そして俺は召喚士に

ふぃる

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74話 明るみ②

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 がっつり休んだおかげで、結構回復はした。
 寝ぼけてた思考もはっきりしてきて。
 あくびを我慢しながら目をこすり、誘われるまま奥の部屋へ。

 物が綺麗に片付けられている部屋の中で、それは妙に目立った。
 立てかけられたプレート型の爪とぎに、長髪のキリにしては異様に短い毛のついた床掃除ローラー。ヘアブラシも用途はおそらく……。
「やっぱ気になるもんか? それ。」
 とキリが爪とぎを目線で指しながら。
「うん、でも納得したっていうか、えっと……。」
「別に言葉選びいらねーよ。…思う事の察しは付くし。」
「じゃあ……。
 …ペット用のだよね、これ。」
「あぁ、そんで自分用のだ。
 …お前には驚きも無いだろうけど、ショウヤにとっては確信する証拠になっちまっただろうな。」
「じゃあさっき会った時のショウヤの反応って……。」
「…お前らが何を見てきたかは知らんが、それで『見える』ようになっただろうな、うちの本来の姿が。」
 そう、キリはこげ茶毛皮の獣人、化狸。だけど誤認させる術だかでそれを知らない人には普通の人間に錯覚する、とかだっけ。
 だから正体はずっと騙し続けていた。それはショウヤに対しても。
「お前の場合は正体探り、知る覚悟の上でだったろ。
 うちとしてもまだ関わり浅かったし、『いざとなればそれ以降関わらなければいいや』くらいの気持ちだったから、そんな深くは考えなかった。」
 と言った後「あ、もちろん今は違うぞ。」と付け足してくる。
「確かに衝撃とかよりか、答え合わせの納得感みたいな感じだったな、俺としても。」
「だろ?
 けどショウヤとはそうもいかねぇ。
 知り合って3年半の相手が化物とか、まぁ、ビビるよね。」
 キリとショウヤの関係性の深さ。それはノータイムで家の鍵を預けれる事からもうかがい知れる。
「でもそこまでなら大丈夫なんじゃ?」
「だとは思うよ。でも言い切れないわけじゃん。
 けどもしもってなったらって考えたらさ……。」
「…好きなのか? 恋愛的に。」
「わかんね、けど多分違う。
 だけどやりたい事に着いて来れたのがあいつくらいだったから、他の奴らにはいい印象も悪い印象もないよう程々に接して。
 だからもしも終いってなったら、寂しくはあるな……。」

 それからしばらく落ち着かない様子だったが、ふと思い出したようにキリが。
「そういやさ、そっち…人間からしたら、うちの見た目印象どんな印象なんだ? 例えば怖いとか、キモいとか。」
 あんまり意識した事なかった事だ。改めてキリの容姿をまじまじと見てみる。
 見た目にぱっとしない茶色い被毛、時折不意に揺れ動く尻尾。魅力としては、人のそれよりも……。
「うーん…かわいい、かな。ただ、動物的な方面で。」
「そっかぁ…マイナスイメージじゃないだけまだあるかなぁ……。
 …いや過度な期待はやめとこ。もしもダメだった時のダメージでかくしたくねぇし。」
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