ハイ拝廃墟

eden

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ボウリング場②

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『1歳男の子を暴行死の疑い 母親の交際相手の21歳男を傷害致死の容疑で逮捕』

 子ども殴り殺す奴は死んだほうがいい。ってか、母親も子どもより男選んでんじゃねーよ。父親が子どもを虐待して殺して、母親も見殺しにしてってパターンも何回繰り返してんだ。

 こういうのは全部死刑でいいんだよ、死刑。

『ひき逃げ疑い80歳逮捕 前の車に衝突』

 だから、じじいが運転してんじゃねえよ! とっとと免許返納しろ。てか、ひき殺してたら死刑だろ。普通に。なんかいたな、若い母親と子どもをひき殺しておいて無罪を主張したやつ。老害はみんな駆除でよくね?

 殺虫剤で全滅させられたら簡単なのに。老害の年金払うために税金払ってんのかと思うと馬鹿らしいわ。

『偽装非公認 派閥裏金事件で非公認となった候補者へ2000万円支給 野党批判』

 まーた黒い金が流れてんのか。一回総理が暗殺されただけじゃわかんねーのかな、こいつら。もう一回暗殺されろよ、誰か。

 ていうか、暗殺してえな。こういう世の中のバカども全員、殺していい法律があればいいのに。

 なんか、そういう漫画とか小説あるじゃん。合法的に殺し合いができるやつとかさ。そういうの現実にならねえかな。


 野口聖斗のぐちせいとは、カップラーメンをすすりながらスマホのニュースを見て苛立っていた。思ったことをそのままコメントすると、非表示になる。

「っはあ、本当にめんどくせえ世の中。くそみてえな奴にくそって言って何が悪いんだよ。こいつら生きてるだけで迷惑じゃん」

 箸で麺をつかもうとするがつかめない。スープのなかに麺がない。野口はカップの中に箸を入れたまま、床に置いているコンビニ袋の中からポテトチップスを取り出して開封した。

 豪快にポテトチップスを掴んで頬張る。床にカスが落ちても気にしない。

 ふと時計を見ると、午後23時である。そろそろ寝るか。野口は食べたものをそのままにして、ベッドの中に潜り込んだ。

 気が付くと午前8時である。

「うわっ、やべっ」

 野口は慌てて顔を洗って歯を磨き、白いシャツと黒いパンツに着替えた。寝ぐせは気にしないで、貴重品をパンツのポケットに突っ込み、急いで家を出た。

 自転車で30分のところにある百円均一ショップまで行き、駐輪場の端に自転車を停めた。まだ自動になっていない入り口のドアを手で開けて、照明のついていない店内に入る。

 すでに来ていた中年女性スタッフ3人に、野口は挨拶した。

「お、おはようございます」

「おはようございます」

 女性3人は店内の掃除をしながら返事をした。野口は急いでバックルームに入り、焦げ茶色のエプロンをつけた。エプロンのポケットにボールペン、マーカー、メモ帳、カッターナイフが入っているのを確認して、自分も掃除に参加するべくフロアに出た。

 野口は派遣社員として、百円均一ショップの品出しの仕事をしている。基本的には、店舗が直接雇用しているパートの指示を聞いて仕事をする。

「ちょっと野口さん、そこ商品の位置が逆!」

「野口さん、この商品出してきて」

「商品の場所がわからない? 昨日と同じ場所なんですけど。覚えてないんですか?」

「野口さん、商品しまうところが違う!」

 今日もパートの女性たちに指示・指摘されながら、野口は店内をうろうろと歩き回った。何か注意されるたびに、「はい」「すみません」「わかりました」と返事をする。ふとパートの女性の顔を見ると、怒っていたり、冷たい目で見ていたり、疲れた顔をしていたり。


 うぜーーーーー!!!! このババアども、全員ぶん殴りてえ! 


 もっと丁寧に説明しろよ。商品の場所なんか、てめえらが動かすから全然わかんねーんだよ! パートのくせに偉そうにしやがって。社員じゃねえだろ、しょせんパートのくせに、人を見下しやがって。

 ちょっと暇になったら寄ってたかって仕事の文句と人の悪口で盛り上がってよ。マジだるい。こいつらに子どもいるとかホラーでしかない。

 こっちが何も言わねえからって調子に乗りやがって。

 何ほざいてたって、てめえらがババアなことに変わりはねーんだからな!


 午後18時になり、野口は退店した。コンビニで弁当とポテトチップス、缶チューハイを買ってアパートに戻る。

 今の派遣先との契約は、あと一週間で終わりである。再契約の案内は来ていない。いつも、契約が切れてから1週間ほど経って、「また行きませんか?」と案内がくる。

 どうせ働く人間がいないんだ。あんなババアどもがいたら誰だって嫌だろ。

 とはいえ、野口も新しい仕事を覚えるのは面倒なのである。もう1か月行ったら他を探そう。と思って再契約するが、結局他を探すことなく、今の派遣先と再契約を交わすことを繰り返している。

 代わり映えのしない毎日。友達もいない、親ともとくに連絡をとらない、恋人なんてもってのほか。

 野口が熱くなるのは、政治家や芸能人、犯罪者などが炎上するときだけである。怒りのコメントが次々と湧いてくる、そこに自分のコメントも投入する。ネットの中でニュースが過熱し、大爆発するときにアドレナリンが出る。

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