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78話 明るみ⑥
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今回の活動の現地。
そこは、前回の場所の付近だそうだ。
それとなく見覚えのある道を、通り過ぎていく。
「また『くくり蔦』なのか?」
道中時間でソウクロウに確認する。
「あぁ、そうだ。
広域に亘る伝承だ、その核となるものもいくつも点在している。
厄介なほどにな……。」
改めてアプリの方の地図で確認してみる。
…見える範囲だけで「くくり蔦」が他に5個ほどある。並び方からして画面外にもかなりあり、合わせて大体3倍…20個ほどだろうか。
…最終的にこれ全部回るつもりなのか?
到着した場所はやはり建物のあるような場所から離れ、より一層取っ掛かりも無く「前にも来た場所」といった印象。実際には違う場所であるとGPSが示しているが。
そういった場所の見失いやさ、迷いやすさもまた怪談として増長させる要因だったのだろう。
「準備はよいな?」
林に向き、背後からの声に無言での返答。
取り出した折り畳み傘を伸ばし、そこに斧のイメージを重ねる。
…特に空に陰りも無いのに鞄に折り畳み傘忍ばせてたのは、まぁ、ね。
結界を張る紙人形が飛ぶのが見え、戦場が形作られる。
勝利条件は前回で既に把握してる。
木に絡まった、核となる太い蔦。それを叩き切れば、無力化できる。
対する相手は蔦による物理的な干渉、怪談に従うなら拘束か。
とはいえ動きは遅い。気をつけながら素通りし、核を叩く方が手っ取り早い。
単純な造りだからか、それ自体は動かないからか、それとも傘を依り代としてるからだろうか。
いずれにせよ、斧に関しては維持し続けても負担は殆ど無い。
重さは元とした傘と同等、だけど細い蔦を断てる程度には威力はある。
…これだけでも大概物理法則無視してるよなぁ。
核が見え、今回は遠隔で仕掛ける。
参考元のスキル名で言えば「行動指示:飛び掛かり」。ウルフを単独突撃させ、怯みを伴うダメージで先手のアドバンテージを取る技だ。
直線の先に捉えた太い蔦に向け、イメージを形にしたウルフを走らせる。
だが早く動く物に反応してか、物陰から現れた蔦がウルフを追う。
それを更に追い、斧で蔦を叩き落としウルフの行動を維持する。
太い蔦の表面を、ウルフが噛み千切る。ウルフが離れ、傷ついた蔦に斧で追撃。
断ち切る太い蔦。そして「それ」を初めて直で感じ取る。
真っ黒い断面、そこから噴き出すもやもや。悪臭とも吐き気とも似てる不快感。
これが怪現象の根源、「呪い」とでも呼ぶべきもの。そう確信するに、十分なものだった。
そこは、前回の場所の付近だそうだ。
それとなく見覚えのある道を、通り過ぎていく。
「また『くくり蔦』なのか?」
道中時間でソウクロウに確認する。
「あぁ、そうだ。
広域に亘る伝承だ、その核となるものもいくつも点在している。
厄介なほどにな……。」
改めてアプリの方の地図で確認してみる。
…見える範囲だけで「くくり蔦」が他に5個ほどある。並び方からして画面外にもかなりあり、合わせて大体3倍…20個ほどだろうか。
…最終的にこれ全部回るつもりなのか?
到着した場所はやはり建物のあるような場所から離れ、より一層取っ掛かりも無く「前にも来た場所」といった印象。実際には違う場所であるとGPSが示しているが。
そういった場所の見失いやさ、迷いやすさもまた怪談として増長させる要因だったのだろう。
「準備はよいな?」
林に向き、背後からの声に無言での返答。
取り出した折り畳み傘を伸ばし、そこに斧のイメージを重ねる。
…特に空に陰りも無いのに鞄に折り畳み傘忍ばせてたのは、まぁ、ね。
結界を張る紙人形が飛ぶのが見え、戦場が形作られる。
勝利条件は前回で既に把握してる。
木に絡まった、核となる太い蔦。それを叩き切れば、無力化できる。
対する相手は蔦による物理的な干渉、怪談に従うなら拘束か。
とはいえ動きは遅い。気をつけながら素通りし、核を叩く方が手っ取り早い。
単純な造りだからか、それ自体は動かないからか、それとも傘を依り代としてるからだろうか。
いずれにせよ、斧に関しては維持し続けても負担は殆ど無い。
重さは元とした傘と同等、だけど細い蔦を断てる程度には威力はある。
…これだけでも大概物理法則無視してるよなぁ。
核が見え、今回は遠隔で仕掛ける。
参考元のスキル名で言えば「行動指示:飛び掛かり」。ウルフを単独突撃させ、怯みを伴うダメージで先手のアドバンテージを取る技だ。
直線の先に捉えた太い蔦に向け、イメージを形にしたウルフを走らせる。
だが早く動く物に反応してか、物陰から現れた蔦がウルフを追う。
それを更に追い、斧で蔦を叩き落としウルフの行動を維持する。
太い蔦の表面を、ウルフが噛み千切る。ウルフが離れ、傷ついた蔦に斧で追撃。
断ち切る太い蔦。そして「それ」を初めて直で感じ取る。
真っ黒い断面、そこから噴き出すもやもや。悪臭とも吐き気とも似てる不快感。
これが怪現象の根源、「呪い」とでも呼ぶべきもの。そう確信するに、十分なものだった。
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