魔力に嫌われた女剣士と魔法で呪われた少女〜魔法を使えない無能にして最強の剣士〜

代永 並木

文字の大きさ
上 下
16 / 29
骸龍編

骸龍

しおりを挟む
「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」

「は、はい……」

 わたしは頷く。

「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」

 茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。

「……」

 わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。

「うん? どうかした?」

「いや、なんというか……」

「ひょっとして……警戒をしている感じ?」

「ま、まあ、そうですね……」

 一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。

「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」

「そ、そうですかね⁉」

 わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。

「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」

「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」

「それはもちろん、君に用があるからだよ」

「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」

「! ははははは……!」

 青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。

「な、なにがおかしいんですか?」

「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」

 青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。

「え? マー、マーク……? ええっと……?」

「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」

「ス、スペースポリスマン⁉」

 わたしは思いがけないフレーズに驚く。

「そうだよ、ごくごく普通のね」

 ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。

「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」

「そうかい?」

「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」

「初めて?」

 ノリタカさんは驚いて目を丸くする。

「ええ、初めてですよ!」

「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」

 ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。

「はい」

「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」

「そ、それはそうらしいですけど……」

「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」

「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」

「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」

 ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。

「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」

 わたしはその場から離れようとする。

「あ、ちょっと待ってくれ……!」

「はい?」

 わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。

「………」

 ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。

「あ、あの……?」

「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」

 ノリタカさんは頷く。

「は、はあ……?」

「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」

「え、ええ……」

 わたしは露骨に困惑する。

「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」

「いや、どうしてかなって言われても……」

「まだ不信感は拭えていないかな?」

「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」

「作戦を遂行する上での名前だよ」

「それはなんとなく分かりますが……本名は?」

「わけあってそれは明かせない」

「ええ……」

 ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。

「……マズいかな?」

「いや、いいです。失礼します」

「待っているよ」

 わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。

「げっ……」

 裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。

「やあ!」

「……何故ここに?」

「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」

 ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。

「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」

「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」

「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」

「特例で認めてもらったよ」

「そんなことが可能なんですか?」

「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」

「はあ……調査って?」

「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」

「い、異常ですか?」

「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」

「はいいいいっ⁉」

 ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...