上 下
16 / 22
D.D.クエスト

黒いマントをなびかせて

しおりを挟む
 買い物を終えた四人は城へと向かっていた。しかしながら城下町には閑散としており、道行く人はほとんどいない。わずかに外を歩く住民もその表情は暗くどこか疲れている様子である。

「しかしお姫様が攫われたぐらいで町の雰囲気って言うのはそんなに変わるものなのか?」
「攫われたのは一国の主の娘さんだからね、やっぱり皆心配な気持ちになるんだよ」
「もしかしたらそれだけじゃないのかもしれないわね」
「それだけじゃない?なんだ、他にも何かあるのか」
「もしかして黒マントの事件と何か関係があるんでしょうか?」
「そういえばそんな事件もあったな。酒場のマスターも奥さんが外に出るの怖がっているって言ってたし、そりゃ雰囲気も暗くなるわけか」
「あんた、やっぱり話聞いてなかったのね」
「忘れてたんだ。誰かさんとは戦闘になったり店では驚くことが起こったり、武器は鉄球たったの一つ。こんな衝撃的な展開が続けて起こっているんだ、シナリオの内容も頭から抜け落ちるっての」
「町の雰囲気はともかく、問題は私とあんたの防具がないことよ。防御ができないのは戦闘の時に厳しいわ」
「まあ無いものは嘆いたって仕方ないしな。装備がそろっているエストとまりもの二人に頑張ってもらうとしようぜ」

 などと四人が話していると突如として目の前に黒い瘴気が立ちこめ始める。それらは徐々に密集し始め、人の形をなしていく。

「おいおいまさか話していたら、ってやつか?」

 そうして四人の前に現れたのは黒いマントを羽織った仮面の男であった。男は仮面の隙間から四人を見据えている。

『お前達、先程店で装備を買っていたな?それら全て置いて立ち去れ!』
「なんだこいつ、いきなり現れて挨拶もなしに装備置いていけとか非常識にも程があるだろ」
「こいつが例の黒マントって奴ね。もしかして戦闘になる?」
「ご名答!」
『聞かぬと言うなら致し方ない、お前達全員ここで・・・死んでもらう!』
「『黒マントはそう言うと戦闘態勢をとった』さあここから戦闘開始だよ!本当はこのシーンがプレイヤーの最初の戦闘になるはずだったんだよね」
「ずいぶん遅い登場だな」
「待ちくたびれたわ」
「君達のせいだけどね!」

 それじゃあ戦闘を始めるよ!と言ってアプゥはゲームブックを開いてページをめくり始める。

「エストとまりもは初戦闘だからヒントとしてこの黒マントのステータスを教えてあげるよ。STR・DEX・INT・LUC・TEC・HP・MP・消費量の順で7・4・10・6・5・6・9・3だよ。最初の敵だから少し弱めになっているよ」
「確かにステータス低いな。こりゃいいや、良い肩慣らしになる」
「それじゃあ始めるよ!行動順はDEXが一番高いF2からだね」
「よし、一撃で仕留めるわ!〈魔法(氷)〉・・・ってマズいわね、MPが無くなるかもしれないわ」
「お前残りMPどのくらいだよ?」
「7。消費量は2だから残り三回しか使えないわ」
「余計なことに使うからそうなるんだ」
「うるさい!ここは魔法を使わず〈こぶし〉で攻撃するわ!ダイスロール!」

 ダイスの出目は95、ファンブル手前である。もちろん判定は失敗であり、黒マントにダメージを与えることはできない。

「嘘!?私まで出目が悪くなってきてる・・・!」
『どこを狙っている!そんな攻撃しかできないのか?』
「次は私です!消費量が最小値になった私の魔法を使わせてもらいます!〈魔法(光)〉で攻撃します!ダイスロール!」

 ダイスが出した数字は36であった。まりもの〈魔法(光)〉の技能値は装備も相まって65であるため判定は成功である。

「成功しました!」
『くっ、これはマズい!〈回避〉を使用する!ダイスロール!』
「えっと出目は・・・40、まあ失敗するよね」

 まりもは装備品の『僧侶のロッド』を掲げ、その先に光を集中させると光線のように黒マントに放った。

「それじゃあダメージロールいきます!出目は・・・2です!」
「さらに黒マントは〈魔法(光)〉が弱点なのでダメージ判定に+2されるよ。それに黒マントの装備の装甲値1をひいて・・・黒マントに3のダメージだね」
『やるな小娘、だが私はまだ倒れんぞ!』
「黒マントのHPは残り3だよ。次はレッドの番だね」
「よっしゃあ!早速さっき買ったアイテムを使ってみるか!俺はアイテム『マジック・ボール』を使って〈投擲〉で攻撃する!アイテム効果見せてもらうぜ!ダイスロール!」

 そう言ってレッドは勢いよくダイスを振った。ダイスが出した数字は28、判定は成功である。

「もう〈回避〉は使えないからな!ダメージロールだ!」
「と、その前にレッドには1D6でダイスを振ってもらうよ。これで『マジック・ボール』の効果が決まるんだ」
「面白そうじゃねぇか!いくぜ!ダイスの出目は・・・5だ!」
「5だね。効果は・・・与えたダメージ分HPが回復するよ」
「いいね!それじゃあ今度こそダメージロールだ!」

 レッドが出した数字は3であった。それにマジック・ボールによるダメージで+1、黒マントの装甲値1を差し引いて、黒マントに与えるダメージは合計で3である。

「おっしゃあ丁度だ!そして全回復!くらえ、エナジードレイン!」

 レッドが投げたマジック・ボールは黒マントに直撃すると緑色に発光し、その光はレッドの身体を包み込んだ。

『ぐはぁ!馬鹿な、この私が負けるとは・・・』

 黒マントはその場に倒れるとその身体は黒い瘴気となって跡形もなく消えさった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

魔攻機装

野良ねこ
ファンタジー
「腕輪を寄越すのが嫌ならお前、俺のモノになれ」  前触れもなく現れたのは世界を混沌へと導く黒き魔攻機装。それに呼応するかのように国を追われた世界的大国であるリヒテンベルグ帝国第一皇子レーンは、ディザストロ破壊を目指す青年ルイスと共に世界を股にかけた逃避行へ旅立つこととなる。  素人同然のルイスは厄災を止めることができるのか。はたまたレーンは旅の果てにどこへ向かうというのか。  各地に散らばる運命の糸を絡め取りながら世界を巡る冒険譚はまだ、始まったばかり。 ※BL要素はありません  

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クトゥルフ神話TRPG オリジナルシナリオ制作

柳川歩城
ファンタジー
クトゥルフ神話TRPG のオリジナルシナリオを作るところです。人神など他の小説(もちろん自分で作ったもの)にも関わってくるので、小説の投稿具合を見て公開します。 シナリオが公開された場合矢印の先に一週間顔文字を置きます。  →(o´・ω・`o)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...