そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
上 下
20 / 231

20話 ハルルの手伝い⑦

しおりを挟む
 後日の放課後。
 改めてとハルルと予定を合わせての待ち合わせだ。

 予定が立った時から、この時が楽しみで仕方なかった。
 時間つぶしにスマホで読んでた漫画の中身が頭に入らず、結局閉じたくらいに。
 だって今回は、魔法に直に触れられるかもしれないし。あわよくば。

 ハルルからは「期待はしすぎないように」とは言われている。
 自分でも、適性の話が出た辺りから、肩透かしに終わる可能性は思考の隅にあった。
 けどそれ以上に、実在するファンタジー種族、一度とはいえ実際に目にした魔法の存在、期待度の方がよっぽど高い。

「ユートさん! もしかして、お待たせしてしまいました?」
「いや、俺が早く来すぎただけだから大丈夫。」
 最後に時計を見た時からそう経ってない、まだ予定の時間より少し前のはず。
 それ以上に、俺が待ち切れず先に来ただけで。


 場所を移動し、人目の無い場所へ。廃屋の合間、土の空地だ。

「とはいっても教えるのは専門外ではあるので、互いに探りながらやっていきましょう。」
 とハルルが切り出す。
「分かった。けどまずは何をすればいい?」
「今の状態の把握…スタートラインの見定めですかね。」

「そっちの世界でだと、大体どこからなんだ?」
「そうですね…そもそも何らかの魔術を既に使えるようになってる人が殆どです。なので『使い方』と言っても、活用法や応用…そういった話ですね。」
 ハルルが上にかざした掌の上に小さい火を作って弄び、握りつぶし火の粉が弾ける。
「そういえば、この間使ってた術もよく見れてないんだよな。あれって電気? それとも炎?」
「そうですね、以前の説明の補完も兼ねて実演しましょう。」

 再び開いた手の中に、白い線の渦が発生する。
「私の属性は炎・風・光の3つ。このうち風は変わった性質を持っていて、他の属性を変質させます。」
 その渦が広がり風が吹く。どうやらこれが可視化された風の魔法らしい。
「ここに光の属性を加えると、雷へと変質します。」
 集束した風の術が、向かい合わせたハルルの掌の間で細長く伸びる。それがバチバチという音と共に、稲光へと変化する。
「これをベースに更に炎を加えて爆発性を足せば──」
 両手を寄せ雷が玉状になり、それが赤く変色する。
「……ここまでできるのは特殊な適性あっての事なので、風との2属性合成だけ覚えておけば十分です。」
 ふと本来の目的を思い出し、調子に乗り過ぎた、という様子で術を弾けさせ消す。


「では、本題に。
 単刀直入に、魔力の存在は感じ取れますか?」
 思い返す、最近の事を。
 魔法的な存在と接点があった時って、最初に魔法を見た時、林に行った時。
 前者は突然のこと過ぎて、よく覚えてなくて。
 後者は不思議な感じはしたけど、そもそもの状況が状況過ぎてそれが魔力的なものかどうかの判断が付かない。
 けど、今の魔法を見てても、変わった感覚が無かった事からしても……。
「…それっぽいものは、多分これまで一度も。」
「今も、ですか?」
 と小さく炎の術を発する。
「…うん 全然。」
「…前途多難そうですね。」

 それからしばらく色々と試したが、どうにも進展の兆しは見えて来ず。
 ハルルが「調達してみたい物がある」との事で、今回の所はお開きとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...