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2章天鬼鶏

社畜 訓練

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四日間一鬼と訓練をする
四日間全ての訓練で一鬼に圧倒される
技術力の差だ

「……全く勝てない」
「そろそろ木刀にするかぁ。危ないし」

攻撃が掠った一鬼はこれ以上の真剣の戦いは危ないと考え木刀と木槍を取り出す
(元々危ないんだけど……)

「筋はいいよ。そう遠くないうちに技術でも私に追いつける」
「そうかなぁ」

追いつけるイメージが湧かない
そのくらいの差がある

「まぁ私は第二形態を残してるけど」
「何それ怖っ」
「凄い限定的な異能だから」
「限定的?」
「そ、ダンジョンアタックじゃ使えない異能、正直使い所が殆ど無い」
「そんな異能もあるんだな」
「私以外には聞いた事ないからレアケースかも、大抵の異能はダンジョンで真価を発揮するから」
「俺の異能なんてまさにそうだな。普段使いとかキャンプの火起こしと冬の時暖かいくらいな気がする」
「炎は便利だけどそれと同時に危険だからね。天音の異能も普段使いはほぼ出来ないしまぁあれは犯罪者確保とかに凄い便利だけど」
「確かに魔物だから破れるけど人間が拘束されたら脱出は難しいかも」

4級、3級の魔物は強い
平均的な人よりも力があるから拘束を破れているだけで人であれば鎖を突破するのは難しい
あの鎖は普通の鎖よりも頑丈に出来ている
容易く突破出来る魔物が異常なのだ

「取り敢えず次で最後にしよう」
「分かった」

木刀を握る
一鬼が地を蹴り突っ込む
木槍を勢いよく振るう
ギリギリで躱して反撃を繰り出す
持ち方を変えて防ぎ蹴りを入れる

「くっ」

蹴りを入れられた蓮二はよろめく
木槍で追撃をする
振り下ろし、横に飛んで回避して距離を取る

「今のやれたと思ったんだけどな」
「……危なかった」

反応出来なければ木刀が当たっていた
木刀を強く握る
動きを伺う
(こっちからは攻めない)
技術差がある以上攻め込むのは悪手になる

「待ちばかりじゃ勝てないぞ」

真正面から突っ込み木槍のリーチを利用して突きを繰り出す
避けて反撃しようと接近する
木刀と木槍のリーチの差で反撃までに時間がかかる
木槍を戻し木刀を防ぐ
一鬼は再び蹴りを繰り出す
それを片手で止める

「おっ」
「二度は通じない」

逃さないように足を掴む

「残念」

蓮二は足に意識を割いている
両手に力を入れて木刀を弾く
そして木槍で胸元を叩く

「防ぐのは良いけど意識を割きすぎてる」
「負けかぁ行けたと思ったんだけどなぁ」
「弾けなかったら負けてたな」

身体能力に差がある
蓮二の方が身体能力が高く単純な一撃が重い
(技術付けたら本当に怪物になるなぁ)

「流石に疲れたな」
「本当に体力あり過ぎじゃない?」

疲れたと言っても息を少し切らしている程度
蓮二は全敗だがそれでも一戦一戦結構激しい攻防をしている
次で最後と言ったのも一鬼の体力が限界だから

「あぁ、そうだ。彼女の入院してる病院が分かった」
「何処?」
「東病院」
「あそこか、近いな。それじゃ今日行ってみるか」
「彼女は未だに意識不明らしい、ただ山場は超えたって話で後は目覚めるのを待つだけ」
「それなら良かった」

蓮二は安堵する
叶の状態が分かっていなかった
叶は命の恩人だ、もし死んでいたらと気が気ではなかった
彼女の薬が無ければあの傷で死んでいただろう
彼女が居なければあの場から脱出する事は出来なかった
一鬼の訓練で気を紛らわせていた

「浮塚君の連絡先を貰ったから意識が回復したら連絡してくれるらしい」
「そうか」
「あの時の彼女はとんでもなかったな」
「あの戦いか、確かに」

叶の速度は視認出来ないほど早かった
そして苦戦したあの魔物にダメージを与えていた
それも一撃で今まで与えたダメージよりも
高倍率の身体能力強化
命を賭けた切り札
 
「正しく切り札となりうる程の力を得る薬、恐らく副作用を無視して作っている」
「あれは副作用?」
「いや、あれは副作用と言うより身体の限界を超えた結果だろう。限界以上の力に耐え切れずとかな。最もあれなら戦闘中も尋常では無い程の激痛に襲われていたはずなんだが」
「そうなのか……」

蓮二が見ていた限り激痛が走っているようには見えなかった
魔物との戦いの後、普通に話していたしダンジョンの入口まで走っていた
相当の激痛が走っていたようには見えなかった

「もしかして身体への負担に対しても効果があるとか? 効果が切れたら一気に来るなら」
「効果が切れたら一気に……有り得るな。最も常人ならショック死してもおかしくない」

(あの薬……もし他にもあれば欲しいな)
正しく切り札となる
代償を考えれば普通なら使わないが一時的とはいえ超人的な力を得られるならダンジョンであればいずれ役に立つ事がある可能性はある
蓮二はそのリスクを全滅よりはマシと考える
使うのは自分

「あっ、今日行くなら早く行かないと病院の受付時間に間に合わないぞ」
「マジか、それじゃまた明日」
「またあしたな~」

蓮二は病院へ向かう
数十分歩いて病院に着き受付時間に間に合う
諸々の手続きを終えて病室に行く
どうやら個室のようで中に入ると叶は静かに眠っている

「まぁ目覚めてないか……」

目覚めていればいいなと思っていたがそう甘くは無かった
椅子に座る
彼女をこんな状況にしたのは自分が弱かったからと自らを攻める
強ければこんな事にはならなかった
あの時状況をしっかり理解していればまだ戦えたはず
激痛でも我慢すれば戦えたはず
己の甘えだと
自分よりも若い少女が命を賭けたのに自分はまだ賭けていないと

「絶対に強くなる」

探索者を辞めるつもりは無い
増え続けるダンジョン、そしてダンジョンに潜む恐ろしい魔物達
まだ未知な所も多いダンジョン、異能者である自分がやらねばならない
蓮二の異能は憤怒の炎、怒りによって出力を高める炎を操る
自らに対する怒りを炎に変換する

「……また来ます」

病室を出て病院を後にする
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