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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
父と子と弟とサッワ…… ①
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『とりゃあああああっ!』
大猫乃主はル・ツー漆黒ノ天を走らせながら、背中からクロアゲハの羽の様な黒い光を発した。そしてジャンプしつつ、敵のカガチの首を飛び跳ねながら登って行く。
『まずは一つ!!』
ズバアアアアー
ル・ツーは手刀で千岐大蛇の首を一つ叩き落とした。
『マジカ!? あんな小さい身体でカガチの首を落としよった、よしフゥー行け! 負けるな!!』
その様子を見ていたセレネがフゥーをけし掛けた。小さい身体と言っても二十五Nメートルあるのだが……
『貴方に言われ無くとも、行きます! 魔力のサポートお願いしますよ』
『ナヌ?』
等と言いながらフゥーはヌッ様をドタドタ走らせ、バキバキと色々な物を踏み潰しながら進んで行く。今のフゥーはヌッ様を唯一生成して動かす事が出来る為に、以前よりも遥かに自信に満ち溢れていた。
(うっ……何だこの背中に圧し掛かる重さは!? フルエレさん凄いなやっぱり……)
一瞬走り出しただけでセレネには大きな負担が圧し掛かった。
「セレネちゃん大丈夫かい?」
その様子を見て紅蓮が彼女の肩に手を掛けたのをパシッと払いのけた。
「お前は女好きゾンビか? 何回も何回も。それよかあのパピヨン仮面の子はいいんかい? あのフルエレさんを小さくした……様な……子?」
「え?」
「え」
セレネはとっさに本能的に出た言葉で自分で言葉に詰まった。美柑が雪乃フルエレ女王の妹である依世であると知っている紅蓮も、一瞬ドキッとしたが直ぐに誤魔化した。
「し、しんどくなったら言ってね」
(話繋がってないぞコラー)
しかし彼女もそれ以上は追及しなかった。
ビシッガスッ!!
二人の会話中もフゥーは次々にカガチの首を爆発力のあるパンチとキックで落としていく。
ズバーーーン! ドガーーーン!!
『とりゃあああああっ!! てやああああああ!!!』
その様子を見ていた桃伝説は、チマタノカガチが順調に仮宮殿に乗り上げる事を狙って、魔ローダースキル絶対服従を掛けるタイミングを見計らっていた。
『シューネ、どのタイミングで絶対服従を掛ければ良いのだ?』
『今順調にカガチが仮宮殿に一直線で向かっているなら、今は何もする必要が無い。むしろ仮宮殿から離れたり、逸れたりしたら即座に掛け連れ戻すのだ』
『それは分かったが、早くしてくれ、こっちは六人でギッチギチなのだ……』
『其方の都合など知るか、用が無いなら話し掛けるな! その六人で会話しておけ!!』
プチュ
シューネは冷たい事を言い放って通信を一旦切った。
「……仕方ないですね、何かお話ししますか?」
狭い操縦席にぎっちぎちの男達が夜叛モズに尋ねた。
「話す訳なかろうがっ余計息苦しいわ」
モズは仕方なく魔法モニターで戦闘の様子を見つめた。
『てやああああ!! そりゃああっ!!』
体中から黒い光を発しながら、ル・ツーが凄まじい勢いでカガチの首を落としていく。
「凄い、おじさん凄いよ! なんかおじさん一人で勝てちゃいそうだよっ!」
「ねえねえ君会った事あるー?」
これまで老いた妻と漁村で質素な生活を送っていた大猫乃主は、突如ピチピチした若い娘二人から挟まれて戸惑っていたが、見ない様にして耐えて必死に戦い続けた。砂緒の攻撃が少しでも有利になる様にとチマタノカガチにひたすらダメージを与え続けた。
ビシャッビチャッ!!
素早い動きで順調にカガチの首を落とし続けるル・ツーの魔法モニター、つまり顔の部分に突然赤い液体が降り注いで視界が遮られた。
「な、何よこれ!?」
「赤いよ……カガチの緑の血じゃないね」
「これは……これまで飲み込まれた村人の消化し切れてない血液ではないかのう」
「な、何よそれ、いやあああ!?」
メランは余りの事に目を覆った。しかし大猫乃主はウォッシャーで血液を洗い流して構わず戦いを再開する。この事は爆発力を持った攻撃を続けるフゥー達には無縁な出来事であった。
『うりゃああああっ!』
ドカーーーン!!
そのヌッ様も負けじと次々にチマタノカガチの首を吹き飛ばし続ける。
ヒヨンッカカッ!! カッ!
が、突然カガチの瞳が光り、ル・ツーとヌッ様同時に攻撃を受けたが、素早く兎幸が両機を魔ローンの盾でカバーした。
キイーーーーン!!
跳ね返された光線が夜空のあさってな方向に飛んで行く。
『うおおおおお、しんどい事はしんどいケド、負ける気がしなーーい!!』
セレネが拳を突き出して雄たけびを上げた。彼女としては自分自身が戦いたくてウズウズして仕方が無かった。
『見て』
いつも冷静な紅蓮が指を差した。
『あともう少しでカガチが仮宮殿に乗り上げるぞ!?』
『よし、フゥーくんシューネに伝えるんだ』
父の猛攻撃を無言で見ていた猫弐矢が順調な作戦の推移を見て、フゥーに言った。
『シューネ様っカガチがもう少しで仮宮殿の上空に……』
フゥーは現状を魔戦車の貴城乃シューネに伝えた。
『よし、一旦攻撃を中止するんだ、それでカガチが仮宮殿を喰うかどうか見てみよう』
『了解です!』
『うむ分かった』
その言葉でル・ツー漆黒ノ天とヌッ様は仮宮殿を挟んで後ろに後退した。もしル・ツーにもカガチを誘引する何かがあるなら、そのまま仮宮殿に乗り上げるはずだ。
ガガガガガガガ……
その思惑通りカガチは巨大な座礁船の様に、ふわふわ浮いていた巨体は石作りの仮宮殿に乗り上げ、何本もある首を下に向けて城壁や屋根をついばみ食べ始めた。
『見境無しかよコイツ』
『美味しいのでしょうか?』
『何でも食べて来たからね、城くらい余裕で食べるのだろう……』
ヌッ様チームは割と冷静に見ていたが、ル・ツー組は心中穏やかでは無かった。
「おえっこんな感じで村人達を食べて来たのね……見てらんない」
「メラン大丈夫?」
兎幸はいつも明るいメランが大量の血液を見てから表情が曇った事を心配した。
「やはり兎幸さんは優しいな……」
「え?」
『い、いや何でも無い。よしモズ殿よ、絶対服従をスタンバイさせよ、それと猫弐矢よ天空のフルエレ女王と砂緒殿に連絡じゃ! 作戦は全て上手く行っておるとな』
大猫乃主は最後の仕上げ、砂緒に突入要請という決断を息子の猫弐矢に託した。
『ほほほ、では行きますぞっ六人合体絶対服従!!!』
ピキュイーーーーン!!
モズが桃伝説の中でスキルを発動すると、カガチの様子が微妙に変化して掛かった事が伺いしれた。
「モズ様六人合体とか誤解される表現はお止め下さい」
「何を誤解される?」
妙な姿勢で操縦桿を握る兵士が呟いたが、モズは無視した。
『よし……では、フゥーくん宇宙とやらの砂緒くんに再び通信を掛けてくれ』
『はい!』
笑顔でフゥーは天空の二人にチャンネルを繋いだ。
『きゃーーーーーーっ!?』
『何だ!?』
ドシャッッ!!
通信を掛けようかとした直後、ヌッ様の後ろで突然ル・ツー漆黒ノ天が不意打ちで後ろから何者かの攻撃を受けて、地面に激突した。
『……何だこの機体は!?』
『皆警戒して、変な機体が飛んで来たよ!』
猫弐矢と紅蓮が叫んだが、一番動体視力が良い紅蓮が真っ先に謎の機体を捉えた。
『蛇輪!? 何で蛇輪が居るんだ??』
セレネはヌッ様の中で立ち上がった。
『違うよ、何だこの蛇輪の偽物みたいなの!?』
蛇輪を見慣れたセレネと、起き上がったル・ツー内のメランがほぼ同時に同じ様な事を叫んだ。それは一番ややこしい時にこの場に到着した、スピネルこと猫名とサッワが搭乗する、ル・スリー白鳥號であった……
大猫乃主はル・ツー漆黒ノ天を走らせながら、背中からクロアゲハの羽の様な黒い光を発した。そしてジャンプしつつ、敵のカガチの首を飛び跳ねながら登って行く。
『まずは一つ!!』
ズバアアアアー
ル・ツーは手刀で千岐大蛇の首を一つ叩き落とした。
『マジカ!? あんな小さい身体でカガチの首を落としよった、よしフゥー行け! 負けるな!!』
その様子を見ていたセレネがフゥーをけし掛けた。小さい身体と言っても二十五Nメートルあるのだが……
『貴方に言われ無くとも、行きます! 魔力のサポートお願いしますよ』
『ナヌ?』
等と言いながらフゥーはヌッ様をドタドタ走らせ、バキバキと色々な物を踏み潰しながら進んで行く。今のフゥーはヌッ様を唯一生成して動かす事が出来る為に、以前よりも遥かに自信に満ち溢れていた。
(うっ……何だこの背中に圧し掛かる重さは!? フルエレさん凄いなやっぱり……)
一瞬走り出しただけでセレネには大きな負担が圧し掛かった。
「セレネちゃん大丈夫かい?」
その様子を見て紅蓮が彼女の肩に手を掛けたのをパシッと払いのけた。
「お前は女好きゾンビか? 何回も何回も。それよかあのパピヨン仮面の子はいいんかい? あのフルエレさんを小さくした……様な……子?」
「え?」
「え」
セレネはとっさに本能的に出た言葉で自分で言葉に詰まった。美柑が雪乃フルエレ女王の妹である依世であると知っている紅蓮も、一瞬ドキッとしたが直ぐに誤魔化した。
「し、しんどくなったら言ってね」
(話繋がってないぞコラー)
しかし彼女もそれ以上は追及しなかった。
ビシッガスッ!!
二人の会話中もフゥーは次々にカガチの首を爆発力のあるパンチとキックで落としていく。
ズバーーーン! ドガーーーン!!
『とりゃあああああっ!! てやああああああ!!!』
その様子を見ていた桃伝説は、チマタノカガチが順調に仮宮殿に乗り上げる事を狙って、魔ローダースキル絶対服従を掛けるタイミングを見計らっていた。
『シューネ、どのタイミングで絶対服従を掛ければ良いのだ?』
『今順調にカガチが仮宮殿に一直線で向かっているなら、今は何もする必要が無い。むしろ仮宮殿から離れたり、逸れたりしたら即座に掛け連れ戻すのだ』
『それは分かったが、早くしてくれ、こっちは六人でギッチギチなのだ……』
『其方の都合など知るか、用が無いなら話し掛けるな! その六人で会話しておけ!!』
プチュ
シューネは冷たい事を言い放って通信を一旦切った。
「……仕方ないですね、何かお話ししますか?」
狭い操縦席にぎっちぎちの男達が夜叛モズに尋ねた。
「話す訳なかろうがっ余計息苦しいわ」
モズは仕方なく魔法モニターで戦闘の様子を見つめた。
『てやああああ!! そりゃああっ!!』
体中から黒い光を発しながら、ル・ツーが凄まじい勢いでカガチの首を落としていく。
「凄い、おじさん凄いよ! なんかおじさん一人で勝てちゃいそうだよっ!」
「ねえねえ君会った事あるー?」
これまで老いた妻と漁村で質素な生活を送っていた大猫乃主は、突如ピチピチした若い娘二人から挟まれて戸惑っていたが、見ない様にして耐えて必死に戦い続けた。砂緒の攻撃が少しでも有利になる様にとチマタノカガチにひたすらダメージを与え続けた。
ビシャッビチャッ!!
素早い動きで順調にカガチの首を落とし続けるル・ツーの魔法モニター、つまり顔の部分に突然赤い液体が降り注いで視界が遮られた。
「な、何よこれ!?」
「赤いよ……カガチの緑の血じゃないね」
「これは……これまで飲み込まれた村人の消化し切れてない血液ではないかのう」
「な、何よそれ、いやあああ!?」
メランは余りの事に目を覆った。しかし大猫乃主はウォッシャーで血液を洗い流して構わず戦いを再開する。この事は爆発力を持った攻撃を続けるフゥー達には無縁な出来事であった。
『うりゃああああっ!』
ドカーーーン!!
そのヌッ様も負けじと次々にチマタノカガチの首を吹き飛ばし続ける。
ヒヨンッカカッ!! カッ!
が、突然カガチの瞳が光り、ル・ツーとヌッ様同時に攻撃を受けたが、素早く兎幸が両機を魔ローンの盾でカバーした。
キイーーーーン!!
跳ね返された光線が夜空のあさってな方向に飛んで行く。
『うおおおおお、しんどい事はしんどいケド、負ける気がしなーーい!!』
セレネが拳を突き出して雄たけびを上げた。彼女としては自分自身が戦いたくてウズウズして仕方が無かった。
『見て』
いつも冷静な紅蓮が指を差した。
『あともう少しでカガチが仮宮殿に乗り上げるぞ!?』
『よし、フゥーくんシューネに伝えるんだ』
父の猛攻撃を無言で見ていた猫弐矢が順調な作戦の推移を見て、フゥーに言った。
『シューネ様っカガチがもう少しで仮宮殿の上空に……』
フゥーは現状を魔戦車の貴城乃シューネに伝えた。
『よし、一旦攻撃を中止するんだ、それでカガチが仮宮殿を喰うかどうか見てみよう』
『了解です!』
『うむ分かった』
その言葉でル・ツー漆黒ノ天とヌッ様は仮宮殿を挟んで後ろに後退した。もしル・ツーにもカガチを誘引する何かがあるなら、そのまま仮宮殿に乗り上げるはずだ。
ガガガガガガガ……
その思惑通りカガチは巨大な座礁船の様に、ふわふわ浮いていた巨体は石作りの仮宮殿に乗り上げ、何本もある首を下に向けて城壁や屋根をついばみ食べ始めた。
『見境無しかよコイツ』
『美味しいのでしょうか?』
『何でも食べて来たからね、城くらい余裕で食べるのだろう……』
ヌッ様チームは割と冷静に見ていたが、ル・ツー組は心中穏やかでは無かった。
「おえっこんな感じで村人達を食べて来たのね……見てらんない」
「メラン大丈夫?」
兎幸はいつも明るいメランが大量の血液を見てから表情が曇った事を心配した。
「やはり兎幸さんは優しいな……」
「え?」
『い、いや何でも無い。よしモズ殿よ、絶対服従をスタンバイさせよ、それと猫弐矢よ天空のフルエレ女王と砂緒殿に連絡じゃ! 作戦は全て上手く行っておるとな』
大猫乃主は最後の仕上げ、砂緒に突入要請という決断を息子の猫弐矢に託した。
『ほほほ、では行きますぞっ六人合体絶対服従!!!』
ピキュイーーーーン!!
モズが桃伝説の中でスキルを発動すると、カガチの様子が微妙に変化して掛かった事が伺いしれた。
「モズ様六人合体とか誤解される表現はお止め下さい」
「何を誤解される?」
妙な姿勢で操縦桿を握る兵士が呟いたが、モズは無視した。
『よし……では、フゥーくん宇宙とやらの砂緒くんに再び通信を掛けてくれ』
『はい!』
笑顔でフゥーは天空の二人にチャンネルを繋いだ。
『きゃーーーーーーっ!?』
『何だ!?』
ドシャッッ!!
通信を掛けようかとした直後、ヌッ様の後ろで突然ル・ツー漆黒ノ天が不意打ちで後ろから何者かの攻撃を受けて、地面に激突した。
『……何だこの機体は!?』
『皆警戒して、変な機体が飛んで来たよ!』
猫弐矢と紅蓮が叫んだが、一番動体視力が良い紅蓮が真っ先に謎の機体を捉えた。
『蛇輪!? 何で蛇輪が居るんだ??』
セレネはヌッ様の中で立ち上がった。
『違うよ、何だこの蛇輪の偽物みたいなの!?』
蛇輪を見慣れたセレネと、起き上がったル・ツー内のメランがほぼ同時に同じ様な事を叫んだ。それは一番ややこしい時にこの場に到着した、スピネルこと猫名とサッワが搭乗する、ル・スリー白鳥號であった……
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