そして俺は召喚士に

ふぃる

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85話 立ち回り③

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「なるほど、異様な魔力が滞留してますね。」
 現地に到着して、ハルルが言う。

 情報はあらかじめ確認し、共有しておいた。
 「潮風トンネル」と呼ばれる場所。山に寄ったところにある、やや曲がったトンネルだ。
 風のうなる音と共に、通行車両に異常が起こるんだとか。
 例えばラジオが奇妙な音を発したり、カーナビが実在しない地図を表示したり。
 トラックの荷台の錠が壊れて荷物が散乱し、ちょっとしたニュースになった事もあったんだとか。
 その件は運送業者側の車両メンテナンス不足として片付けられたが、異様な錆び方をしていたとも報じられていた。
 その事から金属を腐食させる「潮風」の名で呼ばれるようになったとの事だ。

「この妖力溜まりを解消してみせよ。」
 ソウクロウからハルルへの指示。問題事をひとつ解決させつつ、ハルルのやり方を見る、ってところか。
「その方法に禁止事項などは?」
「土地を破壊しない限りは、手段は問わん。そちらのやり方でやってみよ。」


 ハルルが前に出て、自分とソウクロウは距離を取った後方。
 構えたハルルを中心に、半透明な黄色の球体が広がっていく。
 サイズが大きくなるにつれ薄くなっていき、やがて見えなくなる。けど気配は消えない。まだ広がり続けてるのだろう。
「…離れていてください。」
 言葉ののち、強烈な風。それとと共に、強烈な錆臭さ。
 目には見えないが、これがこのトンネルに「溜まっていたもの」なのだろう。

 出口の辺り一帯にバチバチと薄く電撃が走る。
 それに誘導され圧縮、濃度だ上がったのだろう。黒い霧状のものとして見えてくる。
 球状にまとめられたそれが、空中高くへと持ち上げられていく。

「…これ、散らしても大丈夫でしょうか?」
「あぁ、構わん。」
「了解しました。」
 ハルルの手元から小さな火球が放たれ、ふわりと浮かんでいく。
 絶え間ない弾ける音とは対照的に、静かに。電撃空間の中心へ向かっていく。
 瞬間、轟音。
 大きな炸裂とともに飛び散る異臭、思わず咳き込む。
 続けての強風で撹拌され、散り散りにされ消え去った。
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