魔力に嫌われた女剣士と魔法で呪われた少女〜魔法を使えない無能にして最強の剣士〜

代永 並木

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呪い編

呪いの専門家

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アルトは騎士団に向かい2人はギルドへ向かう

「まさか裏で貴族が無法者と繋がっているとは」
「驚きだねぇ」

コットーとは別の貴族がスラム街の元締めと繋がっていたとはクロナも思ってはいなかった

……それも騎士団の副団長の兄妹とは

ギルドに行くがユイラは見つからない

「騎士団?」
「かもね。そんなに時間は経ってないし」
「呪使いの事がわかったとしてもどうやって見つけるつもり?」
「……さぁ?」
「え?」
「まぁでも知ってる人間なら大体の活動域は分かるんじゃない?」
「呪いの解除は本人以外は無理?」
「多分? 他の手が使えるならそっち試してると思うし」
「リミットは?」
「……後11ヶ月」
「短い」
「そう、短いんだよ」

1年という時間でたった1人を見つけ出すのは困難を極める
王都に居れば良いが国外に逃亡していたら騎士団の協力があったとしても他国での捜査は厳しい

「そろそろ合流の時間だから行こう」

2人はリードロの言っていた場所へ向かう

……騎士団にもユイラ居なかったらどうしよう

ユイラが騎士団に居る保証は無いが待っている事を祈って向かう

「確かこの辺のはず」

大通りとは違い薄暗い
家が立ち並んでいる、人気は無いが周辺の家も住んでいる人は居る

「研究所と言うのだから何か分かりやすい物がある筈……あれ」

ミラが指を差した所には看板が置いてある
文字が書かれていてその文字は呪い専門店と書いてある
間違いなくここだと確信する

「呪いの専門店って……呪いってそんな堂々と書いてていいの?」
「呪いを使っているんじゃなくて呪いを研究しているなら問題無いと思うけど」
「あぁ、確かにそうか」
「それより騎士が来ない」
「少し遅れてるね。まぁ待とう。ユイラ居ないとだし」
「人の家の前で屯ってるのは誰?」

クロナ達が来た方角から1人の少女が来る
12歳程度の見た目の少女
平民っぽい服装をしている

「家の主……って事は……」
「フォーネ・リルクール」
「僕を知ってるって事はリードロの客?」
「客……まぁ取引したからそうか」
「それで何用? 聞いてると思うけど僕は呪いの専門家、呪いに関して以外は受け付けてない」
「呪いに関する物」
「呪いを覚えたい? それとも呪いを解除する方法?」
「呪いを解除する方法、それで掛けた呪使いの事を知りたい」
「掛けられた人間は?」
「合流の予定」
「そう、なら来たら入ると良い」

そう言い残してフォーネは研究所に入っていく
その後10分程度待っているとアルトとユイラが来る
ユイラはミラの前に立つ

「事情は聞いています。御協力感謝します」
「都合が良かったから手伝ってるだけ」
「集まったし入ろう」
「フォーネさんは居るんですか?」
「さっき会ったから居るのは確定」
「それはタイミングが良かったですね」
「だねぇ。早かったら留守だった」

合流して研究所に入る
中に入ると大きな部屋が1つ、その先に2つの扉がある
応対用の部屋なのか、簡易な机と椅子が置かれている
それ以外には特に何も置いていない質素な部屋

「奥の部屋に行ってるのかな?」
「ですかね」

左側の扉からフォーネが出てくる
そしてアルトとユイラを見る

「呪いが掛けられてるのは貴女か」
「わかるんだ」
「僕は呪いの専門家だ。そのくらいは分かる。取り敢えず座ると良い」

フォーネは椅子を5つ用意する
全員座る

「呪いはどのような呪いだ?」
「これです」

首元の模様を見せる
フォーネは頷き紙に文字を書く

「成程、いつ掛けられた?」
「3週間前です」
「なら後11ヶ月程度か。何故掛けられたか分かるか?」
「雇われたから?」
「その雇い主の動機だ」
「当主の座を磐石にするために私が厄介だったからかと」
「成程、貴族にはよくある話か。解除方法は幾つかあるが呪使い探しでいいのか? 貴族に雇われるような呪使いなら相当の手練れの可能性が高い」
「えっ? 他にもあるの?」

……そんな方法があるなら呪使いを探すより……いやそれより難しいのかな

呪使い探しと言う困難な物以外の方法があるのなら騎士団がその手を取らないのはおかしい
考えられるのは呪使い探しよりも難易度が高い物なのだろう

「あるよ」
「他に1つだけなら聞いた事があります」
「聖水ですか?」
「聖水?」
「そう、聖水」
「しかし、あれは入手法が分かっていないはず、そもそも存在しているかも」
「聖水……なんか特殊な水?」
「あらゆる呪いを解くと言われている水です。しかし、発見された事例は無い伝説上の物」

伝説上の存在、聖水
あらゆる呪いを解ける特別な水
ここ数百年聖水の発見事例はなく今ではもう詐欺に使われる名前でしかない

「成程、聖水は見つかっているとか?」
「あらゆる呪いを解ける訳では無いがその呪いであれば解除出来る水がある」
「聞いた事がありません」
「私も調べては見ましたがそのような話は聞いた事ないです」
「詐欺師じゃないよね?」
「確かに貴族から金を取る術としては詐欺はうってつけ、だけど騎士団と大貴族を相手に出来るほど肝は座ってない」
「知ってるんだ」
「当然、貴族ならこの2人を知らないわけが無い。それにアルト副団長に関しては兄が同じ副団長で居るから」
「あぁそう言えば副団長に居るって」

……どの副団長だろ。斬ってたらやばいな。いやバレなければ大丈夫

クロナは3人の副団長を斬っている
もしその3人のうちの誰かがフォーネの兄であったら不味い

「その水は何処にあるんですか?」
「エンリスオ山」
「エンリスオですか」
「どこ?」
「隣国のアルトラの更に南にある山です」
「アルトラって山に囲まれてるんだ」
「はい、アルトラは北と南に山がある国です。骸龍が居たエルダス山と同じく危険な地帯と言われています」
「まさか龍が?」
「龍は居ませんが瘴気が強く強力な魔物が多いです」
「瘴気、確か魔物が好む魔力の塊だよね?」

瘴気、紫色の魔力の霧
魔物が好み魔石の魔力を強化する
少量であれば問題ないが長時間、大量に吸い込んでしまうと人には毒となる

「その認識で大丈夫です。補足するなら人が多く吸ってしまうと毒となる危険な物という事です」
「成程、そんなところに呪いを解く水が?」
「ある、僕もたった一度だけしか見た事は無いけど」
「一度しか見た事が無いのになんでこの呪いは解けると?」
「その水でその呪いを解いたから」
「経験者?」
「その呪いを昔掛けられた事がある。別の呪いは解けなかったがその水でその呪いは解いた」

フォーネはかつて別の貴族に複数の呪いを掛けられていた
隣国にも渡り呪いを解く方法を探した結果、山にある特殊な水を見つけ呪いを解いた

「成程、なら山に行こう!」
「危険です。魔物の強さではなく瘴気が」
「可能性は多い方がいい。アルトや騎士団は呪使いを探して私が水を探す。どの辺に合ったか覚えてる?」

フォーネは首を横に振るう

「山奥という記憶しかない。あの時以降は行っていない」
「私も行きます」
「危険だって」
「それは貴女も同じ事」
「ましてや魔力で瘴気を防げないクロナさんは更に危険性が……しかし、騎士団が隣国を通るのは……」
「その辺の話は後にして、呪使いを探すなら魔力の検査をしないと行けないからちょっと来て」

ユイラを連れて奥の部屋へ行く

「別れて行動した方がいい。時間は無いから、騎士団で呪使いを探して貰えれば」
「呪使いの捜索はします。私が言っているのは危険性が高いという事です、瘴気は骸龍とは勝手が違います。強ければ問題無いという話では無いんですよ」
「いやでも誰かが行かないと」
「せめて魔力で瘴気から身を守れる人でないと」
「騎士団は行けないんでしょ?」
「不可能ではないと思いますが時間がかかりますね」

騎士団が他国の領地を通るにはその国の許可が必要になる
許可は得られるだろうが時間がかかる、どのくらいかかるかも正確な事は分からない
その上で活動出来る時間が決まっている

「なら私が行く」

ミラが手を上げる

「ミラが?」
「大丈夫なんですか?」
「魔石の魔力を使える私なら瘴気の中でも問題なく活動出来る」

魔石を取り込んで特異魔法で魔石の魔力を使えるミラは瘴気の中でも問題なく活動が出来る

……確かにミラなら強いから魔物の心配も無い、ならミラに任せる?

「私も行く」
「1人くらいなら瘴気から守る事は出来る。どこにあるか分からない以上人数が多い方がいい」

呪いを解く水はエンリスオ山の山奥にあるという情報しかない
エンリスオ山も大きな山、全体を1人で探索するのは時間がかかり過ぎる

「なら分かりました。しかし、無理は絶対にしないでください」
「分かってる。そっちも任せたからね」
「はい、呪使いを見つけ出します」

話し合いを終えて検査が終わるまで暫く待つ

……魔力の主が簡単に見つかればいいけど、手練れって言ってから難しいかな

かなり時間がかかっている

「長い」
「長いですね」
「検査ってそんな時間かかるの?」
「呪いの検査は苦手ですが普通ならこれほどかかる事は無いかと」
「何か異常事態が起きたと考えるべきかも」
「異常事態……ただ手こずってるだけであって欲しいな」

暫くして2人が戻ってくる
椅子に座ったフォーネが真剣な表情で話し始める

「魔力の検査をしたけど2つ知らない魔力だった」
「知らないか」
「2つはね」
「どういう事? 呪使いは1人じゃないの?」
「検査してよかった、大元の魔力に隠れてもう2人呪いを掛けるのに協力をした人間が居る」
「2人!?」

……1人は多分ユイラの兄だけどもう1人居るの?

3人の人間が呪いに関わっている

「大元の呪使いに関しては知ってる。だけど他のもう2人については知らない」
「大元が解除すれば大丈夫じゃないの?」
「最低でも2人、最悪3人全員の解除条件を満たさないとあの呪いは解けない」
「先にその呪使いの情報を」
「1人は知ってます」
「それって兄?」
「はい、私の兄です」
「ただの雇い主じゃなくて呪いにも関わっていたか。大貴族の長男となると無理やり解除させる方法は無理、これは厄介」
「大貴族となると捕まえるのは騎士団でも難しいですね」
「呪使いの情報だ」

呪使いの情報が書かれた紙を机に置く

「どうするかはそちらで決めるんだ。僕の仕事は終わった」

そう言ってフォーネは奥の部屋に行く
4人は研究所を出る
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