そして俺は召喚士に

イル

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99話 養生と思案の末①

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 目が覚めたのは、まだ薄暗い時間帯。
 もう少し休んでいよう、そう思い掛け布団を持ち上げしばらくうとうと。
 やがて日が昇り、部屋の中が明るくなっていき。
 すっとイメージして具現化させるウルフ、生活感の無い質素な部屋、ベッドすぐ隣にいるナナノハ……。
「うわっ、な、なに!? どうしてここに!?」
 動揺でイメージが崩れ、ウルフが消失する。
「具合、大丈夫ですか?」
「昨日よりはまだマシ…かな、多分。
 ていうか何でここに!? いつから!?」
「少々話の進展があったので、待ってました。」
 そう言うナナノハの手には、小さい帯状の物が。もしかして昨日言ってた…いや、これは確か……。
「昨日言ってた物は、ここでは調達が難しく時間がかかるものでした。
 でも、代わりに便利な物の持ち出し許可を貰ってきました。」
 持ち上げ陽に照らされ、脈のような模様が光沢としてあらわになる。
「これってもしかして、ハルルが着けてた…?」
「はい、『隠匿の輪』と称された物。支給品限りなので、持ち出しの許可を貰ってきました。
 『その世界に存在しないものを隠す』用途として作られた物ですが、その本質としては『認識を曖昧にする事で既知の情報で補完させる』という働き。
 その効力を応用して添えられた副次機能、なんだと思います?」
「ごめん、まだそこまで頭回らな──」
 思い当たった回答、というよりは思い返してみての違和感。
 ハルルと最初に出会った時、それと学校で再び会った時の奇妙な違い。
「言語の概念化、とでも言うべきでしょうか。音声を媒介に、言葉に乗せた意思そのものを相互伝達できるのです。」
 …つまり自動翻訳みたいなもの、か。
「けど、じゃあナナノハは何で? こっちでも着けてるのか?」
「ボクはただゲートの座標のズレから何年か早くに着いて、聞いて覚えただけなので。
 見た目も自力でどうにかできますし、向こうでも着けてはいません。」
 今なんかさらっと凄い事言ってた気がするが、この状況の上で今更だろう。

 折角なんだし、と受け取り付けてみる。
 一瞬、浮遊感のような奇妙な感覚。とりあえず起動はした、んだろうけど……。
「…何か変わった、のかな…?」
「着けた本人にそんな大きな変化があったら、本業に支障が出ちゃいますし。
 どうでしょう。この言葉、分かりますか?」
 明確な違和感。
 音としては、この街の人が使ってた言葉と思われる。なのに、日本語も同時に聞こえる…ように錯覚してる?
 同じ声が同時に2つしゃべっている。その状態の気持ち悪さが、頭の奥底に響く。
「聞き取れる…けど、ハルルと話してた時と違う、なんか変な感じ。2つの声が重なってるような。」
「…おそらく、こちらの言葉を聞いて、存在を知ってしまったからでしょうね。
 それでも使えてはいるようで、よかったです。」
 こんな状態でも、無いよりはよっぽど助かる、か。
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