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幼少編

戦士

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ウルフナイトと呼ばれた魔物はライアンを見ると飛び退き武器を構える
武器は大きな斧
掴んでいたカレンを投げ捨てる

「我が同胞に盾の祝福を」

地面に叩きつけられたカレンは魔術のお陰でダメージは無かった
ライアンだけでなくスーザンも居た
二人の後ろから複数人の声がする恐らく自衛団だろう

「ラリーとカレンの二人を回収しろ。カエデはスーザンに任せていいか」
「えぇ任せて……癒しの女神よ、我が声を聞いて欲しい、傷付きし我が同胞を癒したまえ」

スーザンは治癒魔術を倒れている三人に使用する
三人の傷が段々と塞がっていく

「流石3級冒険者、高度の治癒魔術だ。だがひでぇ傷だ治るのかこれ」
「感心してる場合じゃねぇ早く離脱すんぞ。ここに居たら巻き込まれる」
「あぁ、あの魔物の攻撃か」
「ちげぇよ、ライアンさんの攻撃だ」

自衛団員が二人を回収してすぐにその場を離れる

「森の中に入ったことを叱りたいが……入口付近に出てきたなら正直変わらんか」
「ウルフナイトなんて一体どこに潜んでいたのかしらね」
「俺たちの見回りの時には居なかったと思うが……それよりカエデ達はどうだった?」
「三人とも生きてるわ。ただ治癒に結構時間かかりそう。カエデちゃんとラリー君の傷は治り切るけどカレンちゃんに関しては分からないわ」
「そうか、分かった」

一度ライアンは深呼吸をする

「全力で殺る。カエデを保護したら避難してくれ。巻き込まない自信はない」

怒気を含んだ声
スーザンはライアンが切れている事を理解して距離を取りながらカエデに近づく

「森消し飛ばさないでね?」
「善処する」

ライアンは剣を抜く
冒険者時代から使っているダンジョンから見つけた剣

「さて、覚悟しろよ犬っころ。魔導武装」

魔力を全身に纏う、高密度の魔力は鎧のようにライアンの体を覆う
剣も青白い高密度の魔力に覆われている

「ガルルルル~!」

両者は睨み合う
ウルフナイトはライアンの強さを本能的に理解しており攻め込まない守りの構えを取る

「あれは……」

カエデの傷が癒えて意識が少し回復する
痛みはもはや麻痺している為感じない

「魔力を纏う戦士の技術の極地」

スーザンが近くに来てカエデを木に寄りかからせる

「極地……」
「人によってその形は変わる。ライアンの魔導武装は攻防一体、高密度の魔力によって鉄壁とも言われる魔力の鎧にただ敵を斬る事に特化した剣の強化」

カエデが見て理解出来るほど高密度の魔力を纏っている
無駄な魔力が溢れていない、ほぼ完璧な魔力操作が出来無ければ使えない技術、極地と言われて納得出来る代物だった
身体を動かそうとするが動かない

「まだ動いちゃダメ、傷が癒えてない」
「……二人は?」
「大丈夫、二人も生きてる」
「よかった」

生きていると言われ胸を撫で下ろす
(良かった)

「そろそろ始まるわよ。戦士の戦いが」
「戦士……」
「そう、戦士……流石に頂点では無いけど強くなるならライアンは目標に丁度いいわよ」

ウルフナイトとライアンの周囲は静寂に包まれていたがライアンがその静寂を破る

「来ないのならこちらから行くぞ」

そう言うとウルフナイトとの距離を一瞬で詰める
ウルフナイトは反応が遅れるがすぐに斧を構えて切りかかる
斧を手で受け止める

「温いな……この程度か?」

手に力を入れて斧を砕く
斧を捨てて飛び退くがその行動は読まれていた
すぐにまた距離を詰められる

「終わりだ」

魔力で強化した剣がカエデが傷1つ付けられなかった鎧を真っ二つにする
ほんの数秒の戦闘、それだけで周りは格の違いを思い知らされる
ウルフナイトが消滅し魔石が落ちる
斧の一部が消滅せずに残る

「凄い」
「カエデ!」

ライアンは大声を出す、怒りの交じった声だ
カエデは恐怖で身を震わせる

「森は危険だと言ったはずだ! お前はまだ弱い危険を犯せるほどの力は無い!」

(全くその通りだ)
森の中は危険だと知りながら入りウルフナイトと遭遇して死にかけている
すぐにライアンとスーザンが来なければ確実に死んでいた
ライアンはカエデの前に立つ

「まだ子供のお前に訓練は早かったか」
「…………」
「……選択しろ、過ちを悔いて二度と剣を握らないかそれとも誰にも負けない程に強くなるかを今ここで選べ」

この世界は争いに満ちている
魔物との戦い人との戦い、小さくて長閑なこの村でも魔物の脅威は存在する
二度と剣を握らない選択はアリだ、そうすれば戦場に身を置く事はなく今回のような危険に晒される事は少なくなる
だが23年後、魔王が復活して必ず平和は崩れ去る
それまでの長くも短い人生を謳歌する事だって選べる
戦いを選べば辛く苦しい人生になる、魔王を倒せるかも分からないその前に今回のような事があって死ぬかもしれない
それでも……

「強くなりたい!」

カエデは叫ぶ
後悔は自分が弱かったから生じた物、剣を握らなければ弱くていい……それはこの世も自分自身も許さない
誰かを守る為の力を
先程父親が見せた圧倒的な力を

「強くなりたい! 誰よりも魔王にも勝てるくらい強くなりたい」
「よし! 次から森の中は危険だから良いと言うまで行くなよ」
「……分かった」
「なら良し、それじゃ帰るぞ」

スーザンに抱えられて移動をする
カエデは安堵や疲れなどの理由から眠りにつく
ラリーとカレンはそれぞれ自衛団員が抱えて治癒魔術が使える者が一生懸命に治療している

「ライアン先程の魔物はなんだ?」

自衛団のリーダーであるラリーの父親がライアンに話を聞く
自衛団にとっても初めて見る魔物

「ウルフナイト、3級冒険者と同等とされる3級魔物だ」
「3級……そんな化け物が村の近くに? 何が起きてる」
「さぁな、正確な事は分からんがダンジョンが出現したかもな」
「ダンジョン!?」

ダンジョン、唐突に出現する様々な形をした迷宮、そこは魔物の住処であり奥にはダンジョンの守護者たるそのダンジョン内にて最強の魔物が居る
攻略されていないダンジョンは稀に魔物が溢れ出すことがある

「ウルフナイトが雑魚で出現するクラスのダンジョンなんて2級相当じゃない?」
「あぁダンジョンなら2級以上と考えるのが妥当だろう。まだダンジョンとは限らんまずはダンジョンの確認をする」
「あのレベルの魔物には勝てないから俺たちは村の周囲の柵を強化して見回るペースを上げる」
「そうだな……自衛団全員を駆り出せ」
「今日は徹夜だな……残ってるメンバーの半分は見回りしろ! 魔物を見つけたら即報告だ。他のメンバーは柵の強化に使える道具を掻き集めろ! 非番も駆り出せ」
「「はい!」」

自衛団員が慌しく移動を始める
ライアンとスーザンは家に戻りカエデをベットに寝かせる

「スーザンはそのままカエデの治療を頼む。治療が終わって余裕があったら二人の治療も」
「はーい、それじゃ行ってらっしゃーい」
「あぁ行ってくる」

ライアンは再び森へ向かう
(ダンジョンだったら急がないとな、村が滅ぶ前に)
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