1 / 14
勇士集う
始まりの出会い
しおりを挟む
「おっちゃん、ここ知ってる?」
店先で一枚の紙切れを店番の男に見せ、黒衣の少年は尋ねる。男は見慣れない姿をしている少年を奇妙な目で見つめる。そして紙切れを受け取り見るとまたかと呆れたような顔をする。
「もう今日はにいちゃんで50人目だよ」
「50人?そんなに来ているのか」
「昨日は105人、一昨日は123人だったかな。どいつもこいつも聞くだけ聞いて店のものを何一つ買ってきやしない」
それは難儀な話だなと笑う少年。そんな少年を見て、若干不機嫌になりながら笑い事じゃないよと男は呟く。
「その場所なら町の外れにあるよ。この町を出て東の森の一本道を抜けると見えてくるよ」
文句を言いながらもしっかりと教えてくれる男に礼を言うと、少年は質素な荷物を抱えて店を出て行こうとする。そんな少年を男はちょっと待てと言わんばかりに呼び止め問いかける。
「おいおい、商売で困っているって言っている男がいるのに何も買わずに出て行くのか?こっちは親切にその場所を教えてあげたというのにそっちは何もしてくれないなんて薄情だろう」
そんなこと言ってもなぁと少年は足を止め、困ったように頭を掻いている。そして手をあげて、
「申し訳ないけど俺はもうすっからかんで金がないんだよ」
こんな身なりだしと続けると少年は質素な荷物を男に見せた。男は呆れたようにため息をつくと、もう良いよと言ってとっとと出て行けと言わんばかりに手を振る。少年はまぁ待ってくれよと言って男をなだめる。
「俺は無理だけれどその代わりに・・・・・・」
そう言って少年は背後にある店の扉を指さす。するとその扉から一人の少女が一枚の紙切れを持って入ってきた。少女は紙切れを見て頭を掻きながら何かブツブツと呟いている。
「アイツが出してくれるから安心してくれ」
少年はそう言うと少女の方に顔を向けるとにやりと笑う。その背後で男もOKと言わんばかりに少女にむかって不気味な笑顔を向けていた。そんな二人の姿を見た少女は一瞬ビクッと驚くと、何か邪な考えを感じとりたじろぐ。
「嬢ちゃん、もしかして道を尋ねに来たんじゃないかい?」
「そ、そうですけど・・・・・・」
「私はその道を知っているんだ、教えてあげるよ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
男の言葉を聞いて思わずうれしそうな顔をする少女。一応紙を見せますねと少女は男に紙を見せようとする。
「ただ・・・・・・」
そう言って男はわざと悲しそうなふりをして顔を伏せると、今にも消えそうな、しかし少女には聞こえるような大きさの声で呟く。
「店の売り上げがなぁ・・・今月厳しいんだよなぁ・・・・・・」
どんよりした雰囲気を醸し出す男の姿に何かを感じ取ったのか、少女はわかりましたと言って肩にかけていたショルダーバッグから財布を取り出した。
「じゃあ俺の分も頼むわ」
そう言って少年はグッと親指を立てると少女よりも一足先に店を出て行く。少女は少年が出て行った店の扉をポカンとしながら見つめていた。
「あぁ・・・嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?」
「え?あ、アリシアです」
「そうかい。アリシアちゃん、こんなこともあるさ。あのにいちゃんの分もよろしく」
そう言って男はカウンターの下から何か箱を取り出すと手を差し出す。アリシアは複雑な表情を浮かべなから財布を開くのであった。
店先で一枚の紙切れを店番の男に見せ、黒衣の少年は尋ねる。男は見慣れない姿をしている少年を奇妙な目で見つめる。そして紙切れを受け取り見るとまたかと呆れたような顔をする。
「もう今日はにいちゃんで50人目だよ」
「50人?そんなに来ているのか」
「昨日は105人、一昨日は123人だったかな。どいつもこいつも聞くだけ聞いて店のものを何一つ買ってきやしない」
それは難儀な話だなと笑う少年。そんな少年を見て、若干不機嫌になりながら笑い事じゃないよと男は呟く。
「その場所なら町の外れにあるよ。この町を出て東の森の一本道を抜けると見えてくるよ」
文句を言いながらもしっかりと教えてくれる男に礼を言うと、少年は質素な荷物を抱えて店を出て行こうとする。そんな少年を男はちょっと待てと言わんばかりに呼び止め問いかける。
「おいおい、商売で困っているって言っている男がいるのに何も買わずに出て行くのか?こっちは親切にその場所を教えてあげたというのにそっちは何もしてくれないなんて薄情だろう」
そんなこと言ってもなぁと少年は足を止め、困ったように頭を掻いている。そして手をあげて、
「申し訳ないけど俺はもうすっからかんで金がないんだよ」
こんな身なりだしと続けると少年は質素な荷物を男に見せた。男は呆れたようにため息をつくと、もう良いよと言ってとっとと出て行けと言わんばかりに手を振る。少年はまぁ待ってくれよと言って男をなだめる。
「俺は無理だけれどその代わりに・・・・・・」
そう言って少年は背後にある店の扉を指さす。するとその扉から一人の少女が一枚の紙切れを持って入ってきた。少女は紙切れを見て頭を掻きながら何かブツブツと呟いている。
「アイツが出してくれるから安心してくれ」
少年はそう言うと少女の方に顔を向けるとにやりと笑う。その背後で男もOKと言わんばかりに少女にむかって不気味な笑顔を向けていた。そんな二人の姿を見た少女は一瞬ビクッと驚くと、何か邪な考えを感じとりたじろぐ。
「嬢ちゃん、もしかして道を尋ねに来たんじゃないかい?」
「そ、そうですけど・・・・・・」
「私はその道を知っているんだ、教えてあげるよ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
男の言葉を聞いて思わずうれしそうな顔をする少女。一応紙を見せますねと少女は男に紙を見せようとする。
「ただ・・・・・・」
そう言って男はわざと悲しそうなふりをして顔を伏せると、今にも消えそうな、しかし少女には聞こえるような大きさの声で呟く。
「店の売り上げがなぁ・・・今月厳しいんだよなぁ・・・・・・」
どんよりした雰囲気を醸し出す男の姿に何かを感じ取ったのか、少女はわかりましたと言って肩にかけていたショルダーバッグから財布を取り出した。
「じゃあ俺の分も頼むわ」
そう言って少年はグッと親指を立てると少女よりも一足先に店を出て行く。少女は少年が出て行った店の扉をポカンとしながら見つめていた。
「あぁ・・・嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?」
「え?あ、アリシアです」
「そうかい。アリシアちゃん、こんなこともあるさ。あのにいちゃんの分もよろしく」
そう言って男はカウンターの下から何か箱を取り出すと手を差し出す。アリシアは複雑な表情を浮かべなから財布を開くのであった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる