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魔術学園入学試験編

道中

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馬車に揺られながら景色を見る
(そういや転生してから一度もあの村出たことないな……王都ってどんな場所だろ。あれかな良くある小説世界みたいな感じかそれともめっちゃ文明発達した科学都市みたいな見た目……いやそれは無いな)
魔力がありその魔力を使う魔術が発達しているこの世界では科学と呼ばれる物は無い
(この世界にはそもそも科学という発想自体無いかもな)
あちらの世界で科学で補っていた部分の一部は魔術で解決してしまう
生活魔術と呼ばれる魔術もありそれに関しては村人の大半が使えるレベルの物

「何考えてるの?」
「ん? あぁ、そういや初めて村を出たなって思ってな。別段気にしてもなかったがふと思ってな」
「あぁ確かに、まぁずっと訓練漬けだったからね。それに村人の中には村の外に出たことない人も居るしそんなものなんだと思うよ」
「カレンの両親はまさにそのパターンか」

カレンの両親は二人とも村で生まれ育っていて村の中で生活をしている
生まれ育った村から出ないで生活する人が多い
(外が気になったりはしないのかな。まぁかく言う俺も昔は出身県から出てなかったが……)

「そう言えばお二人はなぜ王都に? 勝つとか言っていたから入学試験かい?」

御者に話しかけられる

「はい、魔術学園の入学試験です」
「どこの魔術学園だい?」
「何処の?」
「知らないのかい? 魔術学園と言っても幾つもあるんだよ。最難関と呼ばれるイルティリア魔術学園、魔術師のみのアルフェール魔術学園、魔術師よりも戦士が多いリスリィ魔術学園、入学試験の難易度が低く一番生徒数が多いオーレム魔術学園」
「4つもあるんですね」

この国の王都は広く合計4つの魔術学園がある
他の国にも魔術学園はあるがこの国が一番魔術学園が多く規模もデカい
かつて魔術の王と呼ばれた魔王もこの国出身の人間

「君たちみたいな村出身の子はオーレムが多いかな。リスリィとアルフェールはイルティリア程じゃないけど厳しいし貴族や王都住みの人が多いから余りオススメは出来ないかな」
「それはなぜ?」
「あぁ……平民嫌いの貴族とか居るから結構差別行為が横行してるんだよね」

貴族の中には平民を嫌う者や差別する者が多く居る
(差別……あぁ学内で虐めがあるって事かどの世界でもあるんだなそう言うの)
貴族だけでなく平民の中でも虐めがありカエデやカレンのような遠い村出身の子は標的にされやすい

「イルティリアは?」
「貴族も平民も関係なく受け入れるが弱者に慈悲はない。そうだね、勝ち抜く自信があって強くなりたいならオススメだよ。まぁ実力が伴わなければ入る事すら叶わないしすぐに退学になる」
「はっ、上等じゃねぇか」

カエデは笑みを浮かべる
(妙に自信ありげ)

「私達はイルティリア魔術学園の試験を受けるつもりです」
「おや、それはそれは……そう言えばこの道は魔物が出るんだよね、もし魔物が出たら倒してもらう事は出来るかい?」

御者が二人を見る、先程までとは雰囲気が違う
見た目は30代くらいの普通の男性だが普通の御者では無いとカエデは思う
(この人只者じゃないな……雰囲気がガラッと変わったこれは戦う人の感じ、なんか分かんないけど試されてるし護衛は受けるか)

「魔物出るんですか?」
「6級や5級の魔物が何体か。一応僕は5級の魔物であれば倒せるから」
「まさかの武闘派御者」
「こう見えても元冒険者でね。まぁ魔術師だけどね」
「おぉ元冒険者」
「護衛やります。こう見えても村で魔物は何体も倒してきたので」
「それは頼もしい」

暫く馬車に揺られているとサーチを使っていたカレンが魔物の接近に気付く
(左から四体……馬車に急接近してる!)

「左側から魔物四体! 私が三体やるからカエデちゃん一体お願い!」
「了解!」

木々の間から魔物が飛び出してくる
狙いは馬車のようで速度そのままで突っ込んでくる

「「炎よ敵を焼き打てファイア」」

4個の魔法陣が現れて炎が次々と魔物を焼き仕留める
(3つ同時発動……未来有望そうな子ですね。カエデって子はまぁ普通ですね。剣を持ってますが魔術を使った所を見るに魔術師、念の為の護身用ですかね)

「よし命中! ちょっと遠かったから外すかと思ったぜ……」
「このくらい当てれないと」
「ねぇ知ってる? 動いてる敵に当てるのって難しいんだよ……?」
「あの魔物は遅いから楽じゃない?」
「ま、まぁ確かに当てやすい部類ではあるけども」
「6級とは言え一撃とは凄いね。それに君は3つ同時発動出来るとはそれだけでもイルティリアでも通じると思う。魔術師でも同時発動出来ない人は居るから」
「3つってやっぱ魔術師でも凄いんです?」
「そうだね、出来ても2つって人は多いよ。同時発動は魔術を連続で発動させるのと違って一度にかかる脳の負荷が大きい。3つクラスは本当に一握り、4つ以上に関しては世界に数人居るかどうかクラスだと思う」

カレンは現在4つの魔術を同時に発動出来る

「ほへぇ」
「かつて居た魔術の王は10個の魔術を同時並行発動出来たとか」
「それはもう人間では無いだろ……並行2つと同時発動3つだとどちらの方が難しいんです?」
「その2つなら同時発動かなぁ。並行に関しては同時発動2つ出来る人が訓練すれば行けると言われてるけど同時発動は生まれ持った才能と言われてるから」
「才能かぁ」
「今は出来なくても訓練していくうちに出来るようになるってケースがあるよ、土台を得てから使える才能もあるからまだ諦めるには早いよ」
「頑張りまーす」

そのまま時間が経ち夕方になる
辺りが暗くなっていく
(ライト使うか? いや下手に光付けたら魔物に狙われやすくなるか。指示待つか)
生活魔術のライト、小さな光を周囲を漂わせる魔術

「野宿するかそのまま進むかどうするかい?」
「進むってそろそろ暗くなって辺りが見えなくなりますよ? ライトでも使いますか?」
「徹夜は身体に響きますよ」
「一日程度の徹夜なら問題ないよ、それに僕は夜目が効くからライトも要らない」

カレンは御者から微力な魔力の流れを感じる
魔術を使う時の魔力の流れだと理解する

「魔術ですね?」
「おぉ、鋭い。支援系魔術ライトアイ、使用者の目に作用する魔術で昼間のようにとまでは行かないけどだいぶ見える」
「何それ便利!」
「そんな魔術もあるんですね」
「実はこの魔術ここ最近作られた物でまだ一般に広がってないんだよね。まだ知ってるのは一部の商人とか魔術師くらいかな?」

(一般に広がっていない魔術を使ってる元冒険者、もしかしてこの人……貴族御用達の凄腕の商人だったり?)
ハッとしたような顔をするカエデを見て
(また的外れな推理でもしてるのかな)
と心の中で思うカレンであった

「それならお願いします」
「何かあったら起こしてくださいな」

二人は揺れる馬車で横になり眠ろうとする
(車の中で爆睡してたこの俺にとってはこの程度温いぜ)
カエデはかつての経験もありすぐに眠りにつく、カレンは寝づらさを少し感じながらも目を閉じてやがて眠りにつく

「……寝ていてもサーチを使ってますか。あの村にはスーザン居ますし彼女に教わったのでしょうか素晴らしい、中級魔術さえ覚えていれば即戦力になりうる逸材です」

本来の口調に戻して独り言を言う

「思わずタメ口を使いましたが慣れませんね。今から戻したら違和感ありますしこの役は王都に着いたら終わりですからあと少しの辛抱」

御者はため息を付く
魔物も出ておらず夜道を順調に進んでいる

「……はぁ、君はお呼びじゃない」

御者の男性はサーチに引っかからない程高速で魔術を展開し詠唱無しで魔力で生成された雷を放つ
カレンのサーチの範囲外に居た魔物を静かに仕留める

「実力を測るに手頃な魔物が出てくれればと思いましたがそう簡単には行きませんね」
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