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28話

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暫く考えて思いつかないので街中を歩いて暇潰しをする
また魔族が来るかもしれないとは考えているが結界があることが分かれば多分攻めてこない
まだエルドーダの王が来るまで時間はある
その間特にやる事はない
修行として何処かに行きたいが王が来るまで1ヶ月程度しかない上、私が交渉の際にいたので同席しないと失礼に当たる可能性もある
クイナがあれば問題は無さそうだが念には念を入れておきたい

……それについては話し合って決めよう。すぐにでも修行はしたいから

『呼びました?』
「まだ呼んでないけど修行の手伝いしてくれない? 出来る限り早く強くなりたい」
『では死を覚悟して訓練して成長するか死ぬ可能性がほぼない特訓をするか。どちら選びます? 前者は強くならないと何回だって死にますよ』
「死を覚悟する」
『分かりました。では近くの森で特訓しましょうか。全力で殺しますのでご覚悟を』

クロルの指示した場所へ向かう
森の中に入るとクロルが待機していた
少し奥に進み魔物が強い為大抵の人は入ってこれない場所へ移動して訓練を始める

「私と対等に戦えるくらい強くならないと話にもなりません。エルドーダの王が来る前までに最低でも1割程度は私が力を出さないと行けなくなるほど強くならないならそれ以上強くなれる見込みはありません」
「私こう見えてもリアに一勝してるけど」
「たった一勝です。それに彼女は近接戦、私は魔法戦を得意としてます。風魔法 神霊の息吹」
「闇魔法 ブラックウォール」

三重に壁を作り出して攻撃を防ごうと試みるが壁ごと吹き飛ばされる
木にぶつかり止まる

「風魔法いや神霊魔法の使い手にどうやって勝ちますか?」
「神霊? クロルは魔族の筈じゃあ?」

神霊と呼ばれる存在は魔族と敵対している上で神霊種は滅多に姿を現さないらしい

「魔族は大抵子を作ろうとはしませんがごく稀に居ます」
「神霊と魔族のハーフ!?」
「そこまで驚く事はありませんよ。惚れた相手の子を産みたい又は産ませたいなどは誰も同じでしょう?」
「へぇ、そう言ったのはいまいち分からないからなぁ」
「神霊魔法 神霊の息吹」
「闇魔法 黒百弾雨」

神霊の息吹相手に対抗するために魔法を放つが無力化される
放たれた風の刃が私を貫く

「この程度ですか?」
「まだまだ」

立ち上がると同時に刃で斬られる

「我が身と……」

詠唱をしようとするが刃で貫かれ詠唱すら許されない
クロルは欠伸をして暇そうにしている
闇魔法を放つも当たる事はなく透明な何かで阻まれる
クロルは魔法に長けている上で長年の神霊魔法の研究で攻守共に優れている魔法を完成させている

「弱いというより話にならない」

……ダメだこれ、見えない刃で貫かれるから回避が出来ない

別の作戦を考えるがその間にも刺される
敵を前にして考え事をするのは命知らずのやる事である
リアの時は攻撃したら反撃や攻撃の時は接近するなどの行動を取っているし倒れた後は攻撃などしてこなかった
これは実戦形式であり本当の戦場では敵が待ってくれない

「……戦うのやめたらいいのですよ。戦う理由もないでしょ? 私たちがいれば貴女は必要ありません」

言われたくなかった言葉を言われる
実際私が戦う意味などはなくクロルがいればぶっちゃけ大抵の問題は解決する
あの国に他にも実力者はいるし世界中を探せば強いやつなど沢山居るだろう
私が必死になって戦う理由を探しても見つからない
クロルは私の様子を見て攻撃を辞めて近づいて座り込む

「何故戦うのです?」
「……理由なんて特に無い」
「それなら戦いをやめた方がいいです。吸血鬼という立場から難しいですが家庭を持つ事を目的にして生きれば良いです。子を産み育てる、それに力を入れればいい。それ以外なら今やってる研究ですね」
「……そうだね、そう言った方が私には向いているのかも、こんな姿じゃ家庭を持つのは難しいけどね」

私は笑う
クロルも美しい笑みを浮かべている
……何か一つでも認められたかったから戦ってたのかな? 痛みも苦しみも我慢して何度も立ち上がって、意味あったかな?

「貰い手がいないなら私が貰います。高位魔族は両性です。よろしければ一生かけて守り愛します」
「それも良いかもね」

クロルなら強いし死にさえしなければほぼ永久の命を持っている
私を置いて死ぬ事はまず無いだろう
クロルは冷酷非道で魔族でも性格が悪いと言われているらしいが美人だし多分話は嘘でなく結構真剣に言っているだろう
昔とは違い守られて生きる事も選択にある
自己満足にただ周りを巻き込んでいただけよりも良い人生は歩めるだろう
私はそう考えて戦い以外に何をするか考える


私にとって戦いは必要不可欠な存在だった
生まれてからずっと戦いに明け暮れ部下が死のうが何が犠牲になろうと戦い続けた
そんなことを続けているうちに仲間からは冷酷で残酷な参謀と呼ばれ始めた
魔王などどうでもよくただただ戦い続けていた
魔族にとって名誉とされる七裁王第三席の座を得た後も特に何も変わらなかった
精々後方で指示を出す事が多くなっただけである
体が鈍ってはいけないと考え時々戦闘に混じっていた
魔族は戦闘を得意とする種族で女に生まれようと男に生まれようと強くならねば関係はなかった
戦いに意味があるとは考えていない
神霊と魔族のハーフであったが一度として神霊には会ったことは無い
今、目の前にいる少女を初めて見た時一つだけ思ったことがあった
恋などでは無くただ彼女が欲しいと心の底から思った
だからこそ彼女を所有物にするために七裁王の第三席の座を放り投げるような真似をした
何故なのかは全く分からないけれど
人の国に味方するのは魔族の裏切り行為である
いつか必ず刺客が来て私を殺しにくるだろう
殺される瞬間まで彼女を私の物にしたいと考えた
独占欲はないけれどもただ一緒にいて欲しいと考え戦いをやめるように促した
圧倒的な力の差を見せて戦う必要がないと教える
彼女は簡単に戦う事を辞めようとした
別に戦わないで欲しいわけではないし強くなって欲しくないわけでもない
無知な彼女に何も知らないままでいて欲しいからである
戦い続ければいずれ七裁王の1人がこちらに来て私から全てを遠ざけるために私が醜い怪物だと告げる事だろう
事実なので言い返せないその状況になるのが怖いのだ
だからこそ私は彼女を戦いから遠ざけて永久にその事を知らない立場に置きたいという自分勝手な理由である
私が私である内に
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