魔力に嫌われた女剣士と魔法で呪われた少女〜魔法を使えない無能にして最強の剣士〜

代永 並木

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骸龍編

緊急依頼

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ギルドに着いたクロナは騒々しい事に気付く
冒険者達が真剣に話している
耳を立てる

「防衛って何すんだよ」
「兵士や騎士と一緒に城壁付近の見回りと付近の魔物の討伐」
「暫く依頼は出来なそうだな。収入源が」
「仕方ねぇだろ、一大事だ」
「数十年に一度あるかどうかの……」
「代わりに参加すれば悪くねぇ報酬が貰える」

国の一大事となれば国からも金が出てギルドも高い報酬で依頼を出す
そうしないと冒険者は参加しないで他国に逃げる事が多い
報酬が多ければ受ける者も出てくる

「俺はパスだな。スタンピードなんてヤバすぎる」
「高位冒険者は今出払ってるしな」
「最悪骸龍、まぁ流石に奴は出てこないだろうが」
「出てこなくてもだ。エルダス山から出てくるなんて……」
「早く気づいて良かったぜ」
「運が良かった」
「あぁ、異変を早期に発見出来たのはでかい」

……エルダス山、スタンピード? 最悪骸龍……なんか一大事?

受付に行く
事情を聞くのなら受付が一番手っ取り早い
先程話した受付嬢とは別の人が対応する

「すみません」
「なんでしょうか?」
「何かあったんですか?」
「あ、はい、えぇっと何処から話せば」
「私が話します」

先程話した受付嬢に変わる

「クロナさん、貴女が倒した魔物の判別が終わりました」
「判別?」
「はい、貴女が倒した40体の魔物、その半数は平原に生息していない魔物でした」
「それって」

ロルベアと同じで付近に生息しない魔物

「エルダス山麓に生息する魔物です」
「ロルベアと同じ……だからか」
「冒険者の話を聞きましたか」
「少しだけ、スタンピードがなんとか」
「スタンピードは魔物が王都や村などに大量に押し掛けてくる事を指します。理由は幾つかありますが今回の場合は恐らく骸龍が暴れたのでしょう」
「骸龍が?」
「はい、そのせいで付近の魔物が逃走しその一部が王都に来たのだと思います」
「まぁ確かに骸龍強いって聞くしそんなのが近くで暴れたら逃げるよね」

危険を察知した魔物が逃走するケースはある
弱い魔物や圧倒的な力の差があると起きる現象
それが数体ではなく数十体規模で起きて近くの村などに突っ込んでくる
それがスタンピード
対策をしないと甚大な被害が出てしまう

「その認識で大丈夫です。それで全冒険者に依頼を出しています」
「依頼?」
「スタンピードに備えて防衛強化の手伝いです」
「成程」
「そう遠くないうちにスタンピードの本体が王都に来るでしよう」
「その迎撃か。全冒険者って事は私も参加出来るってこと?」
「はい、報酬は活躍によって変動しますが参加すれば最低報酬は支払われます」
「参加するよ。一大事だしね」
「分かりました。それと情報料です。今回早期発見出来たのはクロナさんのお陰と言っても過言ではありませんので」

10枚の紙幣が手渡される
クロナが渡したのは重要な情報、その分高い

……10ティル!? 情報料だけで!? そりゃデマでも情報出したいね

手が震える
今使っている剣の3分の1の金だがクロナにとって大金である
見つけたのは本当に偶然、集合時間より早く起きて暇だったから魔物狩りに出ただけであった

「こんなに貰えるの?」
「情報料は物に寄ります。今回はスタンピードの情報でしたので」
「な、成程」
「新しい情報を得ればその分追加で払われますが現在かなり危険を予想出来るので辞めておいた方が良いと思います」
「10ティルで十分だからなぁ。流石にしないかな」

……報酬以前に城壁付近で戦闘するより早めに迎え撃った方がいいと思うけど平原や森の魔物まで戦う事になるからかな

「新しい情報が出たらその都度ギルドは参加者に情報提供します。それと何かあれば即報告を」
「はーい……骸龍がもし現れたら?」
「例え骸龍が出たとしても依頼は変わりません。ただ骸龍を倒した冒険者には高い報酬が支払われます」

……出てくれれば都合が……いや余りにも危険過ぎる。大人しく防衛参加するかなぁ。ユイラに伝えないと

「情報ありがとうございます」

ギルドを出てユイラを探しに行く為に大通りに向かう道中でユイラと遭遇する
買い物を終えて丁度ギルドへ向かってきていた


「クロナさん」
「丁度良いタイミング」
「新しい情報得ましたか?」
「スタンピードが起きるらしい、エルダス山で骸龍が暴れたかも知れないって」
「スタンピード!? 成程、依頼が出たんですね」
「全冒険者に防衛協力の依頼が出た」
「成程、遠出は中止ですね。防衛参加をしないと被害が出ます。骸龍は来ると?」
「今の段階だとまだ分からないけど来る可能性はある」
「来ては欲しくないですね」
「流石にね」

ユイラも依頼を受け食事を取り城門へ向かう
防衛協力は今日から可能
門番が立っていた、朝戦っていた門番とは違う

……負傷してたから変わったのかな

城壁の外に居る門番に近付く
門番は2人の接近に気付く

「協力の冒険者ですか?」
「はい、そうです」
「新しく魔物出た?」
「いえ、出ていません。ただ平原の魔物に妙な動きがあります」
「妙? どんな?」
「エルダス山の方向を静かに見ています」
「それは確かに妙、なにかの予兆を掴んでる?」
「動物は危機察知能力が人より高いと言いますしね」
「果たして魔物を動物と呼んでいいのか……」
「魔物には魔物にしかない特殊な器官があるって聞いた事があります。恐らくその器官でしょう」
「へぇ……なるほ……」

肌を突き刺すような視線を感じる
殺意を混ぜ込んだ視線

……視線、殺意? 外から誰? この気配人……いやなんだろう。変な気配

気付いた事に気付かれないように顔は動かさず視線のする方を探る

……平原側かな。確認しに行くかな。こんな分かりやすく殺意を向けるなんて

門番とユイラの2人は視線に気付いていない
そのお陰でクロナが気付いた事を相手は気付いていない

「遠い……」
「どうしました?」
「いや、なんでもない。私は平原確認してくるよ。ユイラは門番と一緒に城門付近警戒で魔物出てくるから」
「分かりました。色々と細工もしたいですし」
「それと紙とペン貸して」
「私が持っています」

門番の1人が紙とペンを手渡す

「ありがとね」

受け取りササッと書いて2人に見せる
2人はそこに書かれた言葉を見て驚くが表情を変えずに静かに頷く

「それでは私達は城門付近の警戒をします。お気をつけて」

クロナだけ平原へ向かい2人は城門側へ戻る
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