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魔術学園入学試験編

イルティリア魔術学園入学試験

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イルティリア魔術学園の場所が分からない二人は屋台に寄る

「串二本! イルティリア魔術学園って何処!? あと今何時」
「毎度! イルティリアは大通りを真っ直ぐ行った先にあるぞ、馬鹿でかい門があるからすぐ分かると思うぞ。時刻は……9時ちょい前だな。急げば間に合うはずだ」
「あざーす」

串焼きを食べながら走る
(これで遅れたとかマジでシャレにならん)

「纏」

二人は魔力を纏って身体能力を向上させて走る

「ちょいちょいカレンさんやもしかして纏の精度上がってらっしゃる?」

隣を走るカレンを見て前回見た時よりも精度が上がっている

「そりゃ訓練してるから……と言うか何そのノリ」
「気にするな……まだ溢れてるのが救いだな……」
「なんの救い?」
「プライドの」
「……? あっ大きな門」
「デカっ」

目の前に大きな門を見つける
同じ歳くらいの子供達が門を通っている
纏を解除して門の前に居る何人か居る大人の中の一人に話しかける

「すみません」
「なんだ?」

目にクマが出来ている気だるげな女性だ
気だるげにやる気が無さそうな声を出している
(選択ミスったか?)

「ここがイルティリア魔術学園であってます?」
「あぁここがイルティリア魔術学園だ。お前ら試験希望者か?」
「そうです。試験希望です」
「そうか、試験会場は決闘場だ」

女性は二人に地図を手渡す

「学内の地図だ。それを頼りに決闘場へ行け、建物の入口に受付が居る後はそいつに聞け」
「ありがとうございます!」

地図を頼りに進む、建物が多くごちゃごちゃしている

「ここはあっちか」
「凄い建物多いね。こっちかな」
「そっちか……やべぇ迷う自信しかないわ……」
「なんなら今現在迷ってる気がする」
「村よりでけぇのは想定外……」

何度か迷いかけながら決闘場に着き受付を見つける

「あそこだ!」
「あれあんまり人いないね」
「……あれ間違えた? まぁ聞けばいいか」

受付と書かれた机に座る女性の元へ向かう
ドンと後ろから蹴られる
カエデはよろめくだけだったがカレンは倒れてしまう
すぐに振り向くと少年が三人立っていた

「邪魔だ」

恐らくリーダー格の少年が言う
(身なりからして貴族か?)

「避ければいいでしょ。カレン大丈夫か」
「う、うん大丈夫」
「おい、こいつ顔に傷あるぞ。女は顔が大事なのになぁこれじゃ貰い手見つからないだろうよ」

カレンの顔の傷を見て高笑いする
取り巻きの二人も笑い始める
周囲に居た人々はこの光景を見て小声で何かを話している

「あ?」

斧を取り出そう腕輪に魔力を込めようとするがカレンに止められる
カレンの方を向くと首を横に振っている
ここで乱闘騒ぎを起こせばどうなるか分かった物ではない、ましてや相手は貴族最悪処刑も有り得る

「お前ら平民だよな? まさか村出身じゃないよな?」
「村出身だけど?」
「はははは、ここをどこか知らないのか? ここはお前らのような貧乏人の雑魚が来る場所じゃねぇんだよ!」
「……カエデちゃん行こう」
「……あぁ」
「逃げるのか? 村出身の人間が合格できるほどこの世は甘くねぇんだよ。早く消えろ」
「優秀な人間は王都に集まる。村出身の奴は王都を追われた雑魚ばかり、実力主義のこの学園には合わねぇんだよ? 勝ち目なんてねぇ無様を晒すくらいしか出来ねぇ」
「とっとと村に帰りな恥を晒したくなかったらな」

カレンに言われ怒りを抑えて受付に向かう
後ろから罵声を浴びせられるが無視をする

「すみません助けられず、入学試験の場合乱闘騒ぎでも無ければ無視しろと言われていて」

女性は一部始終を見てたようで頭を下げる

「いえ、気にしないでください。そんな事より受付はここで合ってますよね?」
「はい、ここに名前を書いてください。対戦相手はランダムとなります」
「私達が当たることもあるんですか?」
「いえ、知人同士だと本来の実力が測れない可能性があるので省かれます」
「それは良かった」

(ガチでやり合うなら多分勝率めっちゃ低いからなぁ)
カレンは魔術は勿論魔術師の苦手とする近接戦もそれなりに戦える
使い慣れていない武器で戦うには余りにも厳し過ぎる相手
女性から説明を受けて席自由の観戦席で待つ
(これコロシアムって奴に似てるなぁ)
暫く座っているとアナウンスが流れる

『時間になりましたので入学試験を開始します。名前を呼ばれたらすぐに待機室に待機を、前の対戦が終わり準備が終わり次第次の対戦を行います』
「いつ呼ばれるかなぁ」
「緊張する……」
「緊張するねぇ……こればかりは慣れん……」

次々と希望者が呼ばれ対戦を始める
開始の合図を審判が言うと同時に詠唱を始め魔術をぶつけ合う
(炎綺麗だなぁ)
二人の座る席は遠く声が聞こえないためボーと魔術で発生する炎や風などを見る

「流石最難関魔術学園、レベルが高い」
「魔術に関してはもう殆ど分からないな……そんな強いん?」
「この歳にしてはだけどね」
「勝てる?」
「このレベルなら余裕」
「まじかァ……まぁ俺もまぁ接近出来れば……」
「ほう、凄い自信だな」
「うおっ!?」

先程門で話しかけた女性が隣に座っていた

「いつの間に」
「何ついさっきだ。そう言えばお前らの名前はなんだ? 私はルース・ボーモットだ。ここの教師をしている」
「カレンです。こっちがカエデちゃんです」
「カエデです、二人とも名字は無いです」
「そうか、カレンお前はこのレベルを余裕と言うか」
「はい」
「良い自信だなぁ。カエデお前は?」
「……まぁ何とか接近すれば勝てるかなと思うくらいですね。まぁ魔術には少し疎くて」
「お前は戦士か」

ルースは腰に付いてる剣を見る

「はい」
「そうか、戦士は少ないから希望者は有難いな。まぁ合格出来ればだが」
「……ガンバリマス」

(なんかみんなプレッシャーかけてくるよなぁ)
緊張で胃がキリキリとし始める
(胃薬を所望する……)

「特別にお前達の対戦相手を教えよう」

ルースはタブレットを起動し弄る
(おっ、タブレット! この世界にもあるんだ。魔力で動かしてるのかな)
転生して初めて見る精密機器を見て感動する
かつては身近にあった物

「対戦相手の情報? 良いんです?」
「良くは無いが差程気にしなくていい。それで対戦相手だがカレンの相手はウェイン・ロードリス、カエデの相手はオルガ・リートン」
「貴族ですか」

名字があるのは基本階級を持つ貴族に多い
リートン家は貴族の中でも位が高い、目をつけられた時点で基本は無事では済まない

「あぁそうだそしてお前たちに突っかかった人間だ」
「ほほう……私の相手はあの三人のどれです?」
「お前の方はリーダー格の奴だな。リートン家、貴族の中でも位の高い貴族だ。カレンの方は取り巻きの一人だがこっちもリートン家よりは低いがそれでも高い影響力のある貴族だ」
「そうですか」
「全力で殺るぞー」
「突然元気になったな」
「殺しは禁止だと思うからね?」
「いや、そうでも無いぞ。事故防止用の障壁はあるが何年かに一度は死者が出てるし重傷者は毎年何人も出てる」
「出てるんだ……」
「出てるのかよ怖いなこの学園」
「少なくともこの場で殺意剥き出しにした奴には言われたくないと思うがな」
「ナンノコトカワカラナイ」

三人で話していると名前を呼ばれる

『次カエデさんとオルガ・リートンさん、待機室へ』
「おっ出番が来たか。よっしゃやるぞ」
「頑張ってねカエデちゃん」
「健闘を祈る」
「絶対勝つ」

観戦席を下りると教師が立っていた

「カエデさんですね。待機室はそちらです」
「ありがとうございます」
「……戦闘は降参すればその場で戦闘は強制終了となりますので無理はならさず」
「私は大丈夫ですよ」

笑顔でそう言って待機室の中に入る
モニターがありそこには現在戦っている者が写っている

「おっ、モニターで見れるのか。こっちの方が見やすくて良いな。座ってる席中央から遠いから凄い見づらいんだよ」

置いてある椅子に座りモニターをボーと眺める
魔術師同士の戦い、同じ魔術がぶつかり合う
魔術師の戦闘は扱う魔術の差、技術の差、魔力の差で決まるがこの入学試験では殆ど魔力の差で決まる
技術もほぼ同格、飛び抜けて優秀な人間は早々居ない
才能があったとしてもこの時期に中級魔術を扱える者は極わずか基本は下級魔術の撃ち合い
同時発動も年に一、二人居るかどうか、同時発動が出来ればほぼ勝ち確定
(ルース先生の言う通り戦士が少ないな。今まで見た戦士はもれなく魔術師に負けてるし魔術を躱して懐に入れば勝てるが……そこまでがきつい)
試験開始時は相手との距離がある、真正面最短でも下級魔術なら詠唱出来る距離
今までの戦士は魔術を捌けずに敗北している
(俺の相手はほぼ魔術師と見て良いだろう。さてどうやって接近するか)

『待機室に居る二人は移動を開始してください』
「出番だ……奴はどの程度強いのだろうな。楽しみだな」

待機室を出る
そのまま廊下を通り決闘場の中央にある円形のエリアに立つ
反対側には奴が立っている
エリアの中心に二人とも向かい目の前で止まる
審判が居て二人に話しかける

「もう一度ルールの説明をします。使える魔術はなんでも使用可能、魔導具も使用可能、障壁が破壊されたら敗北、降参と言えば障壁破壊前でも敗北として強制終了となります。魔力切れの場合も同様となります」
「ルールの追加お願い出来ませんか~?」
「ルールの追加?」
「この戦闘でこいつが負けたら隷属の契約を交わすというルールです……お前見た目はいいからなボコした後可愛がってやる」
「別に構わない」
『両者が許可しているのなら良いですよ。異例ですが特別に認めましょう。カエデさん貴方は何かルールの追加はありますか?』

アナウンスから少女の声が聞こえる
一時的に魔術により声が拡散し観戦席にも聞こえるようになる
カエデが負けたら隷属というルールが追加された事が全員に聞こえる

「隷属は一生だ。負けたら人生が終わる様なものだ」

観戦席で話していた女性がそう呟く

「大丈夫です。カエデちゃんはちゃんと強いですから」
「それは見ものだな」

「ルールの追加は無いけど一部変更を……降参と魔力切れの場合は敗北にならないにしてください」
「良いのかぁ? それはお前が不利になるぞ」
『オルガさんは許可します?』
「許可しまーす。地べた這いつくばらせてやる」
「」
『それでは審判は開始の合図を出してください』
「そ、それではバトル……開始!」

試験が開始される
審判はエリアの外に出る
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