B.B.HEARTS

池谷光

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勇英士試験

一次試験突破

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 気絶しているリゲルを一瞥するとサイガはジークに駆け寄る。ジークは立ち上がり自分の身体の重さが元に戻っていることを確認する。リゲルが気絶したことにより重くなる能力も解かれたようである。ジークは腕を回しながらおかしな所はないか確認して安堵する。

「助かったぜサイガ、マジでありがとな。あのままだと確実に負けてた」
「仕方ないさ、謎の能力を使ってきたんだからな。初見だと対応するのは厳しかっただろう」
「しかし、あんな奴らがうじゃうじゃいると考えるとこの先骨が折れるな」
「そうだな。あの謎の能力・・・ジークはなんか知っているか?」
「いや、聞いたことねえな。見たのも初めてだったからマジで驚いたぜ」

 そうかと言ってサイガはじっと考え込んでいる。人間が本来持っていないであろう特殊な能力。まだ見たことのない未知数の能力について疑問に思うところが多いようである。

「サイガ、俺はそろそろ行くぜ。アリシアも待ってるかもしれないからな」

 ジークはそう言って床に自らのネームプレートを再びかざし仕掛けを動かす。地下へと繋がる階段が見えてくる中、ジークはサイガにまた会おうぜと言って拓けた地下への階段を降り始めた。ジークが降り始めると拓けた床が再び動き出し、元に位置に戻っていった。

 サイガは99の数字が刻まれた壁にネームプレートをかざす。壁の仕掛けが動き出すとその奥には暗闇が広がっていた。サイガはその中を進んでいくと背後で壁が動く音がした。もう戻れないことをあらためて確認すると暗闇の中を注意深く歩いて行く。暗闇でほとんど周りが見えないが、一本道のようで真っ直ぐ歩いていて何かにぶつかることもなく進めていた。

 しばらく進んでいくと壁にぶつかる。左右も壁になっておりこれ以上進むことができなくなっていた。何かないかと辺り一面を触っていると、不意に足下の床が抜け落ちた。サイガはそのまま叫び声をあげながら落ちていく。周りは相変わらず暗く、手を伸ばしても何も掴めそうにない。

 すると落ちている方向、暗闇の先から段々と光が見え始める。そして暗闇の空間を向けた先は切り立った岩が棘のようにいくつも突きだし、そこに打ち付ける波が白く染めている海であった。サイガは落下の最中自分の他にも落ちてきている参加者達を確認する。どうやら自分と同じような方法で脱出した者達がいたらしい。

 そして何かが風を切る音が聞こえるとサイガは誰かに服を掴まれ、急に身体が浮く。ふと横を見るとサイガより二回りほど大きな鳥がサイガを見つめている。そして背後を確認するとその大きな鳥に乗っかった大柄な男がサイガの服を掴んでいた。男は目元のゴーグルを外すとサイガにむかってにやりと笑みを浮かべると声を出して言った。

「兄ちゃん、おめでとさん!一次試験合格だぜ!」

 サイガはそのまま鳥の背中に引き上げられると周りを見渡す。どうやら他の落下していた参加者達も同様に鳥に乗った操縦者に上手く引き上げられていた。

 サイガを乗せた巨大な鳥は操縦士の掛声と共に鳴き声を上げるとその場を一回りするとゆっくりと滑空していく。下に広がる海の中で岩陰に隠れるように大きな客船が浮いている。巨大な鳥は客船の上まで来ると翼をゆっくりはためかせ船首にその足をおろした。
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