魔力に嫌われた女剣士と魔法で呪われた少女〜魔法を使えない無能にして最強の剣士〜

代永 並木

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骸龍編

作戦会議

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「まずこちらの作戦から話すか。我々は部隊を分ける予定だ。三部隊、まず正面で城壁を守る防衛部隊、西と東の森から攻める挟撃部隊だ。何かあるか?」
「人が足りない。特に前衛が」
「前衛ですか」
「そう」

聞き返しの言葉に頷く

「確かに騎士も冒険者も前衛は少ないですね」
「前衛無しで防衛は無理、例え魔法で殲滅しても討ち漏らしたらそのまま突破される。挟撃部隊は魔法使いだけで構成されるなら何とかなるかもだけど」
「いや、魔法使い以外の者も混ぜる予定だ」
「なら無理」
「そうか」
「討ち漏らしてもすぐに倒せば良い」

1番若い副団長が言うがクロナはすぐに反論する

「相手は強い魔物、魔法に耐えてくるかもしれないし前衛も1体に対して数人でかかる可能性だってある。その場合討ち漏らしても直ぐに倒すが出来ない」
「確かにな」
「軟弱な」
「それに骸龍が出てきたら即破綻する」
「骸龍が出てくるという根拠は?」
「無い。けれど今回のスタンピードは骸龍が暴れたから起きた現象の可能性が高い」
「魔物を追って来るか。有り得なくは無い」
「嬢ちゃん作戦が破綻するも何も骸龍が出たら終わりだ。作戦もクソもない」

龍種は一国を滅ぼせるほどに強力な魔物
総力を持ってしても勝てるか分からない

「骸龍が出てきたら私が戦ってみる」
「無茶苦茶だ」
「子供でも分かるほど無謀な話だ」
「でも今動ける中で最強は私か騎士団長でしょ? どっちかがやらないと行けない」
「そうだな。勝てるのか?」
「私は見た事ないから挑みたいって感じ」
「もし出てきたら私とアルトとお前でだな。誰か他に足手纏いにならない強い者は居るか?」

クロナは考える

……スタンピードを除いて考えるなら防御魔法を使えるユイラとミラかな。ミラは一緒に戦ってはくれないだろうけど何せ騎士団長達は貴族だし

貴族殺しのミラ(推測)は除いて戦える人材としてユイラの名を出す

「ユイラかな」
「ユイラとはもしかして」
「メメト家のユイラなら防御魔法の天才だ。戦力としては不足無いだろう」
「メメト家?」
「ユイラ・メメトじゃないのか?」
「……そう言えばユイラって家名名乗ってない。防御魔法得意って言ってたから多分本人?」
「しかし、ユイラ・メメトは今行方不明になっている筈ですよ」
「えっ?」

クロナは驚く
家名は確かに名乗っていなかったが普通に名前は名乗った
そんな人物が行方不明になっているなど思いもしていなかった

……行方不明……行方? 不明? えっどういう事? ならユイラは別人?

頭が混乱する

「ついこないだ姿を眩ませたんだよ。まさか冒険者になってたとは」
「まぁ何か事情があるんだろうね」
「であれば4人か」
「アルトは誰?」
「私です」

土魔法を使った騎士が手を上げる
アルトをジーと見る

「どうしました?」
「確かに私が斬った3人よりは強いと思うけど足手纏いじゃない?」
「た、確かに実力は劣りますね」
「アルトの強みは無詠唱だ」
「無詠唱……ムエイショウ?」
「無詠唱とは詠唱を省いて魔法を行使する技術の事です」

魔法使いの高等技術、無詠唱
魔法には完全詠唱、短文詠唱、単一詠唱、無詠唱、儀式詠唱がありその中で無詠唱が一番難易度が高い

「だからあの拘束の時何も言わなかったんだ。即魔法が使えると言うのが強み?」
「はい」
「無詠唱が出来る奴はそうそう居ない。瞬時の判断で魔法を行使出来るサポート役として役に立つ」
「成程」
「魔法が使える人であれば知っていると思うんですがもしかして魔法を使えないのですか?」
「半分正解」
「半分?」
「私魔力を持ってないの。だから魔法どころか身体強化も無理」

若い副団長以外全員が驚く
騎士団長も表情は余り変わらないが驚いている

「魔力を持たない!?」
「まじか……」
「そいつの言っている事は真実だ。そいつは魔力が一切無い」

若い副団長だけ何か納得している

「それで副団長3人を倒すか」
「剣には自信があるからね。でも4人割いてスタンピードはどう対応するの?」
「魔法使いだけで構成した挟撃部隊、前衛は全員防衛部隊に回す。指示は残りの副団長に任せる。後は」
「罠とか防衛兵器って無いの?」
「無い」

国の防衛について詳しい騎士団長は即答する

「アルトラとの戦争は骸龍が現れた以降起きていませんし他の国とは同盟を結んでいますから防衛の兵器は今はもう無いですね」

スタンピード自体そうそう起きる事が無く隣国とも戦争状態では無い為、兵器を作らなくなっていた
兵器より魔法使いを配置した方が効率的と言う意見もある

「昔はあったの?」
「戦争が有った時代には城壁の上を埋め尽くすくらい兵器があったと聞きますが今は倉庫で眠っている数個の兵器しか……」

兵器は殆どが廃棄され分解され他の物に資源を回されている

「準備は?」
「スタンピードまでの期間は後2日あるかどうかと言ったところです。まず間に合いません」
「だがそうだな。スタンピード終わった後であれば考えよう」
「なら罠は簡単な奴でも」
「猟師が使うトラバサミなら」
「無いよりは良いかも、札って無いの? ユイラが使ってるんだけど陣を書いておいてって奴」
「魔法使いの中には使える奴がいるな。ただ今から用意したとしても量は」
「少しでも足止めやダメージを与えられれば」
「そうだな。冒険者、騎士それ以外の魔法使いに攻撃魔法の札を作れる者は制作するように通達しろ」
「はい!」
「作戦会議は終わりだ。皆スタンピードに備えてくれ」
「はっ!」

3人の副団長が立ち去りクロナも立ち去ろうとすると騎士団長に呼び止められる

「協力感謝する」
「私達も関係する話だし平民嫌いだったらどうしようかと思ってたよ」
「確かに差別する者は居るがその程度で国を守れる訳では無い。貴族、平民等しくこの国の民が居なければならない」
「好きな考えだ」
「騎士団は強い者を求めている。入らないか?」
「規則とか私苦手だから遠慮するよ」
「そうか、入りたくなったら言ってくれ」
「気が向いたらね」
「呼び止めて済まないな」
「それじゃ」

基地を出る
そして待機しているユイラに話しかける

「ユイラ」
「終わりましたか。それでどうでした?」
「ちゃんと作戦考えてたよ~」
「そうですか」

……聞かなくていいか

ユイラが貴族である事を知ったがそれについてクロナから何も言わない

「あっ、そうだ、攻撃魔法の札は無いの?」
「攻撃魔法の方は私は持ってません。攻撃魔法は苦手なので」
「私も何か準備出来れば良いけどまぁスタンピードが来るまでに周囲の魔物狩るくらいしか」
「それで充分だと思いますけどね」
「あっ、それと骸龍が出た時、私と騎士団長、副団長のアルトって人で戦う予定なんだけどユイラも参加する?」
「します。なるほど、最強の騎士と無詠唱野使い手の2人ですか。戦力としては妥当ですね」
「4人で十分?」
「いえ全く、人数に関しては足りな過ぎますがスタンピード時になら人数は割けないので妥当かもしれませんね」
「まぁあくまで来たらの話だけどね」
「来ない事を祈ります」
「だねぇ」

それから交代交代で門番、騎士、冒険者で見張る
1日後、魔物の大群を確認した
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