病弱聖女は生を勝ち取る

代永 並木

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病研究編

病弱聖女は東側の戦線に加勢する

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 走って向かう
 足が遅い、身体能力が上がっているとは言え元の身体能力が低過ぎる
 時間がかかるから準備をする
 着いてすぐに使えるようにと

 ……準備しておこう。攻撃か、治癒か……治癒だな

「聖女たる私がこいねがう、かの者達に癒しを、かの者達に祈りを、かの者達に希望を! 癒しは降り注ぐ」

 詠唱を終えて魔法の発動を止めておく
 東側に着く前に城壁を登っている魔物を見つける

 ……魔物

「光よ聖女の名を持って命じる、剣となりて悪しき者を打て! 光の罪剣ジャッジメントソード

 光の剣を飛ばして魔物を貫く
 力を失った魔物は地面に落ちる
 魔物が登っているという事は既に城壁付近まで来ているという事

 ……魔物がもう城壁まで来てるって事は

 戦線は崩壊している可能性がある
 となると不味い
 残っている魔物の数がどのくらいか分からないが私1人ではどうにも出来ない
 東側の後衛部隊が居るところに着き合流する
 後衛部隊が魔法を放っている

氷聖女の祈りミリス・ヒーディス

 着いて即座に魔法を使う
 高範囲の味方を回復させる

 ……一先ずこれで何とか維持出来るはず

 魔法を使った事で後衛部隊の人が気付く

「聖女様!?」
「西側はどうしたんですか?」
「魔法助かりました」
「終わった、状況は!」

 今はすぐに状況を知りたい
 後衛部隊の1人が話し始める

「前衛部隊が何とか耐えていますが捌き切れなかった魔物が既に城壁付近まで一部の魔物が来ています」
「何があったの?」

 西側と東側の戦力に差は無い
 それなのに押されているのは東側に強い魔物が出てきたのかそれとも
 戦場を見る、目に見えて原因が分かればと思ってみるとゴーレムが戦線で暴れていた
 それも2体居たようで1体は倒されている

「ゴーレム!?」
「あいつが厄介で多くの前衛部隊がやられました」
「ようやく1体は倒したんですが」

 西側は1体、それも即倒したが見た目通り強い魔物だったようだ
 魔法の詠唱を始める
 直ぐに倒す、この魔法なら一撃で倒せる

「聖女たる私が魔の者を撃つ、一矢よ駆け抜けろ炎聖女の弓リリス・フルールド

 弓を構えて矢を放つ、狙いはゴーレム
 高速で放たれた光の矢がゴーレムを撃ち抜く
 矢によって出来た穴から亀裂が入り崩壊していく

「おぉ!」
「一撃で……」
「おぉ!」
「ぼさっとするな!」

 感心している彼等を睨む
 戦場は見て分かるほど押されている
 感心しているそんな余裕は無い

「は、はい!」
「すみません!」

 後衛部隊のメンバーを見る
 何か違和感がある、何かが足りない
 少し考えると思い出す
 東側にはヒナが居た筈、だが見つからない

「ヒナは?」
「そ、それがヒナ様は魔物の攻撃を受けて下に……」

 すぐに下を見る
 城壁は結構高い、だから下を見てもヒナ1人を見つけ出すのは難しい
 私は飛び降りる
 短剣を取り出して城壁に傷を付けながら速度を抑えつつ降りる

「ヒナ!」

 私は叫ぶが返答は無い
 近くに居た魔物が私に気付いて襲いかかってくる
 構っている時間は無い

「光よ聖女の名を持って命じる、剣となりて悪しき者を打て! 光の罪剣ジャッジメントソード

 素早く詠唱して複数の光の剣で串刺しにして倒す

「邪魔」

 倒れるところを確認するまでも無く周りを見渡してヒナを探す
 近くの魔物を光の剣で刺し貫き探す
 城壁から落下したなら死んでいる可能性はあるがヒナも身体能力を強化している
 運が良ければ生きてる

「ヒナ! 居るなら返事して!」

 声を上げる
 返答は無く見つからない
 魔物に攻撃をしながら探す
 すると魔法の発動が見える

 ……あの魔法は

 聖女が使える攻撃系魔法、五月雨
 小さな光の礫が発生している
 ジャッジメントソードよりは威力が劣る魔法
 ヒナは聖女の名を冠する魔法を使えない
 そもそもあれらは習得難易度が異常で歴代の聖女様でも1つ2つしか使えない
 若いヒナがそれ以外の魔法を使えるだけ凄いのだ

 ……あれは聖女が使う魔法

 私は走る
 光が現れた元に向かう
 光の礫が魔物に襲い掛かる、魔物に傷を付けて倒す
 だが他にも魔物が居る
 魔法に気付いて襲いかかっている
 光の剣で魔物を一掃する

「近付くな」

 そして光が現れた所に行く
 ヒナが倒れていた、足が本来曲がらない方向へ曲がっている
 落下した時に折れたのだろうか、片腕も無く傷口から大量に血が流れている
 意識はあるようでこちらを見る

「お、お姉ちゃん?」
「ヒナ! 待ってて直ぐに治す」

 直ぐにヒールを掛けて傷を治す
 腕が再生し折れた骨も治っていく
 今の私なら生きているのなら治せる

「お姉ちゃん……ここは危険だよ」

 ヒナはゆっくりと立ち上がる
 ヒールで傷は回復したが無理やり動いている

「無理をしたらダメ」
「逃げて、お姉ちゃんは……早く逃げて! 奴が来る!」

 ヒナが叫ぶ
 必死に私に逃げるように行ってくる
 奴、その存在は脅威なのだろう

「奴?」

 爆発音がして大きく地面が揺れる

 ……揺れ、この爆発音は

 西側の戦線にも聞こえていた爆発音、その正体が動いた
 そして地面の下から何かが現れる
 地面から飛び出してきた

「光よ聖女の名を持って私が命じる。礫となりて敵を撃て!シャイニング」

 ヒナは地面から出てきた魔物に魔法を放つ
 光の礫が飛んでいき飛び出した魔物に命中するがビクともしない
 砂煙が消えその存在がはっきりと見える
 その姿はムカデ、全長は4mはある巨大な百足
 大量にある足をカチャカチャと動かしている
 口は捕食した物を切り裂く鋭利な牙を持つ

「早く逃げて! 私が時間を稼ぐ」

 ヒナは魔法を発動させて走る
 意識を向けさせる為に攻撃を仕掛け私から離れる

「大きい魔物、成程、この魔物が爆発音の正体」

 ヒナは逃げてと言ったけど逃げる気は無い
 このまま逃げたらヒナは死ぬだろう
 今の私なら倒せる、ここで倒す
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