116 / 231
116話 災禍と相対し①
しおりを挟む
「緊急事態です!
ヒュージ・フラベラの群れ、来ます!」
鳴り響く鐘の音、明らかにただ事ではないナナノハの伝令。
先に反応したのはエンだった。
「何があったの?」
「ヒュージ・フラベラの軌道が例年より大きく変動、冒険団の対処が十全に届かず、多数の逃しが来るとの事です。
エンさんも助力を!」
「分かった。」
「ユートさんも一緒に。その方が安全です。」
「安全がどうとか、そんな大ごとなのか? そのヒュージなんとかってやつは。」
エンが別行動となり、前を歩くナナノハに聞く。
「『ヒュージ・フラベラ』というのは空を泳ぐ巨大な魔物、その群れは通行するだけで災害のようなものです。
本来なら街の外で対処をするのですが、それをあちらに覚えられたのでしょうか、その場所をさけて来てしまったようです。」
「災害って…そんなになのか?」
「見れば分かると思います。」
周りも既に動き始めていて、慌ただしくなってる。
中庭に扉が面した倉庫から物資を運び出す、ここの竜人達。
事前に予期はしてたのだろう。手早い団体行動だ。
そしてカプセルのようなものを、それぞれいくつか抱えて空へと飛び立っていく
その向こうにあるものが見えるまで、そう時間はかからなかった。
浮遊する巨大なクジラの群れ。距離感覚がおかしくなる程のサイズだ。
建物群より少しだけ高い所を泳いでいる。全体がゆるやかな丘になってる街だ、このままの軌道でいくといずれ建物に当たる。
…そういう事か。
そして竜人達とは別の所から、飛び立つ姿ひとつ。
純白の竜の上に乗る真っ黒の騎手。あれはエンか。
先陣を切り、周囲に雷を球体状に展開、そしてそれを弾けさせる。
「あれ、大丈夫なのか?」
「驚かせて進路をズラすのが目的ですし、威力は下げてるでしょう。」
確かに派手に炸裂させてる割には、周囲の建物に焦げ跡ひとつ付いていない。
そしてビビったクジラが少し横に道を逸れる。同時に少し高度が下がったのもいるのか、建物との接点で砂埃が舞う。
その次に構える形で、さっきの竜人部隊が対処にあたる。
閃光爆弾だろうか、いくつものフラッシュが見える。
それでも効力が低いのか、中々進路を変えてくれない。
「…苦戦していますね。」
「ナナノハは行かないのか?」
「残念ですが、ボクの戦い方はこの場所とは相性が悪く……。」
そうか、そうだよな。市街地じゃ行動に制限がかかる事もあるか。
かく言う自分も、この状況で別に何かできるわけでもない。もどかしい。
立ち止まったところで、子供ドラゴンが追い付いてくる。
付いてきてるのは確認してきたが、それでもいつものように一定の距離を保っていた。
それが、今は寄ってきてくれてる。漠然とした動きではなく、明らかに自分に向かって。
こんな時に嬉しくなってしまってるところに、短く一言、頭の中に響いた。
『力、貸して。』
ヒュージ・フラベラの群れ、来ます!」
鳴り響く鐘の音、明らかにただ事ではないナナノハの伝令。
先に反応したのはエンだった。
「何があったの?」
「ヒュージ・フラベラの軌道が例年より大きく変動、冒険団の対処が十全に届かず、多数の逃しが来るとの事です。
エンさんも助力を!」
「分かった。」
「ユートさんも一緒に。その方が安全です。」
「安全がどうとか、そんな大ごとなのか? そのヒュージなんとかってやつは。」
エンが別行動となり、前を歩くナナノハに聞く。
「『ヒュージ・フラベラ』というのは空を泳ぐ巨大な魔物、その群れは通行するだけで災害のようなものです。
本来なら街の外で対処をするのですが、それをあちらに覚えられたのでしょうか、その場所をさけて来てしまったようです。」
「災害って…そんなになのか?」
「見れば分かると思います。」
周りも既に動き始めていて、慌ただしくなってる。
中庭に扉が面した倉庫から物資を運び出す、ここの竜人達。
事前に予期はしてたのだろう。手早い団体行動だ。
そしてカプセルのようなものを、それぞれいくつか抱えて空へと飛び立っていく
その向こうにあるものが見えるまで、そう時間はかからなかった。
浮遊する巨大なクジラの群れ。距離感覚がおかしくなる程のサイズだ。
建物群より少しだけ高い所を泳いでいる。全体がゆるやかな丘になってる街だ、このままの軌道でいくといずれ建物に当たる。
…そういう事か。
そして竜人達とは別の所から、飛び立つ姿ひとつ。
純白の竜の上に乗る真っ黒の騎手。あれはエンか。
先陣を切り、周囲に雷を球体状に展開、そしてそれを弾けさせる。
「あれ、大丈夫なのか?」
「驚かせて進路をズラすのが目的ですし、威力は下げてるでしょう。」
確かに派手に炸裂させてる割には、周囲の建物に焦げ跡ひとつ付いていない。
そしてビビったクジラが少し横に道を逸れる。同時に少し高度が下がったのもいるのか、建物との接点で砂埃が舞う。
その次に構える形で、さっきの竜人部隊が対処にあたる。
閃光爆弾だろうか、いくつものフラッシュが見える。
それでも効力が低いのか、中々進路を変えてくれない。
「…苦戦していますね。」
「ナナノハは行かないのか?」
「残念ですが、ボクの戦い方はこの場所とは相性が悪く……。」
そうか、そうだよな。市街地じゃ行動に制限がかかる事もあるか。
かく言う自分も、この状況で別に何かできるわけでもない。もどかしい。
立ち止まったところで、子供ドラゴンが追い付いてくる。
付いてきてるのは確認してきたが、それでもいつものように一定の距離を保っていた。
それが、今は寄ってきてくれてる。漠然とした動きではなく、明らかに自分に向かって。
こんな時に嬉しくなってしまってるところに、短く一言、頭の中に響いた。
『力、貸して。』
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。


ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる