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75話 明るみ③
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どうにか帰宅し、翌日朝。
丁度創立記念日の休みで助かった。
まだ疲れとか色々残ってる。今日は飯の買い出し以外外出したくない。
気がかりな事はありすぎるが、取り急ぎやるべき事はひとつ。
買い置きしていた総菜パンで朝食を済まし、ショウヤに通話を繋ぐ。
やはりというかショウヤも事が気になっていたようで、話の先手を取られる。
「なぁユート、昨日の夜のどういう事なんだよ!
お前やけに冷静だったし、何か知ってたのか!?
そんでお前、あの時何をしたんだ!?
それに……。」
一息の間ののち、ショウヤが言葉を続ける。
「…ユートは知ってたのか? キリの事。」
「あぁ、5月のはじめごろに…だったかな。」
「じゃあオレだけ知らなかった形かぁ……。」
心境を読み取りづらい声色。返す言葉に少し迷う。
「…大丈夫か?」
「大丈夫っていうかなんていうか…ちょっと待ってろ。」
少しして、チャットの方に送られてくるURL。SNSサイトの、ショウヤのお気に入りページだ。
その殆どが二人組のイラスト漫画の投稿。どういう事だろうと思いながら見ていたら、ふと気付く。
二人組の片方は人間、そしてもう片方はエルフだったりケンタロスだったり獣人やアンドロイド、果てにはドラゴンだとか。一言で纏めて表すなら「人外」か。
「…察してくれ!」
なんとなく言いたい事は分かった。
癖なんだな、そういうのが。
「でも、なら別に大丈夫なんじゃないのか?」
「いやさ、こういうのはあくまで第三者視点なのがいいからであって!
いざ当事者となると色々と…こう、さ!
…理屈じゃわかってるよ、どうあってもキリはキリだって。
でも邪念っていうか、そういうのが…!」
ある意味では大丈夫そうだな、っていう安心感。
ひっそりと「とりあえず危惧した事にはならなさそうだ」とキリにテキストで送っておく。
知見の浅いジャンルだ。相談相手という面の傍ら、未知に対する興味もちょっとだけある。
「こういう系って、どういうとこに惹かれるんだ?」
「…それオレに言わせる?」
「分からない界隈なんだ、今のままじゃ何も言えねぇよ。」
「まぁなんだ、例えばだ。
こう、生活文化が違うけど、それでも寄り添おうとするのとかさ。
それでも想いと裏腹にうまくいかず苦戦するのとか、いいじゃん?」
「じゃあ見た目っていうよりは、中身とか過程とかか?」
「そう…かもな。
異形な方が壁が厚くていいってのはあるけど、あくまで副次的なものとしてかな。」
「じゃあその方面として見たら、キリは?」
「どうって…キリは狸で、原理は知らないけど人を化かしてて。
でも昨日までそれに気づかなくて、そんくらい既に馴染んでて……。」
「なら通話での時は?」
「…普通の人間とかわらねぇな。」
ショウヤ的な落としどころに、たどり着いたようだ。
「ありがと、ちょっと落ち着いてきた。」
「キリにも一言でも送っとけよ。あっちも気にしてたしさ。」
丁度創立記念日の休みで助かった。
まだ疲れとか色々残ってる。今日は飯の買い出し以外外出したくない。
気がかりな事はありすぎるが、取り急ぎやるべき事はひとつ。
買い置きしていた総菜パンで朝食を済まし、ショウヤに通話を繋ぐ。
やはりというかショウヤも事が気になっていたようで、話の先手を取られる。
「なぁユート、昨日の夜のどういう事なんだよ!
お前やけに冷静だったし、何か知ってたのか!?
そんでお前、あの時何をしたんだ!?
それに……。」
一息の間ののち、ショウヤが言葉を続ける。
「…ユートは知ってたのか? キリの事。」
「あぁ、5月のはじめごろに…だったかな。」
「じゃあオレだけ知らなかった形かぁ……。」
心境を読み取りづらい声色。返す言葉に少し迷う。
「…大丈夫か?」
「大丈夫っていうかなんていうか…ちょっと待ってろ。」
少しして、チャットの方に送られてくるURL。SNSサイトの、ショウヤのお気に入りページだ。
その殆どが二人組のイラスト漫画の投稿。どういう事だろうと思いながら見ていたら、ふと気付く。
二人組の片方は人間、そしてもう片方はエルフだったりケンタロスだったり獣人やアンドロイド、果てにはドラゴンだとか。一言で纏めて表すなら「人外」か。
「…察してくれ!」
なんとなく言いたい事は分かった。
癖なんだな、そういうのが。
「でも、なら別に大丈夫なんじゃないのか?」
「いやさ、こういうのはあくまで第三者視点なのがいいからであって!
いざ当事者となると色々と…こう、さ!
…理屈じゃわかってるよ、どうあってもキリはキリだって。
でも邪念っていうか、そういうのが…!」
ある意味では大丈夫そうだな、っていう安心感。
ひっそりと「とりあえず危惧した事にはならなさそうだ」とキリにテキストで送っておく。
知見の浅いジャンルだ。相談相手という面の傍ら、未知に対する興味もちょっとだけある。
「こういう系って、どういうとこに惹かれるんだ?」
「…それオレに言わせる?」
「分からない界隈なんだ、今のままじゃ何も言えねぇよ。」
「まぁなんだ、例えばだ。
こう、生活文化が違うけど、それでも寄り添おうとするのとかさ。
それでも想いと裏腹にうまくいかず苦戦するのとか、いいじゃん?」
「じゃあ見た目っていうよりは、中身とか過程とかか?」
「そう…かもな。
異形な方が壁が厚くていいってのはあるけど、あくまで副次的なものとしてかな。」
「じゃあその方面として見たら、キリは?」
「どうって…キリは狸で、原理は知らないけど人を化かしてて。
でも昨日までそれに気づかなくて、そんくらい既に馴染んでて……。」
「なら通話での時は?」
「…普通の人間とかわらねぇな。」
ショウヤ的な落としどころに、たどり着いたようだ。
「ありがと、ちょっと落ち着いてきた。」
「キリにも一言でも送っとけよ。あっちも気にしてたしさ。」
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