上 下
543 / 588
Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

スナコちゃん再々降臨!! ⑫ スナコさん葛藤の出撃

しおりを挟む

 ―仮宮殿、仮魔ローダー駐機場。

「本当に目隠して乗ってたのかよ」

 セレネが蛇輪へびりんのハッチを開けると貴城乃たかぎのシューネがゾンビみたいに両手を前に突き出してフラフラと出て来た。

「もう目隠しを外して良いかね? 気密エラーは無かった様だが」
「そのまま外に出ると下に落ちんぞ。はずしゃー良いだろうが」

 セレネに言われてシューネはしゅるっと目隠しを外した。目の前に居たセレネと目が合ってお互いドキッとして直ぐに視線を外す。普段乱暴でシューネ自身も暴力女として嫌悪していたセレネだが、実際には黙っていればシューネもドキッとする程の髪の長い色白美少女であった……

「貴様ッ! セレネと何をやっている!!」
「あらま珍しい組み合わせね」

 駐機場の下からやって来た、スナコが地声で怒鳴って走って来る。

「ハハハ、ようやくお目覚めかね? 君にぞんざいな扱いを受けている姫に紳士的に接していただけだが?」
「お前、砂緒スナコが来たら急に態度が変わった!?」

 言いながらセレネはシューネからもっと離れた。

「セレネさんもセレネさんです、何をやってたんですか?」
「殴るぞ! お前が寝てる間に蛇輪の修理とテストしてたんだろーがっ」
「夫婦喧嘩は犬も食わないな。では私は此処で退散しよう」

 言いながらシューネはタラップを降りて、スナコを避けて駐機場から速足で逃げて行った。

「何だアイツは……セレネさん低い胸は大丈夫だと思いますが、触られたり変な事されてませんか!?」
「低い胸が好きな変態も多いわ」

 セレネは腕を組んで砂緒を見た。

「……セレネさん話を聞いて下さい。皆して落下する私に重い鎧を着させて……酷いと思いませんか? 人の事を爆弾かあ〇ま山荘事件のハンマーか何かみたいに」
「ん? よーわからんがまーその通りだから仕方ないんじゃねー?」

 砂緒の話は止まった。

「私にも心があるって分かっていますか?」
「ど、どーした? いつものお前らしくないな……」
「何となく最終決戦が近付いて来ると、人はおセンチになったりそこいらを飛び跳ねる蛙ですら愛おしく感じる物です……」

 砂緒は三白眼の小さな瞳をキラキラさせて遠くを眺めて言った。

「ヘェーそういうモンかねえ」
「ええ、今でも蛙やカブトムシやセレネさんなど、生きている全てが愛おしいのです」
「蛙と一緒にすんなや、チョイスが変だろーが」
「ふぅ、兎に角澄み切った瞳が遠くの景色を綺麗に見せるのです」
「それ死刑囚の心境のヤツやろ?」

 また会話が止まった。しかし直ぐに砂緒はセレネの両肩をガバッと掴んだ。

「セレネさんっ!」
「な、何だよ?」
「私は今むしょーに誰かと愛し合いたいのです……」
「恥ずかし過ぎるだろが」

 二人を目を細めて渋い顔で見ていたメランが気を利かせた。

「じゃ、私達はこれで、行こ兎幸うさこちゃん」
「え、なんでー?」
「いいからっ」

 兎幸の腕を強引に引っ張って、二人はそそくさと去って行った。

「二人が去った今端的に言います。出撃までの短時間でささっと子作りしませんか?」

 セレネはコケた。

(スナコのままでか!? 倒錯してんな……)
「短時間でささっと子作りなどしとーないわっ本能だけで生きてるのかよ?? ……い、今までそんな機会いっぱいあったのに、全部お前がフイにして来たんだろーが。この腰抜けめが」

 セレネは多少恨みが籠った目で見た。

「面目ない……今何故か全ての物事がキラキラして見えるのです、何故でしょう?」
「だからその死刑囚の心境やめい!」

 しかし砂緒スナコは何時になく思いつめた表情になった。

「……突然雪乃フルエレ女王の義弟おとうとにされてしまって、チマタノカガチなどとも戦わねばならなくなってしまった……このモヤモヤな気持ち、セレネさんに分かりますかっ!?」
「分からんわ……」

 だがそのままセレネは恥ずかしそうな顔をしてモジモジしながら少し沈黙した後、ようやく口を開いた。

「じゃあキスならいいよ……」
「お、よ、良いのでしょうか?」
「恥ずかしいからそれ以上言うな」

 と、言いつつセレネは目を閉じた。何だかんだ言いながら凄く久しぶりな二人のキスであった……

 バーーーンッ!!
 だが砂緒がおずおずとセレネに顔を近付けた直後、一階の鉄扉が勢い良く開き反射的に砂緒とセレネはピョーンと飛んで、離れてお互いあらぬ方向を見つめた。

「スナコちゃん! 此処にいたのね? もう発射準備よ!! ……あらセレネも居たのね」

 突然やって来たのは雪乃フルエレ女王であった。

「フルエレ……」
(フルエレさん絶対にワザとやってるでしょう?)

 コツコツコツッ
 フルエレは躊躇なく物凄い勢いで階段を上がって来た。

「あら、何かしてたの? ごめんなさい……でも時間が無いわ、もう行かなきゃ」
「え、ええまあ……行きますよ」

 砂緒は不満を押し込んでフルエレの為に行く事にした。セレネもそんな彼を見て同意したのだった。

「そうだな」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...