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第22挑☆酸の泉で再会! 藤花の涙 前
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俺の名前は大一文字挑。大統領の屋敷で、大統領の護衛・羅忌と絶賛戦闘中だ。羅忌の従者の2人は俺と関根で倒した。残るは羅忌1人。
「3人で束になっても関係ありませんね」
羅忌は、すっかりなくなってしまった天井から夜空へと舞い上がり、扇面から降りて扇子の要を持った。
「死になさい」
羅忌が扇子を仰ぐと同時、酸の雨が俺たちに向かってきた! 屋根の影に隠れたくても、屋根がねえ!
俺は毒液で、関根は蹴りの風圧で、赤鬼は炎の玉でそれぞれ酸の雨を弾く。自分の身を守るので精いっぱいだ。カイソンは藤花とモコ、ポワロンといっしょに廊下まで下がっている。
酸の雨は降り続き、先程扇子で作られた巨大な穴に溜まった。酸の泉の出来上がりだ。ここには絶対に落ちれねえ。
羅忌は再び扇面の上に乗り、俺たちを見下ろしている。
「ちんたらやっててても仕方ねえ、いっきに決めるしかねえな」
俺が言うと、関根はバタフライポーションをズボンのポケットから取り出して飲んだ。赤鬼の野太刀が力強く赤く輝く。
そのとき、何かが俺の背中を叩いた。
なんだ⁉
振り向くと、モコの触手。触手の先には、蕾がモコに作ってあげた花冠がある。
「これを使えってのか?」
廊下に控えているモコを見た。目がない。何を訴えているのかよくわからん。だが、花冠を渡してきたってことは、使えるってことだよな?
花冠の耐久力はほぼないに等しい。使うなら、チャンスは1回だけだ。
「私が羅忌の動きを封じる。仕損じるなよ」
赤鬼が言うと、俺と関根はうなずいた。
刹那、赤鬼の野太刀が火を噴く。羅忌めがけて炎が突進していく。
「無駄です」
羅忌はひらひらと舞いながら、扇面に乗ったまま炎をかわしていく。だが、炎の追撃は止まらない。
炎に追われて羅忌が広間の壁に近づいていく。同時に、赤鬼は炎を操りながら、地面を蹴り、壁を蹴って空中に飛んだ!
「ふうん!」
赤鬼の野太刀が羅忌の脳天めがけて振り下ろされる! だが、羅忌はそれをかわす。そのかわした先を読んで、関根が風刃切りを放っていた!
「なっ」
羅忌はたまらずしゃがみこむ。黒髪の端が切れる。その低い位置に来た顔面に向かって、俺は毒液を絡めた花冠をブーメランのようにして投げた!
体勢を崩した羅忌は、花冠をよけきれない! 羅忌は無理やり扇で花冠をガードした。
そのガードごと、赤鬼が野太刀で断ち切る!
扇が真っ二つに切れた。その向こう側にいた羅忌の身体も縦に切られた。羅忌は血を吹きながら、自らが作った酸の泉に落ちていく。
……かと思ったが、羅忌が酸の泉に着く前に、オオムラサキが羅忌と泉の間に滑り込み、羅忌の身体を乗せて空中に戻った。
「くっ……下民の分際でこの私に深手を負わすなど」
羅忌は、オオムラサキの上で片膝を立てている。傷は相当深そうだ。武器の扇子も失ったし、もう戦えそうにねえ。
「もう、邪魔できねえだろ」
俺たちは大統領のいる執務室に向かうべく、広間ではなく別のルートに向かおうとした。
そのとき、廊下の奥から足音が聞こえて来た。1人や2人じゃねえ。
「なんだなんだ?」
相当多い、この足音! まだそんなに敵がいるのかよ⁉
俺たちはこちらに向かってくる足音の正体を確かめようと、廊下の奥のドアが開くのを待った。
バンッと勢いよくドアが開く。そこから飛び出してきたのは。
「藤花!」
「蕾ちゃん⁉」
「蕾!」
額から汗を流しながら、蕾が走って来た。蕾の親父や、農家の人たちも。
「蕾ちゃん……皆さん、どうして」
驚いている藤花を、蕾は抱きしめた。
「藤花! 藤花……無事でよかった」
藤花はおそるおそる、でもしっかりと蕾を抱きしめ返した。
「蕾ちゃん……ごめんね」
蕾は藤花の腰に腕を回したまま、藤花の顔を見つめた。
「どうして藤花が謝るの?」
「だって、私……。私は、本当に世間知らずで、何にもわかってなくて。蕾ちゃんの力になりたいのに、なれなくて。1人で何にもできなくて、こんなにたくさんの人に迷惑かけて」
蕾は首を横に振った。
「何言ってるの。みんな、藤花を心配して来ただけだよ。みんな、藤花が大好きなんだよ」
「……蕾ちゃん」
「私も……。藤花、ごめんね。藤花がモデルになるって言ったとき、私、自分1人じゃ何にもできないくせに。人の夢を奪うな! って、言った。……すごく、ひどいことを言ったと思ってる」
「……それは、本当のことだよ」
「ううん。私、藤花に嫉妬して、ひどいこと言ったの。最低だった。ずっと、あのときの自分が大嫌いで。藤花を遠ざける自分がすごく嫌で。なにもかも嫌いになって。ずっと、つらかった。藤花を傷つけて、本当にごめんなさい」
蕾は藤花をまっすぐに見つめて謝った。藤花から涙がこぼれた。藤花は流れ落ちる涙をぬぐいながら、蕾に言った。
「蕾ちゃん……私、まだ、蕾ちゃんと友達でいられる? また、いっしょに、いられるかな」
蕾も目の端に涙を浮かべながら笑った。
「当たり前じゃん! 私たち、ずっと友達だよ」
藤花はもう一度蕾を抱きしめた。肩を震わせながら泣いている。
ずっと、こうやって、会いたかったんだな。
「よかったね」
2人の様子を見ながら、カイソンがつぶやいた。
「ああ」
俺もうなずいた。
そんななか、蕾の親父が俺たちに声をかけてきた。
「で、結局誘拐犯はこちらの方々で?」
蕾の親父は赤鬼と関根を見ている。
「あ、いや……これは、なんつったらいいのかな」
俺は後ろ頭を掻いた。
そのときだった。
「愚民どもが、全員不法侵入ですよ」
空から低い声がした。羅忌だ。いつのまにかオオムラサキの上で立ち上がっている。
次の瞬間、羅忌の頬が大きく膨らんだ!
あれはまさか、黒袴が使っていた酸の水鉄砲か⁉
「3人で束になっても関係ありませんね」
羅忌は、すっかりなくなってしまった天井から夜空へと舞い上がり、扇面から降りて扇子の要を持った。
「死になさい」
羅忌が扇子を仰ぐと同時、酸の雨が俺たちに向かってきた! 屋根の影に隠れたくても、屋根がねえ!
俺は毒液で、関根は蹴りの風圧で、赤鬼は炎の玉でそれぞれ酸の雨を弾く。自分の身を守るので精いっぱいだ。カイソンは藤花とモコ、ポワロンといっしょに廊下まで下がっている。
酸の雨は降り続き、先程扇子で作られた巨大な穴に溜まった。酸の泉の出来上がりだ。ここには絶対に落ちれねえ。
羅忌は再び扇面の上に乗り、俺たちを見下ろしている。
「ちんたらやっててても仕方ねえ、いっきに決めるしかねえな」
俺が言うと、関根はバタフライポーションをズボンのポケットから取り出して飲んだ。赤鬼の野太刀が力強く赤く輝く。
そのとき、何かが俺の背中を叩いた。
なんだ⁉
振り向くと、モコの触手。触手の先には、蕾がモコに作ってあげた花冠がある。
「これを使えってのか?」
廊下に控えているモコを見た。目がない。何を訴えているのかよくわからん。だが、花冠を渡してきたってことは、使えるってことだよな?
花冠の耐久力はほぼないに等しい。使うなら、チャンスは1回だけだ。
「私が羅忌の動きを封じる。仕損じるなよ」
赤鬼が言うと、俺と関根はうなずいた。
刹那、赤鬼の野太刀が火を噴く。羅忌めがけて炎が突進していく。
「無駄です」
羅忌はひらひらと舞いながら、扇面に乗ったまま炎をかわしていく。だが、炎の追撃は止まらない。
炎に追われて羅忌が広間の壁に近づいていく。同時に、赤鬼は炎を操りながら、地面を蹴り、壁を蹴って空中に飛んだ!
「ふうん!」
赤鬼の野太刀が羅忌の脳天めがけて振り下ろされる! だが、羅忌はそれをかわす。そのかわした先を読んで、関根が風刃切りを放っていた!
「なっ」
羅忌はたまらずしゃがみこむ。黒髪の端が切れる。その低い位置に来た顔面に向かって、俺は毒液を絡めた花冠をブーメランのようにして投げた!
体勢を崩した羅忌は、花冠をよけきれない! 羅忌は無理やり扇で花冠をガードした。
そのガードごと、赤鬼が野太刀で断ち切る!
扇が真っ二つに切れた。その向こう側にいた羅忌の身体も縦に切られた。羅忌は血を吹きながら、自らが作った酸の泉に落ちていく。
……かと思ったが、羅忌が酸の泉に着く前に、オオムラサキが羅忌と泉の間に滑り込み、羅忌の身体を乗せて空中に戻った。
「くっ……下民の分際でこの私に深手を負わすなど」
羅忌は、オオムラサキの上で片膝を立てている。傷は相当深そうだ。武器の扇子も失ったし、もう戦えそうにねえ。
「もう、邪魔できねえだろ」
俺たちは大統領のいる執務室に向かうべく、広間ではなく別のルートに向かおうとした。
そのとき、廊下の奥から足音が聞こえて来た。1人や2人じゃねえ。
「なんだなんだ?」
相当多い、この足音! まだそんなに敵がいるのかよ⁉
俺たちはこちらに向かってくる足音の正体を確かめようと、廊下の奥のドアが開くのを待った。
バンッと勢いよくドアが開く。そこから飛び出してきたのは。
「藤花!」
「蕾ちゃん⁉」
「蕾!」
額から汗を流しながら、蕾が走って来た。蕾の親父や、農家の人たちも。
「蕾ちゃん……皆さん、どうして」
驚いている藤花を、蕾は抱きしめた。
「藤花! 藤花……無事でよかった」
藤花はおそるおそる、でもしっかりと蕾を抱きしめ返した。
「蕾ちゃん……ごめんね」
蕾は藤花の腰に腕を回したまま、藤花の顔を見つめた。
「どうして藤花が謝るの?」
「だって、私……。私は、本当に世間知らずで、何にもわかってなくて。蕾ちゃんの力になりたいのに、なれなくて。1人で何にもできなくて、こんなにたくさんの人に迷惑かけて」
蕾は首を横に振った。
「何言ってるの。みんな、藤花を心配して来ただけだよ。みんな、藤花が大好きなんだよ」
「……蕾ちゃん」
「私も……。藤花、ごめんね。藤花がモデルになるって言ったとき、私、自分1人じゃ何にもできないくせに。人の夢を奪うな! って、言った。……すごく、ひどいことを言ったと思ってる」
「……それは、本当のことだよ」
「ううん。私、藤花に嫉妬して、ひどいこと言ったの。最低だった。ずっと、あのときの自分が大嫌いで。藤花を遠ざける自分がすごく嫌で。なにもかも嫌いになって。ずっと、つらかった。藤花を傷つけて、本当にごめんなさい」
蕾は藤花をまっすぐに見つめて謝った。藤花から涙がこぼれた。藤花は流れ落ちる涙をぬぐいながら、蕾に言った。
「蕾ちゃん……私、まだ、蕾ちゃんと友達でいられる? また、いっしょに、いられるかな」
蕾も目の端に涙を浮かべながら笑った。
「当たり前じゃん! 私たち、ずっと友達だよ」
藤花はもう一度蕾を抱きしめた。肩を震わせながら泣いている。
ずっと、こうやって、会いたかったんだな。
「よかったね」
2人の様子を見ながら、カイソンがつぶやいた。
「ああ」
俺もうなずいた。
そんななか、蕾の親父が俺たちに声をかけてきた。
「で、結局誘拐犯はこちらの方々で?」
蕾の親父は赤鬼と関根を見ている。
「あ、いや……これは、なんつったらいいのかな」
俺は後ろ頭を掻いた。
そのときだった。
「愚民どもが、全員不法侵入ですよ」
空から低い声がした。羅忌だ。いつのまにかオオムラサキの上で立ち上がっている。
次の瞬間、羅忌の頬が大きく膨らんだ!
あれはまさか、黒袴が使っていた酸の水鉄砲か⁉
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