エステティシャンと美少年

聖性ヤドン

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3,なんでこんなに

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「それでうちのサロンに来たのか……。大丈夫だよキミ……空くん! すごくきれいな胸をしてるよ。こんなきれいな乳首は女性でも見たことがない!」
「先生、それ本当に……!?」

 横になっていた彼が、勢いよく上半身を起こそうとした。

「……あっ!」

 体を見ていた俺と顔がぶつかりそうになり、彼ははっと動きを止める。
 顔はぶつからなかったけれど、前髪と吐息がぶつかった。

「先生、ごめんなさい……」
「大丈夫だよ。でも危ないから寝ていて」

 彼の両肩をつかんで優しく施術台の上に押し戻す。

「あと、俺のことは先生じゃなくて、天木で」
「あまきさん?」
「そう、そういう名前。エステティシャンはあんまり、先生とは呼ばれない」
「天木さん……」

 もう一度俺の名前を呼んだ彼の声には、親愛の情のようなものが乗って聞こえた。
 そのことに俺は、最近感じたことのなかった胸の高ぶりを覚える。

「空くん、それじゃあキミをきれいにしていくね。肌の分析機を用意したけど、こんなの使わなくても、キミの肌がきめ細かくてきれいなのはよくわかる」

 さっきまでは頑なに目を合わせてくれなかった彼が、今はじっと俺を見て話を聞いてくれていた。

「全身をオイルでほぐして、毛穴に溜まった老廃物を洗い流す。施術は一時間で十分かな。その間退屈かもしれないけど、寝ていて構わないから。実際、寝てしまうお客さんも多いよ」

 そう説明すると、彼はうっすらと目を閉じる。素直でいい子だ。目元に落ちた、長いまつげの影が美しい。
 俺はそれに見惚れながら、オイルを手に取り施術台に上がった。

 体の左右に平等に力をかけるため、施術中は俺も施術台に上がって客の体にまたがる。
 ただし、手以外で客の体に触れないよう細心の注意を払う。
 まずは手のひらで十分オイルを温め、空くんの耳元に触れた。
 彼がわずかに息を呑んだ。
 大丈夫。通常の反応だ。
 両手を使ってオイルを塗りながら、素肌をマッサージしていく。
 耳から首の後ろ、僧帽筋、三角筋。順にほぐしていくと、静かにまぶたを伏せていた空くんが、だんだんとリラックスした表情になってくる。

「あ……」

 半開きの小さな唇から、甘いため息のような声が漏れた。

(かわいいな……)

 男の子だとわかっていても、そんな感情が湧いてくる。
 肩から両腕に移り、うっすらとした筋肉をほぐしていくと、ひじから手のひらに到達したところで、彼の指が俺の指に絡んできた。

「……空くん?」
「天木さんの手のひら、なんでこんなに気持ちいいの?」

 半分寝ているのかと思っていた彼が首を動かし、まぶしげに俺の手を眺める。

「特に変わったところはない、男の手だよ」

 そう答えると、彼はもの言いたげな顔になる。

「この手で女の人の胸も触るの?」
「え……そうだけど? そういう仕事だから。変な意味で触ってるわけじゃない」

 なぜだか、若い恋人に責められているような気分になった。

「触られる方は、好きになっちゃったりしないのかな……」

 彼のつぶやきは俺への質問というより、自らに問いかけているようにも聞こえる。

「空くんは好きになっちゃうの? 俺にマッサージされたら」

 質問に質問で返すと、俺の手を握っていた指が緩んだ。
 その隙に俺は指をほどいて、ボトルから手のひらにオイルを足す。
 空くんは考え込んでいるようだ。

「わからない。でも……こんなふうに触られたら気を許しちゃうかも……」

 その答えを聞きながら、俺は彼の鎖骨のくぼみにもオイルを垂らした。

「はあ……いい匂い……」

 強く香るアロマに、彼は恍惚こうこつとした表情で目を閉じる。

(また緊張してしまう前に、胸に行った方がいいな)

 鎖骨に垂らしたオイルを指の腹ですくい取り、そこから上半身に塗り広げていった。
 鎖骨からリンパの流れに沿って肩先へ。そして脇の下まで手のひらを沿わしていく。
 そこから親指を返すようにして胸へ。薄い胸板は体重をかければ折れそうで心配だったけれど、素肌には手のひらを押し返してくる弾力があった。
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