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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国
砂緒さん頼みで出撃! ..
しおりを挟む「はぁはぁ、そ、そそれがっ」
使者は興奮気味だった。
「だから落ち着いて言えって!」
ドバシッ!
衣図ライグはダメージを与え無い程度に巨大な掌で突っ込む。
「どうした訳かあっちの軍服を着たガキが弾にバチバチ当たりながら魔戦車の上にピョンっと飛び乗ると、何故か魔戦車の天井がグシャッてへこんで行くんでさぁ。それで後ろの歩兵部隊も混乱し始めてるんでさぁ」
物見は興奮冷めやらぬという感じで話した。
「なんだあ魔法みたいな物か?」
「砂緒だ!! 砂緒生きてる、凄い凄いよ」
突然フルエレの元気が戻り両手を組んで空を仰ぎ大声で喜ぶと何事かと皆が見た。しかし彼はゴーレムだから当然……等とは皆には言えなかった。
「衣図さん先程その子の言ったとおりだ。ラフの話によると北にも中規模の部隊が潜んで居るし南西の林にも伏兵が確かに存在する様だな」
長く青い髪を片側ポニーテールに結んだ長身でスタイルの良い少し褐色の美女が出て来て報告する。
(こんな人も居るんだー)
きっとラフとは先程から慌ただしく内外の伝令を伝えている、スリかコソ泥にしか見えないヒョロ細い男の事に違いない。
「謎の化け物が出現して敵主力が混乱しているか……実に面白い決め時だな」
衣図ライグがこの男にしては珍しく顎に指を当て小声で呟いた。
(化け物て……失礼ね!)
雪乃フルエレは彼をジトッとした目で見た。
「嬢ちゃん、アンタに付いて来たあのでっかい馬俺にくれないかなあ? 前の馬が弾に当たって死んじまってよ」
彼女は突然語り掛けられて肩がビクッと跳ね上がった。
(あの馬私の物と思われてる!?)
「あ、この子は売ろうと思って、じ実家から連れて来た大切な子なんです! どうーどうー」
砂緒が元気に生きていて敵を撃破していると判った途端、突然強気になって来たフルエレは巨馬に駆け寄って細い手を伸ばしその太い首を撫ぜた。
「おおっ安心しろ生きて帰ったら高値で買い取るからよ」
衣図ライグは大男の不気味なウインクを披露する。そして続けてその場にいる全員に落ち着いて語り掛けた。
「みんな聞け、謎の少年のお陰で憂慮していた魔戦車隊は無力化されつつある。さらにそのお陰で魔戦車隊の後ろに控えている主力歩兵部隊は、皆浮足立ち士気が下がりつつあるそうだぞ」
フルエレ含めそこにいる全員が固唾を飲んで聞いている。
「このままこの場にいてもジリ貧になるだけだった。だから今起こっている奇跡に乗じて全員出撃する!」
何名かの者達が無言でガッツポーズをした。
「まず北の部隊を一気に叩く!! そしてそのままの勢いで突っ切って、混乱する魔戦車隊と後衛部隊を分断する。さらにそのまま突っ切って、残していた部隊と林から出て来た伏兵部隊を挟撃する! とにかく敵を洗いざらい叩く! 砂緒とか言う化け物が居る限り勝てる、みんな付いてくるか!」
「イエーーーー!!!」
「うおーーっ!」
男達が興奮して雄たけびを上げ、ヒラリと今手に入れたばかりの巨馬に跨る衣図ライグ。
「無茶だわ……」
「全部砂緒さんとやら頼みだ。ダメなら折を見て逃げろよ」
「そうね、そうさせてもらうわ、でも無理はしないで」
フルエレは目を閉じて砂緒の無事を祈った。
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