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22話

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壁が破壊される音とともに目が醒める
ゴブリンに似ている姿をしている別種の魔物が中に侵入してきていた
ナイフや盾を持ち警戒しながら近づいてくる
敵を前にしてもなぜか眠気が優っている

……眠い、駄目だ寝てしまう

「最悪……」

睡魔が襲い目を閉じる
その前に魔力を微量に流しておく
魔力は壁を通り全体に広がり偶然魔物を無力化した
周囲の敵を無力化する魔法ブラックダウンが発動していた
それを知らずに私は寝転がって眠る
完全に眠気が無くなり立ち上がる
近くにいた魔物は倒れているが息はあるため壁を解いて空を飛び逃げる
飛び道具を使ってくる魔物の攻撃を避けて進む
風魔法を纏い速度を上げて空高く飛び魔法を発動する
新たに作り出した魔法による攻撃には詠唱が必要であったため相手の攻撃が届かない距離まで行く必要があった
大きな黒い魔法陣が空に広がる
その大きさは山一つ分の大きさがある

「闇は集まり全てを撃ち貫け。闇が空を染めて敵に降り注げ、闇魔法 黒千弾雨」

闇属性の魔力弾が魔法陣から現れ数千個魔物目掛けて降り注ぐ
広範囲に降る弾に魔物は逃げることが出来ずに撃ち抜かれていく
しばらく降り注いだ後魔法陣は役目を終えて消える

「ごっそり魔力持ってかれたけど持っていった分の火力はある」

空を飛び目的地に急ぐ
道中に予想以上に時間が掛かってしまったので少し急ぐ
グラングレス洞窟の入り口を見つけ接近する
気温がもうおかしいくらい上がっているせいで立っているのも辛い

「この場合はどうすればいいのじゃ? 風魔法を纏ってもこの奥は厳しそうじゃ」

暑さにやられ膝をつく
肌が焼けるような感覚に襲われる
実際は焼かれてなどはいないが暑さでそう錯覚してしまう

……暑い、焼けるようだ

焼けるような苦しみに襲われその場から動けない

『おや、シャル助けてあげましょうか?』

クロルからの通信が届く

「暑さで死にかけてるだけ、何か方法はある?」
『それは教えません。それを自分で探してこそ強くなれます。まぁ、一つヒントは上げましょう。私なら魔法を使わずに暑さ、寒さを超えられます』

クロルのヒントを受けて考える

……魔法を使わないなら道具? いや、それ以外の何かだよね?

「魔法を使わずに? それは生身?」
『勿論、そうですよ。裸でも出来ます。シャルやってみますか?』
「服脱げば少しは暑さ和らぐなら今すぐにでもなりたい気分だよ。私は別に露出狂ではないがな」

冗談を言って苦笑いをする
実際暑過ぎて思考がまともではない為和らぐならやりかねないと心の中で思っている

……裸でもってことはこれくらいかな?

『それは見てみたいですね。ふふふ、教えなくてもそこまで言えば分かりますよね?』
「有難う。分かった」
『では頑張ってください。あっ、帰ってきたらお礼に裸で抱き枕になってくれても構いませんよ』
「考えておかない」

通信が切れる
深呼吸をして魔力を放出する

……流石にクロルの言っていたことはしないけどお礼で抱き枕くらいにならなってあげてもいいかな?

今まで隠していた膨大な魔力が一気に流れ出る
魔力が枯渇しかけるが関係なく放出する
近くの魔物たちが危険を感じ離れていく

……魔力について何も知らない訳じゃない。少なくとも私は数千年掛けて魔力を調べた! 負け続けるのはもう懲り懲りだ。勝てなくても負けない! ……少なくとも奴らよりも私の方が上だ!

昔の記憶が蘇る
意味もなく負け続けていた
勝利に飢えたが世の中に飲まれた
何も知らない奴らに知ったかぶりの無能に私は負け続けた
世の中は厳しい……なんぞ分かってる
少なくとも私は知っていた
お前らが普通に生活している間に死にものぐるいでこちらは生きていた!
忌々しきあの力で私は見ていた
苦しみも痛みも悲しみも本人以外が知る訳がない
知ったかぶるな偽善を掲げるな、つまんねえんだよ
自分が愚かで弱く惨めなことくらい知っている
あの世界を嫌い弱かった自分を責め立てるその行動は自虐行為と言われる類の物でリストカットなどと同じく自分を傷付ける行為である
世間一般的にはおかしいとされる行動で理解もされ難いが昔からやっていた

『前世とリンク完了、ユニークスキル覚醒 スキル自虐成長 スキル効果自身を責め立てる事で窮地に陥り限界を超える。精神力が一定を超えないと狂う危険あり』

「……でも私は無能じゃない! 私を嘲笑った奴に、世の中を知らないと言った奴にも貶したやつにも私は勝つ!」

叫ぶと共に周りの魔力が私の元に集結する
元々私の魔力も周りにある魔力も私の元へ集まり私と一つになる
そして私は己の限界を一段階超えた
魔力は私の身体を囲んでいる
手を振るうと魔力が斬撃のように飛び木々を斬り裂く
周りを囲んでいる魔力は涼しく心が安らぐ効果があるのか万全の状態まで戻る
地獄を振り返る事により成長させる恐ろしき力で普通なら狂いかねない
狂わないのは昔からやっていた行動だったからである
私は涙をこぼす
己が与えた己自身の痛みの深さを感じ精神が壊れかけた所為で勝手に涙がこぼれた

「自分でやった傷なら許容できるのは当然だけど他人から受けた傷を許容出来ないことも当然、他人からの傷を認めてはいけない」

先ほど感じていた暑さなど消え去り目的地の洞窟の先にいる強敵を見据えていた
私は洞窟の中に入る
洞窟の奥にいる強敵もまた先ほどの異変を感じ戦闘態勢に入る

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