そして俺は召喚士に

ふぃる

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113話 「かつての仲間」の助力を経て②

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 エンと呼ばれた猫人に案内され、館内の部屋に着く。
 ベッドが多数設置された部屋、見るからに医務室といった様相だ。
 棚にある本の題は読めないが、医学書とみて間違いないだろう。

「さ、そこに寝かせてあげて。」
 とエンがベッドのひとつを指し示しながら言う。
「状態、どうなんでしょう。」
 と作業の傍らでナナノハが。
「ツノ周りにある魔力集約腺をやられてるみたいね。
 本来ならそこを通じて余剰魔力をツノにため込むんだけど、魔力に釣られた魔物にやられたのかな、その機能がうまく働いてない。
 それで過剰に魔力を抱えたり、かといって吐き出せば今度は魔力不足、衰弱が衰弱を呼んでる状態。」
「もうそこまで分かるのか?」
 なるべく邪魔はしないようにとは思っていたが、つい言葉を挟む。
「最初見た時から診察は始まってるのよ。そういうのは得意だから。
 とりあえず私が代わりに魔力調整してるから、これ以上魔力面での悪化はさせない。
 でも長期的な療養になるから、ラディ、団長を呼んできてくれる? 場所は──」


 事が進むのが早すぎて、状況がふんわりとした把握状態。
 だけど、このドラゴンの子供が相変わらず弱々しいのは、素人の自分が見ても明らか。
 それに対しエンは触れずとも既に治療を始めてる、それはナナノハ側の様子からしても嘘ではないようだ。
 けど──
「何か不安?」
 不意のエンのその言葉は、短くも、思った事の根底を刺す一言だった。
「いや、ノータイムで動いてくれるのはありがたいけど、ちょっと気になって。
 せめてこう、事情聞いたりとかはしないのか?ってさ。」
「そういう事ね。
 あえて言うならラディ…そっちではナナノハって名乗ってるんだっけ、あの子達には返しきれないくらいの恩があるから、かな。だから頼み事をされたら余程でない限り、断る理由は私には無い。
 それに君…えっと──」
「ユートです。」
「ありがと。
 ユートはその子を助けたいって思った時、どうしてそう思った?」
「俺は特に何も…ただかわいそうだなって。」
「で、助けるって選択を後悔してる?」
「それは……してないかな。」
 軽はずみな考えではあったが、素直に思った気持ちに嘘はつきたくない。
「じゃあそれでいいじゃん、誰か助けたいって思う理由なんて。
 そうとなれば、しばらく私はここを離れられないし、あなたにも働いてもらうよ。」
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