もあったから、最悪の被害は避けれた。倒壊は無かったし、軽い修繕で済むって。」
相変わらずこいつの感情表現は見た目では分からない。
けど、今なら分かる。こいつはこの状況が「良い」んだ。
そして安心しきってるのを見て、俺もそれに安堵を感じてる。
いつの間にかあの少し離れた距離感に慣れて、それが日常になっていた。
それが今の距離に居てくれる事がうれしいくらいに、こいつとの時間が特別になっていた。
けど……。
「それでひとつ伝言を頼まれてたんだけど。」
そう改めて切り出すエン。
それを聞きじんわり思い出した事が、答え合わせのように発せられる。
「転移ゲートの目途が立ったって。
明日の昼前だから、今日が最後の……。」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる