そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
79 / 231

79話 明るみ⑦

しおりを挟む
 力なく垂れた蔦が、切った所から導火線のように霧状に消えていく。
 結構無茶をしたと思ったのに、前ほどの疲労感は無い。

「動きに迷いが無いな。いい経験をしたと見える。」
「まぁ…な。」
 背後からのソウクロウの声に、必要最低限の返答。
 確かにあれは「いい経験」だった。
 行動の指標を見つけるには、十分すぎるほどに。

「しかしその地図の、確かゲームであると言っていたな?
 本当に娯楽として作られたものなのだろうか…?
 ……それとも単なる偶発作用か?」
 傘を片付ける傍ら、ソウクロウが言う。
「いや、怪しさは俺も感じる。
 張ってたって場所、警戒区域とか言ってたよな。その場所、このアプリの期間限定イベントで注目される場所だったんだ。」
「故にその場所にいた、と?」
「あぁ。
 で、知ってるとは思うけど、大事おおごとになっていた。
 …他の場所がどうだったかは知らないから、『そこだけが』かどうかは分からないけども。」
「確かに、あの夜に活発化した場所は、他にも多数あった。が、最も激しかったのはあの場所だった。
 …そのゲーム、確か霊的な場所を奪い合う、のだったか?」
「そうだけど、それがなにかあるのか?」
「このような現象は大衆の存在認知、そして根幹的な畏怖。
 例えばこの『くくり蔦』で言えば、誰かが遭難し野生動物か霊的干渉か、原因は何にせよ負傷したという事実。
 それに無い話も拡張され、恐れられる事で霊的な力を蓄える。そして踏み入った者への実害も増す。
 そしてそれが恐れる話としてさらに広まる。その繰り返しの果てだ。」
「じゃあ、このアプリで注目度が上がるのって…?」
「そうだ、いびつな形だが霊的な力が集まる要因になりうる。」
 憶測でしかなかったものが、確信へと変わっていく。
 このアプリが話題に上がり始めて、まだそんなに経ってはいない。
 その影響が出るというのなら、まだまだこれから。

「だからひとつ頼みがある。
 その…力を貸してほしい。」
 こちらからの提案。珍しく、ソウクロウの驚きの表情。
 だが、数秒後にはいつもの底の見えない笑みに。
「…ほう? まさか貴様から提案するとはな。
 ならば聞かせてみよ、貴様の展望を。」
 知ってる所で、知らない事が起ころうとしている。
 ならば自衛するとまでは行かずとも、せめて事の把握くらいはしておきたい。
 けど、その為には……。
「それを決める為にも、今はただ同意が欲しい。
 …無茶な事言ってるとは思うけどさ。」
「いいだろう。その話、乗ってやる。
 ただし、あまりにも不条理な要件であったなら、撤回して降りる。
 それでよいな?」
「あぁ、助かるよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...