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第二部 マスター、私は少し寂しいです
塵も積もれば山となる(塵の大きさによる)
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八月十六日水曜日。お盆休みも終えて一部の学生にとっては宿題という絶望に追われる頃合いだ。
しかし、マスターはきちんと七月中に終わらせていたためそんな心配は無用だが、マスターの友達の場合は違う。なんと……えっと、確か浅野さんと言ったか。その子以外全く宿題に手をつけていないらしい。
マスターが通う中学の始業式は八月の二十八日。大至急終わらせないと外にも出してもらえないそうだ。
ピンポーン
「マスター、何か来ましたよー!」
「宅配か宗教か学校関係者のどれ?」
「服装から見て宅配のようです。大きな箱を持っています」
「んー、今行くー」
マスターは昨日近くの書店で購入したライトノベルを読むのを一旦中断し、宅配物を受け取りに行く。一体どんな荷物なのだろうか。大きさからしてゲーム機かなにかであろうか。
「昨日注文してから結構早く届いたなー」
「何を買ったんですか?」
「見てればわかるよ」
そう言ってマスターはその大きな箱を丁寧に開けていく。きっとそれなりにお高いものなのだろう。
そして、箱から出てきたのはやはりゲーム機であった。しかし、見たことの無い付属品がある。
「これはゲーム機ですか?」
「ゲーム機に見えるけどちょっと違うよ。正しくはPC本体だよ」
「あれ、持ってませんでしたっけ?」
「あれはモニターだけ」
「あ、なるほど。前々から気になっていた疑問が解決しました」
ゲーム機に見えていたのはPC本体でマスターの机の上にあるのはデスクトップパソコンのモニターとキーボード。前々から何故起動させないのかと思っていたが、起動させないのではなく起動させるものがなかったのだ。
それよりも、この見た事がない付属品は一体何なのであろうか。
「えっと……このコードを繋いで……」
「あの、マスター?」
「何?」
「そこにあるゴーグルのようなものはなんですか?」
「ん、ああ、これね。VRゴーグルだよ。ちなみに最新版ね」
そう言うとマスターはPC本体の接続作業に戻る。
いや、何故そんなにも平然とできるのかがわからない。PC本体の値段は安くても四万円する。しかし、今私が見ているマスターのPC本体はとても四万の代物とは思えない。恐らく、六万円相当のものだろう。
それに加え、VRゴーグル──これは最近見たもので四万円した。
つまり、今私の目の前には十万円相当の代物があるのだ。そう、十万である!
そんな大金を中学二年生が出したと考えると、一体どこから調達したのか気にならない人間はいない。
「そのお金は誰が……?」
「勿論僕が出したよ。調達源は月のお小遣いと毎年の誕生日に貰っていた一万円から」
「……月のお小遣いっていくらですか?」
「五千円」
「私の貰ってた額よりも多いぃいー!!」
この額に私は羨ましいとしか思えない。私の貰っていた月のお小遣いなんてたったの百円だ。たったのワンコインだ。
いや、小学生の時の月のお小遣い十円よりはマシだ。たった十円を何ヶ月も貯めても一年に百二十円しか集まらなかった時の絶望感は半端じゃない。
そしてその百二十円で買ったものが美味スティックという一本十円のお菓子を十二本という。でも、月百円なら十年貯めれば十万円だよ。やったね! まあ、もうその時には社会に出てると思うけど。
うちの祖母も私の性別が逆転したようにケチから気前がいいに逆転してくれないかな。
「まあそれは兎も角、急にPCとVRゴーグルなんて揃えて何をするつもりですか?」
「何をすると思う?」
「ま、まさか、えっちな動画を──」
「VRゲームをするだけ。そんな十八禁動画は見ない」
「あ、そうですか」
一瞬だけ思春期だから仕方が無いと思ってしまったが、キャラ崩壊にも繋がる要素が現状消えてよかった。まあ別に見ようと見まいと勝手なのだが……時と場所によっては私も一緒に鑑賞というなんともシュールな事態が起きてしまうので気まずいのだ。
「よし、準備完了っと。早速起動!」
準備が終わったPCを早速起動し、色々な設定を済ませていく。そしてその中にあるパスワードの設定のみ見ないようにしておいた。
「さてっと、それじゃあ霧乃さんはモンスターファンタジーっていうオンラインゲームの中に入ってて」
「それは何故ですか?」
「まあ、取り敢えず入ってて」
「──? わかりました」
何を企んでいるかはわからないが、そのゲームの中に入らないと話が進まなさそうなので入ることにした。
サイバネットワールドの中にあるゲームのサーバーは無限にあるが、暇ある時にサーバーの場所を大体で覚えて行ったのでマスターの言ったモンスターファンタジーというゲームのサーバーがどこにあるのかも大体わかる。
「そういえば、最近こういうソシャゲとかしてなかったなー」
最後にしたのは夏休みに入る前だ。夏休みに入ってからは存在すら忘れていた。
これも全て色々なことがありすぎたせいだ。そうとしか考えられない。
「あったあった。モンスターファンタジーのサーバー」
アクセスするにはログインしてください、と表示されるが勿論このゲームはしたことがないのでアカウントなんて持っているわけがない。
「ということで、新規作成っと」
データ保存の為にもこのアカウントは作っておかないといけない。不正アクセスして捕まるのも嫌だしデータが消えるのも嫌だし。
「メアドは……私のパソコンの方のでいいや」
恐らくマスターのこのゲームをすると思うので、マスターのスマホのメアドを入力するのはやめておく。
無断で使うのも良くない気がするし。
「作成完了っと。後はこれを入力して──」
私が登録したIDとパスワードを入力した途端、周りの風景がパッと変わった。サーバーにアクセスできたのであろう。
『ようこそモンスターファンタジーへ! まずはこの世界での貴方の分身であるキャラクターを作成しましょう!』
「……あ、この姿のまま入れないのね」
レースゲームや一部のソシャゲのような主人公が決まっている。或いは主人公の姿が見えない場合はこういうキャラクター作成はないが、自分のキャラクターが主人公のオンラインゲームの場合は自身のキャラクターの作成が必要だ。当たり前である。
「へー、種族が四つとな」
このゲーム──モンスターファンタジーには種族が四つ選択できる。
人間──全体的に平均的な能力値。初心者向け。
エルフ──属性攻撃に特化しているが体力や物理攻撃力が低めに設定されている。上級者向け。
オーガ──体力と物理攻撃力、物理防御力が高めに設定されているが属性に関しては使えないし耐性も低い。中級者向け。
ビースト──全体的に速い。その代わりに体力と物理攻撃力がやや低め。中級者向け。
と言ったところだ。勿論私が選んだのは──
「エルフ一択!」
勿論エルフだ。貧乳小柄のロリエルフは可愛い。異論は認めん。
……これを元男の私が言うと変態みたいに見えるな。
細かいキャラクターメイキングは今の私の姿を元に作り、完成したのは本当に私の分身とも言えるクリーム色の長髪を持つロリエルフであった。うん、満足。
『それでは、モンスターファンタジーの世界へレッツゴー!』
「あれ、職業とかはないの?」
こういう系のゲームよくある職業システムがないことに驚きながら、またまた周りの風景がパッと変わった。
しかし、マスターはきちんと七月中に終わらせていたためそんな心配は無用だが、マスターの友達の場合は違う。なんと……えっと、確か浅野さんと言ったか。その子以外全く宿題に手をつけていないらしい。
マスターが通う中学の始業式は八月の二十八日。大至急終わらせないと外にも出してもらえないそうだ。
ピンポーン
「マスター、何か来ましたよー!」
「宅配か宗教か学校関係者のどれ?」
「服装から見て宅配のようです。大きな箱を持っています」
「んー、今行くー」
マスターは昨日近くの書店で購入したライトノベルを読むのを一旦中断し、宅配物を受け取りに行く。一体どんな荷物なのだろうか。大きさからしてゲーム機かなにかであろうか。
「昨日注文してから結構早く届いたなー」
「何を買ったんですか?」
「見てればわかるよ」
そう言ってマスターはその大きな箱を丁寧に開けていく。きっとそれなりにお高いものなのだろう。
そして、箱から出てきたのはやはりゲーム機であった。しかし、見たことの無い付属品がある。
「これはゲーム機ですか?」
「ゲーム機に見えるけどちょっと違うよ。正しくはPC本体だよ」
「あれ、持ってませんでしたっけ?」
「あれはモニターだけ」
「あ、なるほど。前々から気になっていた疑問が解決しました」
ゲーム機に見えていたのはPC本体でマスターの机の上にあるのはデスクトップパソコンのモニターとキーボード。前々から何故起動させないのかと思っていたが、起動させないのではなく起動させるものがなかったのだ。
それよりも、この見た事がない付属品は一体何なのであろうか。
「えっと……このコードを繋いで……」
「あの、マスター?」
「何?」
「そこにあるゴーグルのようなものはなんですか?」
「ん、ああ、これね。VRゴーグルだよ。ちなみに最新版ね」
そう言うとマスターはPC本体の接続作業に戻る。
いや、何故そんなにも平然とできるのかがわからない。PC本体の値段は安くても四万円する。しかし、今私が見ているマスターのPC本体はとても四万の代物とは思えない。恐らく、六万円相当のものだろう。
それに加え、VRゴーグル──これは最近見たもので四万円した。
つまり、今私の目の前には十万円相当の代物があるのだ。そう、十万である!
そんな大金を中学二年生が出したと考えると、一体どこから調達したのか気にならない人間はいない。
「そのお金は誰が……?」
「勿論僕が出したよ。調達源は月のお小遣いと毎年の誕生日に貰っていた一万円から」
「……月のお小遣いっていくらですか?」
「五千円」
「私の貰ってた額よりも多いぃいー!!」
この額に私は羨ましいとしか思えない。私の貰っていた月のお小遣いなんてたったの百円だ。たったのワンコインだ。
いや、小学生の時の月のお小遣い十円よりはマシだ。たった十円を何ヶ月も貯めても一年に百二十円しか集まらなかった時の絶望感は半端じゃない。
そしてその百二十円で買ったものが美味スティックという一本十円のお菓子を十二本という。でも、月百円なら十年貯めれば十万円だよ。やったね! まあ、もうその時には社会に出てると思うけど。
うちの祖母も私の性別が逆転したようにケチから気前がいいに逆転してくれないかな。
「まあそれは兎も角、急にPCとVRゴーグルなんて揃えて何をするつもりですか?」
「何をすると思う?」
「ま、まさか、えっちな動画を──」
「VRゲームをするだけ。そんな十八禁動画は見ない」
「あ、そうですか」
一瞬だけ思春期だから仕方が無いと思ってしまったが、キャラ崩壊にも繋がる要素が現状消えてよかった。まあ別に見ようと見まいと勝手なのだが……時と場所によっては私も一緒に鑑賞というなんともシュールな事態が起きてしまうので気まずいのだ。
「よし、準備完了っと。早速起動!」
準備が終わったPCを早速起動し、色々な設定を済ませていく。そしてその中にあるパスワードの設定のみ見ないようにしておいた。
「さてっと、それじゃあ霧乃さんはモンスターファンタジーっていうオンラインゲームの中に入ってて」
「それは何故ですか?」
「まあ、取り敢えず入ってて」
「──? わかりました」
何を企んでいるかはわからないが、そのゲームの中に入らないと話が進まなさそうなので入ることにした。
サイバネットワールドの中にあるゲームのサーバーは無限にあるが、暇ある時にサーバーの場所を大体で覚えて行ったのでマスターの言ったモンスターファンタジーというゲームのサーバーがどこにあるのかも大体わかる。
「そういえば、最近こういうソシャゲとかしてなかったなー」
最後にしたのは夏休みに入る前だ。夏休みに入ってからは存在すら忘れていた。
これも全て色々なことがありすぎたせいだ。そうとしか考えられない。
「あったあった。モンスターファンタジーのサーバー」
アクセスするにはログインしてください、と表示されるが勿論このゲームはしたことがないのでアカウントなんて持っているわけがない。
「ということで、新規作成っと」
データ保存の為にもこのアカウントは作っておかないといけない。不正アクセスして捕まるのも嫌だしデータが消えるのも嫌だし。
「メアドは……私のパソコンの方のでいいや」
恐らくマスターのこのゲームをすると思うので、マスターのスマホのメアドを入力するのはやめておく。
無断で使うのも良くない気がするし。
「作成完了っと。後はこれを入力して──」
私が登録したIDとパスワードを入力した途端、周りの風景がパッと変わった。サーバーにアクセスできたのであろう。
『ようこそモンスターファンタジーへ! まずはこの世界での貴方の分身であるキャラクターを作成しましょう!』
「……あ、この姿のまま入れないのね」
レースゲームや一部のソシャゲのような主人公が決まっている。或いは主人公の姿が見えない場合はこういうキャラクター作成はないが、自分のキャラクターが主人公のオンラインゲームの場合は自身のキャラクターの作成が必要だ。当たり前である。
「へー、種族が四つとな」
このゲーム──モンスターファンタジーには種族が四つ選択できる。
人間──全体的に平均的な能力値。初心者向け。
エルフ──属性攻撃に特化しているが体力や物理攻撃力が低めに設定されている。上級者向け。
オーガ──体力と物理攻撃力、物理防御力が高めに設定されているが属性に関しては使えないし耐性も低い。中級者向け。
ビースト──全体的に速い。その代わりに体力と物理攻撃力がやや低め。中級者向け。
と言ったところだ。勿論私が選んだのは──
「エルフ一択!」
勿論エルフだ。貧乳小柄のロリエルフは可愛い。異論は認めん。
……これを元男の私が言うと変態みたいに見えるな。
細かいキャラクターメイキングは今の私の姿を元に作り、完成したのは本当に私の分身とも言えるクリーム色の長髪を持つロリエルフであった。うん、満足。
『それでは、モンスターファンタジーの世界へレッツゴー!』
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