魔力に嫌われた女剣士と魔法で呪われた少女〜魔法を使えない無能にして最強の剣士〜

代永 並木

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呪い編

隣国アルトラ

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「何故狙った?」
「嘘をついてたのか」
「質問に答えて欲しいんだけど」

首元を剣で触れる
リーダーの首元にひんやりと冷たい感覚が襲う

「あの商人が何を運んでるか知ってるか?」
「知らない」
「貴族が使う道具だ。高値で売れる」
「なるほど、だから襲ったと」
「ここなら危険、商人が死んだとしても気付かれない。確かに良い考え」
「運が悪かったねぇ」
「化け物共が」
「化け物は心外だな。ただ強いだけなのに」

ミラがナイフを頭に突き刺す

「早く行こう」
「そうだねぇ」

2人は馬車に戻る
御者が怯えている

「お、終わったのか?」

恐る恐る聞いてくる
クロナは頷く

「終わったよ」
「そ、そうか助かった。まさか護衛隊が裏切るとはな」
「金目当てだからね。貴族の道具運んでるんでしょ?」
「あ、あぁそうだ。貴族が使う道具を運んでる。お前たちも欲しいのか?」
「金はまぁ欲しいけど販売ルート無いし」

盗んだ物は普通には売れない
裏の売却手段が無いとならないがクロナやミラはそのルートを知らない

「報酬はしっかり払おう。護衛隊に渡す分もだ」
「それは助かる。護衛はしっかりやるよ。アルトラに用があるのは本当だし」
「分かった。馬車を動かす事は出来るか?」
「……ミラできる?」

後ろの馬車は護衛隊の1人が操作をしていた
今はその操作していた人物もいない
クロナは馬車の操作を出来ない

「一応」
「なら任せた」
「はぁ、分かった」 

ミラは馬車を降りて後ろの馬車を操作しに行く
本当の休憩場所へ向かう

「休憩場所は安全なの?」
「比較的安全ってだけで魔物が出ない訳じゃない」
「成程、なら夜警戒必要か」
「今のうちに寝て溜めて置くといいぞ。普段の護衛隊はそうしてたしな」
「成程、て事は怪しんでた?」
「いや、今回は後ろの奴らが警戒するのかと思っていた。正直今回の商品は高値で売れるが儂を殺してまでは割に合わない」
「どういう事?」
「アルトラへ行く商人は少ない。そしてあちらに向かう話はしてある。儂が来ないとなれば怪しむ」

アルトラへの道は危険、それ故に商品を運ぶ商人も少ない
他国の道具を持ってくる重要な商人に何かあれば騎士団が動く
軍事国家と言われるアルトラが本気になれば他国の冒険者などすぐに捕まる

「確かにそれは怪しむね……ところでアルトラの騎士は優秀なの?」
「アルトラは軍事国家だ。この大陸最強の騎士団が居る国だぞ」
「そうなんだ」

……軍事国家楽しみ、手合わせ出来ないかな

「骸龍討伐はなんでしなかったの?」
「さぁな、戦力を割きたくなかったって理由かもな」
「あぁなるほど」
「それで何しに行くんだ?」
「正確にはアルトラじゃなくて南側にある山に用がある」
「山……エンリスオ山か。今のエルダス山」

龍種相手となれば被害が出る事を覚悟しなければならない
そして戦力も投入する事になる

……あれも騎士団長が居なかったら勝てたか分からないしね

馬車を走らせ予定していた休憩場所に着く

「ここだ」
「テント立てる」
「丁度いい、護衛隊の使え」
「良いねぇそれ」
「荷物持ってきた」
「早い」
「そいつらの荷物貰ってけ。必要な物だけでもよ」
「そうだねぇ、なんか良い物あるかな」

護衛隊の持っていた荷物から略奪する
使い古されているが安物とは違いしっかりとした物が揃っている

……流石プロ、目先の利益に目が眩まなければ将来的にもっと稼げただろうに

テントを立てて食事を取り終える
御者が眠りについた後2人は警戒をする

「馬車操作するんだから寝てていいよ」
「数日起きてるくらい問題ない」
「私も起きてられるから」
「そう、なら寝る。何かあったら言って」
「了解」

ミラがテントに入っていく
警戒していると魔物の気配を感じる

……数は居ないけど

暗闇に潜む魔物を魔力の流れで見つける
剣を抜いて魔物に突っ込む
魔物は接近に気づいて攻撃を仕掛けてくる
攻撃を躱して腕を切り裂いて首を切り落とす

「後ろに潜んでたか」

そのまま2人が気付かないように静かに魔物と戦う
木の枝に登り周りを見渡す
真上から葉っぱを書き分ける音がする
その音は風ではなく何かが動いている時に鳴る音

……真上? 小さい魔物か

素早く枝を切り落として視界を確保する
素早く何かが通る姿を確認する
小型の魔物らしき物体が駆ける

「早いけど……襲いかかっては来ない。なら一先ず無視でいいかな」

近くに居る魔物を狩っていく
調子に乗って少し遠くまで魔物狩りをする

……やべ、行き過ぎた

急いで戻る
テント付近に魔物が来た形跡は無い

「セーフ、次は気をつけよ」

朝まで警戒を続けるが魔物は来ない

……最初以降来なかった、張合い無い

「魔物は?」

起きてきたミラがクロナに話しかける

「来なかったよ。張り合いが無い」
「来ないに越したことはない」
「そうだけどさ」
「元気だな」
「まぁ数日であれば起きてられるから」
「ほう、それは凄いな。護衛向いてるぞ」
「戦い続ける訓練はしたからね」
「そりゃ過激過ぎないか?」
「まぁ師匠は結構スパルタだったね」
「どんな師匠なんだ?」
「名前は知らないけど強い剣士、剣は当然、魔法も上手かった」
「そりゃ凄い」
「昔龍狩りをした事があるとか」
「昔……師匠は何歳なんだ?」
「分かんない、出会った時にはもう結構なお爺ちゃんだったのは覚えてるけど」
「確か35年前に龍が斬られた、誰がやったかは一切不明の」
「それかも?」
「名も知らぬ龍殺しの剣士、本当に名誉を望まず力だけをって奇人だな」
「確かに」

雑談をしながら支度をして馬車に乗り移動を開始する

王都を出てから合計5日で隣国アルトラに着く
高い城壁に囲まれた国
国の領土の殆どが城壁に囲まれている国で城壁の上や城壁の高さのちょうど真ん中位の位置には防衛兵器が立ち並ぶ
対魔物、対人を兼ね備えた兵器

……あれに撃たれるのは無理だなぁ

一つ一つにかなりの量の魔力が込められた兵器
並大抵の魔物は当然、人間が喰らえば跡形もなく消し飛ぶような威力を持つ

城門の前で列に並ぶ
待っているとクロナ達の番になる

「ヘンリーさん、お疲れ様です」
「今回はちょっと問題が起きたがな」
「そうなんですか? 彼女達は?」
「今回の護衛だ」
「いつもの護衛隊では無いんですね」
「あいつらは裏切りやがった。まぁこの嬢ちゃん達が一掃してくれたが」
「そうなんですね。無事で何よりです。確認は終わりました。どうぞ」

検査が終わり中に入れる
城門付近に家はほぼ無く農地で農民が働いている
遠目に幾つか集落のような人工物の塊が見える

「ワールの王都と違う」
「全く違うだろ。城壁で領地の殆どを囲んでる特殊な国だ」
「凄いなぁ」

……これがアルトラ、なんと言うか規模が違う

大半の国は領地が広く城壁で囲むのは困難、大きすぎると城壁防衛に割く人数を増やす必要があり大半の国は王都及び主要な村や街に個別に城壁や柵などを作っている
ワール国も幾つか城壁で囲んでいる場所がある

アルトラは他の国に比べると領地が狭い
原因は北と南にある山だがその山が他国の侵攻を阻む要塞となっている

馬車は整理された道を進みアルトラの王都へ向かう
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