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冒険者編

冒険者ギルド

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宿に戻る途中、幾つかの屋台を回り食べ物を探す

「そう言えば王都周辺の魔物って勝手に倒していいのかな? あっ、その果物2つくださいな」
「毎度!」

屋台に並んでいた見知った果物をお金を支払い買って食う
(知ってる味は安心するなぁ)
村の近くによく生えていた果物

「……ダメじゃない? 王都周辺は冒険者の仕事が無くなるから」

冒険者は薬草採取、護衛、魔物討伐と幅多くの仕事をしている
その中でも魔物討伐は冒険者家業において最も稼ぎが良く一番多く依頼以外の稼ぎ方法である
魔石をギルドに提出すれば大きさによって値段が変わるがお金が貰える
素材もギルドに提出すればお金になり必要の無い素材は稼ぎとして使える
強い魔物や希少な魔物の素材ならその値段は一気に跳ね上がる

「だよなぁ。流石に王都で模擬戦する訳にも行かんし……入学式までトレーニングだけかなぁ」
「村に戻るのは時間かかるしどうしようか。冒険者になれたりしないのかな?」
「あぁ冒険者……試しに行ってみるか。冒険者になるにはどこ行けばいいんだ?」
「冒険者ギルドだね。大きい建物って聞いたけど何処だろ」

冒険者は皆ギルドで冒険者登録をしている、ギルドで登録しないと冒険者としては認められずギルドが提示する依頼を受けることが出来ない
ギルドは多くの依頼を依頼主から預かり冒険者に紹介する仲介役を務めている

「嬢ちゃん達ギルド行くのか。ギルドならこの隣の大通りにあるぞ。ギルドは城壁付近にあるぞ。こっちから見ると左側にあって2件分くらい大きい建物に大きな扉一つ、看板がなんか良く分からない模様だから分かりづらいから気をつけな」
「あざーす」
「ありがとうございます。暗くなる前に急ごう」
「なら走るか」

魔力を纏い走る、時間的に少し人が居なくなっている
それでも気をつけながら走り周りを見て探す
ぶつかりそうになってもギリギリで回避する

「城壁付近ってことはもっと先か」
「遠いね」
「王都広すぎ」
「だねぇ」

城壁付近まで着き魔力を解いて周りを見渡すと謎の模様の書かれた家2つ分ある建物を見つける
独特な形をした剣と杖の模様、周りには似たような大きさの建物も模様だけが書かれた看板も無い

「ここか……?」
「よく分からない模様だから恐らくそうじゃないかな?」
「まぁ一回入って見れば分かるか」

扉を開けて中に入ると一斉に視線が集まる
扉の開閉音に気づいた冒険者達の視線だ
彼らの見た目は魔術師のような格好をしている人から巨大な剣を持つ人までと幅広く恐らくパーティのメンバーと同じ席に座っている人と一人で壁に貼られた紙を見てたであろう人も居る
(うおっ……見られるなぁ)

「餓鬼か、依頼人か?」
「剣を持ってるぞなら冒険者希望かもな」
「あら可愛い子達。剣を持ってるなら戦士希望かしら?」
「ここは餓鬼の遊び場じゃねぇんだがな」
「ちょっくら脅してやるか」
「おいおい、加減はしてやれよ」
「あいつに目を付けられたかうわっかわいそ」

ガタイのいい大男が二人の前に立つ
年季の入った鎧を身に付け露出してる肌には何やら刺青が刻まれている
背中に大きな斧を背負っている
30代後半くらいの見た目をしている

「何用だ餓鬼ども」

(大きいなぁ)
二人が見上げるほどの身長差がある
一般人が見たら裸足で逃げ出すような強面の大男、それも今は二人を威嚇している
ただ二人は動じない、かつて対面したウルフナイトに比べればこの程度は二人にとって恐れるような相手では無い

「冒険者登録をと」
「はっ、お前みたいな餓鬼が冒険者? 夢を見るのも大概にしろよ」

大男が笑うと一部の冒険者除いた冒険者達が笑い始め外に聞こえるレベルの笑い声が部屋中を響く

「あ?」

カエデは言葉と周りの笑い声にイラつき睨みつける

「何だ餓鬼? 俺様とやる気か?」

(本当にこういう連中は見てて腹が立つ)
切れているカエデを見てカレンは静かに距離を取る
カレンが距離を取った事を確認してから煽りに乗り喧嘩を買う

「おう、上等だ。かかってこいやデカブツが!」
「ほう……いい度胸じゃねぇか! 叩き潰して二度と舐めた口聞けねぇようにしてやるよ」

大男は背負っていた斧を取り出して振り上げる
両手に力を込めて全力で振り下ろす

「纏」

魔力を纏い身体能力を上げて軽々と回避する
斧は木製の床を貫き破片が飛び散る

「うわっ床が……」

(これは魔力を纏ってても食らったら致命傷になりかねないな。幸い大振りだから避けれるが)
一撃は重いが隙だらけ、追撃の二撃目も余裕で回避する

「ちょこまかと逃げやがって、戦え餓鬼!」

大男は悪態をつきながら斧を振り回す
巻き込まれまいと冒険者達は皆壁沿いへ移動する
一部の魔術師が防護魔術を張る

「そんな遅い攻撃当たるわけねぇだろが!」

避けながら煽って怒らせる
怒りによってさらに行動が単調化する

「舐めやがって! 死ねぇぇぇ!!」

先ほど以上に大振りの渾身の振り下ろしを行うが隙があり過ぎて余裕で避ける
(この人何級だろ? 攻撃力に関して言えば俺よりも上だろうが攻撃が大振りで隙があって遅い)
対人戦闘と対魔物戦闘では勝手が違い戦い方が大きく異なる
大男の戦い方は魔物を一撃で葬る脳筋のようなやり方であり魔物相手なら仲間が引き付けている間に一撃打ち込めばいいが今の相手は魔物では無い
すばしっこいカエデとの戦闘は明らかに不利だが大男はその事を脳の隅にすら置いていなかった
相手は餓鬼、それなら力の限り叩き潰せばいいと考えていたからだ

「ちょこまかと!」
「遅い遅い」

焦り始める、一撃当たれば終わるのにその一撃が当たらない
相手は余裕のある様子で攻撃を避ける、その余裕ある様子が更に大男の焦りを増幅させる
冷静さはもう無いひたすらに当たるまで振るい続ける

「おい、参加しなくていいのか?」

距離を取った後ここだと危ないと壁際に避難していたカレンに冒険者の一人が話しかける

「しませんよ。カエデちゃんの邪魔はしません」
「下手したら殺されるぞ」

大男は殺す気で攻撃をしている

「あの程度の雑魚に負ける程カエデちゃんは弱くありませんよ。ところで彼は何級ですか?」
「あいつの等級は5級だが」
「あれが5級思ったより弱いですね、弱くても5級にはなれるんですね」

冒険者になるとまずは6級の下の7級と呼ばれる仮免許を得られ依頼を数回こなすと6級に上がり明確に冒険者として扱われる
6級以降は等級が上がる時にこの依頼をクリア出来たなら昇格しても良いという依頼を紹介されそれを無事クリアすれば上がれる仕組みとなっている

「は? いやいや5級はそれなりに難しいぞ? それにあいつは10年以上5級冒険者を続けてる人間だ。ただの素人に負ける訳がない」

5級と言っても大男は攻撃力に関しては4級クラスはある人物
最も攻撃が当たらなければその自慢の力も意味を成さないが

「素人? あれを見てそれを言うんですか?」

カレンは戦っているカエデを指差す
話していた冒険者は分かっていないが一部の戦士や魔術師が驚きの声を上げる
驚いたメンバーは皆カエデの纏う魔力の流れを見ていた

「あれって……何か違うのか?」
「あぁ成程な、纏ってる魔力に一切の漏れがねぇ。あのレベルの魔力操作をあの歳で出来るのかよ」
「纏う魔力は多くないけど相当の技術が必要なはず、どんな訓練を受けていたの」
「その点あいつは魔力纏えないからだいぶ不利か」
「戦士の基礎技術なのでは?」
「5級でも纏えない奴は何人もいる。4級なら全員その技術を身につけてはいるが」
「……カエデと言ったか? あの子魔力操作技術だけで言えば4級の上澄みはある。纏える魔力が少ないのが欠点だが、増えれば3級に届く」

カエデは戦いながら周りが何やらザワついている事に気づく
(なんだ?)
ちらっと見るとカレンと周りの冒険者が話していたが声は聞こえないので内容が分からない

「余所見してていいのか!?」
「あっ、やべっ」

後ろに飛び退き攻撃を回避する
(あっぶねぇ。危うく真っ二つにされるところだったわ。てかこんな暴れてるんだ誰かしら止めに来てもいいと思うんだが)
視界を動かして周りの様子を確認する
冒険者達は野次馬のように声を上げていたり動きを観察している

「やれやれやっちまえ!」
「ぶっ潰せ!!」
「嬢ちゃん頑張れー負けるなよー」
「どっちが勝つと思う」
「あの嬢ちゃんだな。動きに何処か余裕があるしまだ剣も抜いていない」
「俺は嬢ちゃんは負けると思うな。一撃当たれば終わりだろうから」
「当たればな」

ギルドの職員に関しては机の下や壁沿いに避難して身を震わせたり壊れた床を見てその場で慌てふためいている
(ダメだ役に立たねぇ。このくらいの騒ぎ今までにもあったと思うんだけどなぁ。対処法とか無いのかな)

「これ以上長引かせてもだしそろそろこっちも攻撃するか」
「防戦一方の癖に何を言ってやがる!」
「すぐ終わらねぇように配慮してやってんだよ! 能無しには分からねぇか!?」

更に煽り相手を怒らせて大振りの攻撃を避けて隙を狙う

「がら空きだ!!」

魔導具から斧を取り出して刃の無い方で勢いよくがら空きの横腹に一撃を叩き込む

「ぐふっあ……」

魔力を纏いすらしていない大男は生身で魔力の籠った一撃を直撃してしまいその体は大きく吹き飛ばされる

「やべぇ来るぞ!」

大男は幾つかの机を巻き込みながら吹き飛ばされ壁に激突したあと意識を失い気絶して動かなくなる

「あぇ?」

想像以上に吹き飛ばされた大男を見て変な声が出る
脳が状況を理解していない

「魔力を纏ってない生身の人間にフルスイングすればそりゃね」
「えっ? ……ちょっなんで魔力を纏ってすらいないんだよ!? 馬鹿なの死ぬぞ!?」

カレンの一言で状況を理解したカエデは思わず叫んでしまう
煽ったり攻撃を避けるのに夢中で一切気づいてなかったが纏えないのだから当然大男は一度も魔力を纏っていない
刃の無い方で叩いたとは言え斧は斧、その一撃はかなり重く生身で防御も無しに直撃は死にかねない
ましてやそこに魔力を込めて身体能力と斧の性能を引き上げている

「……これはご臨終かな」

カレンはそっと手を合わせる

「ちょっ……死んでないよね!? カ、カレン治癒魔術を」
「死んでるとしたら多分手遅れ」
「急いで確認しないと!」

近づき生存を確認する

「ふぅ……何とか生きてるみたいだ」

無意識の加減が大男の死ぬギリギリで踏み止めていた
加減が無ければ死んでいただろう
戦士は戦闘時魔力を纏って戦うと言うのを常識のように教えられていた為まさか相手が纏っていないとは思っていなかった
突如ギルドの扉が開け放たれる

「これは一体どういう事だ?」

扉が開いたと同時に声がして扉の方を向くとそこには筋骨隆々の男が立っていた
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