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20話 ハルルの手伝い⑦
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後日の放課後。
改めてとハルルと予定を合わせての待ち合わせだ。
予定が立った時から、この時が楽しみで仕方なかった。
時間つぶしにスマホで読んでた漫画の中身が頭に入らず、結局閉じたくらいに。
だって今回は、魔法に直に触れられるかもしれないし。あわよくば。
ハルルからは「期待はしすぎないように」とは言われている。
自分でも、適性の話が出た辺りから、肩透かしに終わる可能性は思考の隅にあった。
けどそれ以上に、実在するファンタジー種族、一度とはいえ実際に目にした魔法の存在、期待度の方がよっぽど高い。
「ユートさん! もしかして、お待たせしてしまいました?」
「いや、俺が早く来すぎただけだから大丈夫。」
最後に時計を見た時からそう経ってない、まだ予定の時間より少し前のはず。
それ以上に、俺が待ち切れず先に来ただけで。
場所を移動し、人目の無い場所へ。廃屋の合間、土の空地だ。
「とはいっても教えるのは専門外ではあるので、互いに探りながらやっていきましょう。」
とハルルが切り出す。
「分かった。けどまずは何をすればいい?」
「今の状態の把握…スタートラインの見定めですかね。」
「そっちの世界でだと、大体どこからなんだ?」
「そうですね…そもそも何らかの魔術を既に使えるようになってる人が殆どです。なので『使い方』と言っても、活用法や応用…そういった話ですね。」
ハルルが上にかざした掌の上に小さい火を作って弄び、握りつぶし火の粉が弾ける。
「そういえば、この間使ってた術もよく見れてないんだよな。あれって電気? それとも炎?」
「そうですね、以前の説明の補完も兼ねて実演しましょう。」
再び開いた手の中に、白い線の渦が発生する。
「私の属性は炎・風・光の3つ。このうち風は変わった性質を持っていて、他の属性を変質させます。」
その渦が広がり風が吹く。どうやらこれが可視化された風の魔法らしい。
「ここに光の属性を加えると、雷へと変質します。」
集束した風の術が、向かい合わせたハルルの掌の間で細長く伸びる。それがバチバチという音と共に、稲光へと変化する。
「これをベースに更に炎を加えて爆発性を足せば──」
両手を寄せ雷が玉状になり、それが赤く変色する。
「……ここまでできるのは特殊な適性あっての事なので、風との2属性合成だけ覚えておけば十分です。」
ふと本来の目的を思い出し、調子に乗り過ぎた、という様子で術を弾けさせ消す。
「では、本題に。
単刀直入に、魔力の存在は感じ取れますか?」
思い返す、最近の事を。
魔法的な存在と接点があった時って、最初に魔法を見た時、林に行った時。
前者は突然のこと過ぎて、よく覚えてなくて。
後者は不思議な感じはしたけど、そもそもの状況が状況過ぎてそれが魔力的なものかどうかの判断が付かない。
けど、今の魔法を見てても、変わった感覚が無かった事からしても……。
「…それっぽいものは、多分これまで一度も。」
「今も、ですか?」
と小さく炎の術を発する。
「…うん 全然。」
「…前途多難そうですね。」
それからしばらく色々と試したが、どうにも進展の兆しは見えて来ず。
ハルルが「調達してみたい物がある」との事で、今回の所はお開きとなった。
改めてとハルルと予定を合わせての待ち合わせだ。
予定が立った時から、この時が楽しみで仕方なかった。
時間つぶしにスマホで読んでた漫画の中身が頭に入らず、結局閉じたくらいに。
だって今回は、魔法に直に触れられるかもしれないし。あわよくば。
ハルルからは「期待はしすぎないように」とは言われている。
自分でも、適性の話が出た辺りから、肩透かしに終わる可能性は思考の隅にあった。
けどそれ以上に、実在するファンタジー種族、一度とはいえ実際に目にした魔法の存在、期待度の方がよっぽど高い。
「ユートさん! もしかして、お待たせしてしまいました?」
「いや、俺が早く来すぎただけだから大丈夫。」
最後に時計を見た時からそう経ってない、まだ予定の時間より少し前のはず。
それ以上に、俺が待ち切れず先に来ただけで。
場所を移動し、人目の無い場所へ。廃屋の合間、土の空地だ。
「とはいっても教えるのは専門外ではあるので、互いに探りながらやっていきましょう。」
とハルルが切り出す。
「分かった。けどまずは何をすればいい?」
「今の状態の把握…スタートラインの見定めですかね。」
「そっちの世界でだと、大体どこからなんだ?」
「そうですね…そもそも何らかの魔術を既に使えるようになってる人が殆どです。なので『使い方』と言っても、活用法や応用…そういった話ですね。」
ハルルが上にかざした掌の上に小さい火を作って弄び、握りつぶし火の粉が弾ける。
「そういえば、この間使ってた術もよく見れてないんだよな。あれって電気? それとも炎?」
「そうですね、以前の説明の補完も兼ねて実演しましょう。」
再び開いた手の中に、白い線の渦が発生する。
「私の属性は炎・風・光の3つ。このうち風は変わった性質を持っていて、他の属性を変質させます。」
その渦が広がり風が吹く。どうやらこれが可視化された風の魔法らしい。
「ここに光の属性を加えると、雷へと変質します。」
集束した風の術が、向かい合わせたハルルの掌の間で細長く伸びる。それがバチバチという音と共に、稲光へと変化する。
「これをベースに更に炎を加えて爆発性を足せば──」
両手を寄せ雷が玉状になり、それが赤く変色する。
「……ここまでできるのは特殊な適性あっての事なので、風との2属性合成だけ覚えておけば十分です。」
ふと本来の目的を思い出し、調子に乗り過ぎた、という様子で術を弾けさせ消す。
「では、本題に。
単刀直入に、魔力の存在は感じ取れますか?」
思い返す、最近の事を。
魔法的な存在と接点があった時って、最初に魔法を見た時、林に行った時。
前者は突然のこと過ぎて、よく覚えてなくて。
後者は不思議な感じはしたけど、そもそもの状況が状況過ぎてそれが魔力的なものかどうかの判断が付かない。
けど、今の魔法を見てても、変わった感覚が無かった事からしても……。
「…それっぽいものは、多分これまで一度も。」
「今も、ですか?」
と小さく炎の術を発する。
「…うん 全然。」
「…前途多難そうですね。」
それからしばらく色々と試したが、どうにも進展の兆しは見えて来ず。
ハルルが「調達してみたい物がある」との事で、今回の所はお開きとなった。
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