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魔術学園入学試験編

魔導具

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朝早く目が覚める
朝起きてから行っているルーティンをこなす
終わり頃にカレンが起き始める

「おはよう」
「おはよう……今何時?」
「今は7時、確か入学試験は受付9時半までだからまだ時間ある」

部屋を出て1階に降りる

「おはようございまーす朝食取ります?」

宿の従業員が二人が降りてきたことに気付き声をかける

「はい、お願いします」
「はーい、そちらの席でお待ちを~」

言われた席に座り待機する

「この後斧取りに行くの?」
「その予定、初戦闘が入学試験になるけど……」
「それで負けないでよね?」
「扱い切れなかったら拳でやるから大丈夫」
「大丈夫ではないと思うんだけどそれ」
「朝食でーす」

従業員が二人分の朝食を机に置く
腹が減っていた二人はすぐに会話をやめて食いつく

「美味しい!」
「だねぇ」

すぐに完食して部屋に戻り支度をして宿を後にする

「鍛冶屋行くかぁ」
「魔導具売ってる所寄りたい」
「魔導具か、少し寄りながら鍛冶屋向かって学園向かうかぁ」

魔導具が売ってる店がチラホラある
近くにある店に近づき並べられた商品を見る

「…………」
「うむ……見ても分からん」

(宿る魔力量はそんな多くない……どんな効果か分からないが使えても1、2回程度、魔導具の相場は分からないがこの値段だと割に合わない気がするなぁ)
カレンは何も買わずに店を離れる

「いいのは無かったのか?」
「スーザンさんから魔導具について教えて貰ってたから分かるけどあれは粗悪品」
「ほへぇ、宿る魔力量は少なく感じたけど粗悪品なのか」
「宿る魔力量もだけど魔導具と粗悪品の違いは魔力との親和性なんだよね。やっぱちゃんとした店かなぁ。凄い高いらしいけど」

カレンはため息をつく
魔導具は魔法陣や魔術式が道具その物に刻まれている物を指す
物によって効果が変わるが魔力を予め込めておいて発動の条件を満たせば起動出来る優れ物

「魔導具って使い捨てが多いんだっけ? それに高額使うのはきちぃ」
「保険として使える魔導具は使い捨てでもよく重宝されるけどね」

魔導具は半永久的に使える物と一度限りや数回使ったら壊れる物がある
魔導具自体市場に流れる量は少なく高額で取引されている
その為買えない一般の冒険者や魔術師、騎士をカモにする為に粗悪品を流す者がいる

「他にも何件かあるしそっち見て無かったら諦めよう」
「そうだね」

二件程見るが粗悪品しか売っていない

「また外れ」
「ありゃ、まぁそう簡単には掘り出し物は見つからんか。……おっ、鍛冶屋だ」
「気づかないうちにここまで来てたんだね」
「出来てるかなぁ」

鍛冶屋の扉を開けて中に入る

「失礼しまーす」
「失礼します」
「おっ、お客さんか武器買いに来たのかい?」

若い男性が受付にある椅子に座っていた

「買いに来たんじゃなくて昨日武器の制作を頼んだ者ですが」
「あぁ、君が例の! 斧は出来てるよ。ちょっと待ってな」

ドタバタと奥の部屋に入っていく
すぐに昨日話した老人と男性が戻ってくる
老人の手には斧がある、ちょうどカエデの身丈程の大きさの黒い斧だ
(あれ思った以上にでかいぞ?)

「ほれ、これがホーンディアの斧じゃ」
「ありがとうございます! って重っ!?」

重すぎて渡された斧を落としてしまう

「そりゃあな、特別に予定より重くしておいたぞ」
「なんでぇ!?」

(嫌がらせか! 嫌がらせなのか!? 無理言ってたからか!? 言ったの俺じゃないけどね!)
かなり重く昨日持った斧の比ではない
魔力を纏えば持ち上げられるだろうが戦うには余りにも重すぎる
(果たしてこれは振り回せるのか……)

「重い代わりに耐久性に優れてる素材を使ったからな。重さを利用した一撃なら並の武器や防具程度なら真っ二つに叩き斬る事が出来る筈じゃ」
「強いけど当てれるかなぁ」
「魔物を素材とした武器は魔力の親和性が高いから魔力を纏えば普通の武器よりは扱いやすいはずだよ」
「成程、試すか」

魔力を纏い持ち上げると先程感じた重さよりかなり軽く感じる
(おぉこれなら振り回せる)

「魔力の維持さえ出来れば何とかなるぞ」
「なら持ち運びきついくらいか……」
「それなら良い物があるぞ」
「良い物?」

二人に腕輪を渡される
見た目は黒一色の形もシンプルな腕輪

「腕輪?」
「魔導具!」

カレンが飛び付く
今までに見た事ないレベルで目を輝かせている

「そうじゃ、昨日一緒に居たあのおん……男からのプレゼントだ」
「あの人から? 凄い親切にしてくれるなぁ」
「あったらお礼しないとだね」
「だな。ところでこれはどんな魔導具で?」
「これは武器や物を仕舞える魔道具のはず、半永久的に使える物なんだけど条件が物によって違うらしいんだよね」
「そいつの条件は仕舞える物は所有者の武器それも1つ、代わりに瞬時に取り出す事が出来て尚且つ仕舞う時、入れる時に生じる魔力の消費がかなり少ない」

(正しく今必要な魔導具……武器を仕舞えるって便利だなぁ。他のだと色々な物を仕舞えたりするのかな)
腕輪を身に付ける、所有者の腕に合うサイズになる

「腕輪に魔力を込めれば仕舞える筈じゃ」

二人は腕輪に魔力を込めるとそれぞれ斧と杖が消える

「消えた!」
「もう一度魔力を込めれば取り出せる」

魔力を込めると手元に斧が戻ってくる

「おぉすげぇ!」

もう一度魔力を込めて仕舞う

「そう言えば斧の値段は幾らですか?」
「あっそうじゃん」

(結構高そうだなぁ……やべっ金足りるかな)
昨日屋台で食べ物を食べ過ぎてだいぶ金を使っている

「必要ない。それもあの男が肩代わりしてる」
「……もう親切すぎて怖いわ」
「ここまで来るとね」
「彼奴の癖じゃそこまで気にする事でも無い、ただまぁ彼奴の期待には答えてやれ」
「期待?」
「試験で力を示せってことだ。そろそろ行かないと遅刻するぞ」
「やべっ……ありがとうございました!」

二人は頭を下げて鍛冶屋を出る

「急げ~」
「魔術学園までって遠いかな」
「……そういや場所知らなくね?」
「…………」
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