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第3挑☆思いがけない迎え! 魔王城にようこそ!?前
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俺の名前は大一文字挑。今日も昨日と同じ物流倉庫で、重量級商品を運んで筋トレしている19歳だ。もちろん、カイソンもいっしょに働いている。
「チョーさん、ブロッコリー飽きたんで交代しません?」
「なに、お前、キャベツやんの?」
「いや、おにぎりの仕分けに行こうかなって」
俺はカイソンの頭をポンポンと叩いた。
「お前、逃げんのか?」
「だってたまには楽したいじゃないっすか!」
「馬鹿ヤロー、若くてピチピチの男手の存在意義はなぁ、重量級商品を仕分けてなんぼなんだよ!」
カイソンはしぶしぶブロッコリー入りの段ボール箱を1箱持ち上げた。情けねえ。マジになったらこいつでも一度に3箱は持てるだろうに。
「カイソン、金をもらうからにはな、その分しっかり働かねえとならねえよ」
「チョーさんの場合は働きすぎなんっすよ。給料10人分くらいもらっていいレベルです」
「そこはな、できる人間ががっつりやるってボランティア精神でよ……」
「チョーちゃ~ん!」
名前を呼ばれて振り向くと、キヨさんが慌てた様子でこっちに来るじゃねえか。
「どうしたんすか、キヨさん」
「チョーちゃん、また阿久津さんがサボっていなくなってしもうて。一人で台車を60台も運ばなくちゃならんくて……。悪いけど、また手伝ってくれないかい?」
「阿久津の野郎、姉さんに1台1000キロはある台車を一人で60台も運ばせようとしたのかよ」
もう許せん。
「え、ちょっと、チョーさん?」
カイソンが焦った様子で俺を見ている。いや、ダメだ。止めても無駄だからな。
阿久津の野郎には制裁が必要だ。
俺はキヨさんににっこりと微笑んだ。
「キヨさん、台車は阿久津の野郎に運ばせるよ」
「えっ、でも、あの人、人の言うことなんかちっとも聞きやしないし、社員の注意だって無視するし」
「大丈夫」
キヨさんはオロオロしている。
「カイソン、少しだけキヨさんのところに行って、台車を運ぶの手伝ってやってくれ」
「え、チョーさんは?」
「決まってんだろ」
俺はにやりと笑ったあと、作業場から離れた。
阿久津の野郎がいる場所なんてわかりきっている。どうせ休憩室の隣の喫煙スペースだ。
俺は倉庫内から出て廊下を進み、まっすぐ喫煙スペースに向かった。喫煙スペースのドアを乱暴に開けると、ほら、いやがった。のんきにタバコをふかしてやがる、50過ぎのおっさんがよ。
「阿久津さーん、今、休憩時間じゃないっすよね?」
「なんだあ? てめー、何様のつもりで……」
それ以上は何も聞く気はねえ。俺は問答無用で阿久津の顔面に拳を一発めり込ませた。手加減してやったから意識までは飛ばしてねえ。
「ぐぉ……」
呻いている阿久津の襟首をつかんで、俺は阿久津の身体を片手で持ち上げた。そのまま男子トイレに持って行って、便器の中に顔を押し込んだ。
「はーい、タバコの火を消しましょうね~。ついでにタバコの臭いも消しましょうね~」
「がぼぼぼぼおぼぼ」
顔を上げようと必死にあがく阿久津を力で押さえつける。片手だけど。
阿久津が疲れてきたところで、頭を掴んで便器から離した。それから、阿久津を睨んで言った。
「お前さあ、いい加減サボるのやめろよ。周りが迷惑してんだよ」
「な……あ……」
「次、サボったら殺す。俺、嘘つくの嫌いだから」
阿久津は震えながらうなずくと、俺に続いてトイレから出た。このまま作業場に戻ると思ったんだが。
「けけけけ、警察ぅ~~~~!」
「はあ!?」
阿久津の馬鹿が、「警察、警察」とわめき始めた! もう一回殴って黙らせようかと思ったが、事務所から、「どうした、どうした」と社員が出てくる。うわっ、めんどくせえ!
「ちっ」
俺は慌てて倉庫から飛び出した。走って逃げながら、カイソンに電話をかける。
「もしもーし、チョーさん、もう台車運び終わっちゃったけど……」
「逃げろ、カイソン」
「はい?」
「話はあとだ、とにかくそこから出てコンビニまで来い!」
俺は電話を切って、自宅のアパートから一番近いコンビニまで走った。
20分ほど遅れて、カイソンもコンビニにやってきた。走ってきたはずなのに、カイソンはとくに息切れもせず、涼しい顔をしてやがる。
店の壁にもたれてしゃがみこんでいる俺と違って、カイソンはなんだかすっきりした顔をしている。
「まあ、近いうちにこんなことが起こると思ってましたよ」
「なんだよ」
「阿久津の馬鹿が顔面変形させてわめいていたんで、状況は察しました。ま、仕方ないっすね。チョーさん、我慢したほうでしょ」
俺は無言で、さっき買っておいた炭酸水入りのペットボトルをカイソンに渡した。
「どもっす」
カイソンは笑顔でペットボトルを受け取ると、俺の隣にしゃがみこんだ。
あーあ、あの倉庫、アパートから近いから良かったんだけどなぁ。
今まで、ファミレス、コンビニ、清掃、いろんなバイトをやってきたけど、どれもこれも同じ結末。どこに行ってもサボったり人に迷惑かけたりする野郎がいやがるもんだから、とりあえずボコったら俺がクビ。
「俺、やっぱ、普通の仕事はできねぇわ」
「そんなのわかってますって」
「なんだよ」
「いいんすよ、チョーさんはそのままで。動画で成功すればいいじゃないっすか」
わかったふうに言うなあ、こいつは。
でも、ま、カイソンが言うなら、それでいいのか。
「……そうだ」
俺はふと思い出して、カイソンに訊ねた。
「あの、バタフライ野郎から返事はきてねえのか?」
「ああ」
カイソンも思い出したように、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
「まー、相手は超人気クリエイターですからね。まだDM見てもいない気がするんすけど……」
カイソンがスマホを操作していると、コンビニに似つかわしくない、黒塗りのベンツが一台入って来た。うおお、メルセデスマイバッハSクラスじゃねえか。どこのヤバい奴がこんな辺鄙なところにあるコンビニにやって来てんだ。
俺とカイソンがベンツをガン見していると、運転席から上下青色の燕尾服を着た、やたらとキラキラした男が降りてきた。髪の色も鮮やかな青色だし、顔立ちは韓流イケメンって感じだ。てか、韓流スターなのか? なんでスターがこんなところに?
その青色の男が、俺とカイソンに近づいてきて、言ったんだ。
「どうも。大一文字挑さんと、石川開尊さんですね。お迎えに参りました」
「……はあ?」
「私の名前は青葉瀬芹。チョウ・ダンサー・バタフライマンさまの執事です」
「えっ、は、ええっ!?」
カイソンが、スマホに表示されたチョウ・ダンサー・バタフライマンの動画と青葉瀬芹と名乗る男とを交互に見やっている。
「あなた方は、昨日、チョウ・ダンサー・バタフライマンさまにDMを送りましたね。弟子入りしたいとか」
「あ……はい」
思わず丁寧に返事をしちまった。
「チョウ・ダンサー・バタフライマンさまは要望を受け入れられるとのことです。さっそく、お屋敷までお連れ致します」
青葉瀬芹は、ベンツの後部座席のドアを開けて、俺たちに乗るように促した。
俺とカイソンは顔を見合わせた。
「これ、新手の誘拐?」
「誘拐って、こんなごつい男を誘拐しようって考える奴なんかいないでしょ」
「え、じゃあ、何、本当にチョウ・ダンサー・バタフライマンのとこに行くわけ?」
「ですかね?」
怪しい。めちゃくちゃ怪しいが、ちょうどバイトもクビになっただろうし。もしヤバいとこでも、カイソンといっしょだったら、力ずくで逃げられるか。
俺はカイソンに言った。
「行くか」
カイソンは、戸惑いながらもうなずいた。
「行きましょう」
俺とカイソンは立ち上がり、そろそろとベンツの後部座席に乗った。
「チョーさん、ブロッコリー飽きたんで交代しません?」
「なに、お前、キャベツやんの?」
「いや、おにぎりの仕分けに行こうかなって」
俺はカイソンの頭をポンポンと叩いた。
「お前、逃げんのか?」
「だってたまには楽したいじゃないっすか!」
「馬鹿ヤロー、若くてピチピチの男手の存在意義はなぁ、重量級商品を仕分けてなんぼなんだよ!」
カイソンはしぶしぶブロッコリー入りの段ボール箱を1箱持ち上げた。情けねえ。マジになったらこいつでも一度に3箱は持てるだろうに。
「カイソン、金をもらうからにはな、その分しっかり働かねえとならねえよ」
「チョーさんの場合は働きすぎなんっすよ。給料10人分くらいもらっていいレベルです」
「そこはな、できる人間ががっつりやるってボランティア精神でよ……」
「チョーちゃ~ん!」
名前を呼ばれて振り向くと、キヨさんが慌てた様子でこっちに来るじゃねえか。
「どうしたんすか、キヨさん」
「チョーちゃん、また阿久津さんがサボっていなくなってしもうて。一人で台車を60台も運ばなくちゃならんくて……。悪いけど、また手伝ってくれないかい?」
「阿久津の野郎、姉さんに1台1000キロはある台車を一人で60台も運ばせようとしたのかよ」
もう許せん。
「え、ちょっと、チョーさん?」
カイソンが焦った様子で俺を見ている。いや、ダメだ。止めても無駄だからな。
阿久津の野郎には制裁が必要だ。
俺はキヨさんににっこりと微笑んだ。
「キヨさん、台車は阿久津の野郎に運ばせるよ」
「えっ、でも、あの人、人の言うことなんかちっとも聞きやしないし、社員の注意だって無視するし」
「大丈夫」
キヨさんはオロオロしている。
「カイソン、少しだけキヨさんのところに行って、台車を運ぶの手伝ってやってくれ」
「え、チョーさんは?」
「決まってんだろ」
俺はにやりと笑ったあと、作業場から離れた。
阿久津の野郎がいる場所なんてわかりきっている。どうせ休憩室の隣の喫煙スペースだ。
俺は倉庫内から出て廊下を進み、まっすぐ喫煙スペースに向かった。喫煙スペースのドアを乱暴に開けると、ほら、いやがった。のんきにタバコをふかしてやがる、50過ぎのおっさんがよ。
「阿久津さーん、今、休憩時間じゃないっすよね?」
「なんだあ? てめー、何様のつもりで……」
それ以上は何も聞く気はねえ。俺は問答無用で阿久津の顔面に拳を一発めり込ませた。手加減してやったから意識までは飛ばしてねえ。
「ぐぉ……」
呻いている阿久津の襟首をつかんで、俺は阿久津の身体を片手で持ち上げた。そのまま男子トイレに持って行って、便器の中に顔を押し込んだ。
「はーい、タバコの火を消しましょうね~。ついでにタバコの臭いも消しましょうね~」
「がぼぼぼぼおぼぼ」
顔を上げようと必死にあがく阿久津を力で押さえつける。片手だけど。
阿久津が疲れてきたところで、頭を掴んで便器から離した。それから、阿久津を睨んで言った。
「お前さあ、いい加減サボるのやめろよ。周りが迷惑してんだよ」
「な……あ……」
「次、サボったら殺す。俺、嘘つくの嫌いだから」
阿久津は震えながらうなずくと、俺に続いてトイレから出た。このまま作業場に戻ると思ったんだが。
「けけけけ、警察ぅ~~~~!」
「はあ!?」
阿久津の馬鹿が、「警察、警察」とわめき始めた! もう一回殴って黙らせようかと思ったが、事務所から、「どうした、どうした」と社員が出てくる。うわっ、めんどくせえ!
「ちっ」
俺は慌てて倉庫から飛び出した。走って逃げながら、カイソンに電話をかける。
「もしもーし、チョーさん、もう台車運び終わっちゃったけど……」
「逃げろ、カイソン」
「はい?」
「話はあとだ、とにかくそこから出てコンビニまで来い!」
俺は電話を切って、自宅のアパートから一番近いコンビニまで走った。
20分ほど遅れて、カイソンもコンビニにやってきた。走ってきたはずなのに、カイソンはとくに息切れもせず、涼しい顔をしてやがる。
店の壁にもたれてしゃがみこんでいる俺と違って、カイソンはなんだかすっきりした顔をしている。
「まあ、近いうちにこんなことが起こると思ってましたよ」
「なんだよ」
「阿久津の馬鹿が顔面変形させてわめいていたんで、状況は察しました。ま、仕方ないっすね。チョーさん、我慢したほうでしょ」
俺は無言で、さっき買っておいた炭酸水入りのペットボトルをカイソンに渡した。
「どもっす」
カイソンは笑顔でペットボトルを受け取ると、俺の隣にしゃがみこんだ。
あーあ、あの倉庫、アパートから近いから良かったんだけどなぁ。
今まで、ファミレス、コンビニ、清掃、いろんなバイトをやってきたけど、どれもこれも同じ結末。どこに行ってもサボったり人に迷惑かけたりする野郎がいやがるもんだから、とりあえずボコったら俺がクビ。
「俺、やっぱ、普通の仕事はできねぇわ」
「そんなのわかってますって」
「なんだよ」
「いいんすよ、チョーさんはそのままで。動画で成功すればいいじゃないっすか」
わかったふうに言うなあ、こいつは。
でも、ま、カイソンが言うなら、それでいいのか。
「……そうだ」
俺はふと思い出して、カイソンに訊ねた。
「あの、バタフライ野郎から返事はきてねえのか?」
「ああ」
カイソンも思い出したように、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
「まー、相手は超人気クリエイターですからね。まだDM見てもいない気がするんすけど……」
カイソンがスマホを操作していると、コンビニに似つかわしくない、黒塗りのベンツが一台入って来た。うおお、メルセデスマイバッハSクラスじゃねえか。どこのヤバい奴がこんな辺鄙なところにあるコンビニにやって来てんだ。
俺とカイソンがベンツをガン見していると、運転席から上下青色の燕尾服を着た、やたらとキラキラした男が降りてきた。髪の色も鮮やかな青色だし、顔立ちは韓流イケメンって感じだ。てか、韓流スターなのか? なんでスターがこんなところに?
その青色の男が、俺とカイソンに近づいてきて、言ったんだ。
「どうも。大一文字挑さんと、石川開尊さんですね。お迎えに参りました」
「……はあ?」
「私の名前は青葉瀬芹。チョウ・ダンサー・バタフライマンさまの執事です」
「えっ、は、ええっ!?」
カイソンが、スマホに表示されたチョウ・ダンサー・バタフライマンの動画と青葉瀬芹と名乗る男とを交互に見やっている。
「あなた方は、昨日、チョウ・ダンサー・バタフライマンさまにDMを送りましたね。弟子入りしたいとか」
「あ……はい」
思わず丁寧に返事をしちまった。
「チョウ・ダンサー・バタフライマンさまは要望を受け入れられるとのことです。さっそく、お屋敷までお連れ致します」
青葉瀬芹は、ベンツの後部座席のドアを開けて、俺たちに乗るように促した。
俺とカイソンは顔を見合わせた。
「これ、新手の誘拐?」
「誘拐って、こんなごつい男を誘拐しようって考える奴なんかいないでしょ」
「え、じゃあ、何、本当にチョウ・ダンサー・バタフライマンのとこに行くわけ?」
「ですかね?」
怪しい。めちゃくちゃ怪しいが、ちょうどバイトもクビになっただろうし。もしヤバいとこでも、カイソンといっしょだったら、力ずくで逃げられるか。
俺はカイソンに言った。
「行くか」
カイソンは、戸惑いながらもうなずいた。
「行きましょう」
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