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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

スナコちゃん再々降臨!! ⑩ 第一次衛星爆撃 Ⅰ

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「貴方もその様に考えておられたか、実は私も少しその様に感じておりました」

 いち早く貴城乃たかぎのシューネも大猫乃主おおねこのぬしの発言に賛同した。

「いや、実は僕もそんな風な感じがしていたよ」

 すぐに紅蓮アルフォードも同意した。

「後を追う訳では無いのですが、私もなんだかそんな風に思っていました……」
(王様……)

 こそっと前王様に接近したフゥーも猫弐矢ねこにゃの影で賛同した。

「あ、じゃあ私もーーー」

 何だか良く分からないが消えた蛇輪へびりんの魂から事情を聴いているハズのメランも賛同してみた。そして何となく彼女は雪乃フルエレ女王の顔を見てみた。

「? じゃじゃあ私もー」
「待てえええええええええええ!! フルエレさん自ら余計な事言わないで!?」

 フルエレまでが賛同仕掛けて慌ててセレネとスナコが走って来た。

「フルエレ滅多な事で不正確な情報に賛同しないで下さい。千岐大蛇ちまたのかがちを誘引しているのはル・ツーとかいうザコメカで確定しています」
「どうしたの藪から棒にノコノコ戻って来てスナコちゃん……ホワイトボード忘れてるわよ?」

 突然血相を変えて戻って来たセレネとスナコに、皆はこれは蛇輪に何かあるなと感じた……

「それよか、王様とか言ってわざわざ大袈裟に戻って来た割には何か伝説の強力武器とか無いのかよ?」

 セレネは必死に話題を換えた。

「むぅ申し訳ない……その様な武器があれば良いが、その方面では手助け出来無さそうじゃ」
『全くその通りですよ。ワシはまだ此奴をクラウディアの王とは認めておりませんぞ』
「スナコちゃん此奴とか言っちゃダメ」
「王様と認めない処か、引退して子供が後継いでるやないか」

 メランが肩をすぼめて首を振った。

 キュキュッ
『はぁ~~~そもそもこの人が神聖連邦帝国にあっさり事実上降参したのが全ての元凶だったんじゃ』
「やめろーーーーーっ!! 歯ぁ食いしばりゃああ!!」

 パグシッ
 突然フルエレがスナコをグーで殴った……

『うぷわっ何するですか!?』

 スナコは血をだらだら流しながら、いつにないフルエレの暴力に驚いた。

「お願い、それ以上醜態を晒さないで頂戴。仮にも猫乃主様は前王様なのよ」
『フルエレ、私は全てフルエレの為にやっているのですよ!?』
(もしチマタノカガチが蛇輪から生まれたなんてバレたら……)

 スナコは信じられないという顔で見たが、フルエレの表情は厳しかった。

「スナコちゃん、何とか話題は転換出来た。今はそれで良しとしよう」

 砂緒の気持ちを充分理解しているセレネが小声で囁き、スナコは仕方なく頷いた。

「所で蛇輪かル・ツーがカガチを誘引しているかもしれないという話だが……」

 いきなりシューネが話題を元に戻して二人はコケた。

「おうテメー廊下でえや?」
「は?」

 セレネが凄むと、その時存在を忘れ去られていたライラが綺麗に真っ直ぐ手を上げた。

「あら、ライラ居たのね? 何なの言ってごらんなさい」
「有難う御座います。紅蓮殿に撒かれた後に避難民たちの世話をしておりました」
「偉いじゃない何なの?」

 全ての注目がライラに集まった。彼女としてはスナコとセレネを助けた訳だった。

「スナコさま、つまり砂緒様にはもう一つ必殺技が御座いませんでしたか?」
『……そんなんありましたっけ?』

 当の本人がいまいちピンと来ていなくてライラはコケた。

「あーーーライラと同じくあたしも見て無かったけど、あったなあアレか」
『え、そんなんありましたっけ? 最近遊んでばかりで……月の矛ですか??』
「あれはそんな強度無いと思うわ」

 その時フルエレがポンと手を叩いた。

「あーーーーー思い出したわよ。アレね、ル・ツーが今みたいなザコキャラじゃなくて、強敵として出て来た時に使った、砂緒の宇宙攻撃ね」
『あ~~~~アレですかああ……あのついでに月に行った時にやった、衛星軌道上からの落下攻撃』

 が、思い出したが良いが、二人は少し赤面して微妙な空気になった。今は何となく家族同然になってしまったが、まだ二人が初々しかった頃に蛇輪の中で抱き合ったりキスしたりを、思い出したのだった。何となく今では二人は一体どういう関係性なのか良く分からなくなって来ていた。

「皆して私の黒い稲妻Ⅱをザコザコと……フルエレさんまで……」
「そのウチューというのは何なのだい? や、やらしい事なのかな??」

 美柑ミカがいない事で好奇心のリミッターが外れた紅蓮が真顔で問うた。

「やはり変態であったか。宇宙というのはこの地上の空のさらに上にある世界らしい」
「セレネちゃんは行ったのかい?」
「セレネは行っていないわ。私と砂緒の二人で行ったのよ。その間セレネは一人でドラゴン百匹程倒していたのよ」
「あたしゃ化け物かい?」
「話って膨らむものねえ」

 メランが言うと、再び大猫乃主が天井をまじまじと見上げて言った。

「何と……この空の上にそんな天上界が如き世界が本当に存在するとは……」
兎幸うさこも行ったよ! この二人に月に放置されて死にかけたの!!」

 兎幸が無邪気な顔で言ったが、皆半信半疑であった。

「で、その衛星爆撃か攻撃とやらは威力は凄いのですかな?」
『貴様に聞かれる筋合いは無い』

 邪心無く聞いただけのシューネにスナコは食って掛かって、慌ててメランに止められた。

「いや……実はワシも戦いを見ていて感じたのじゃが、カガチには紅蓮殿の剣やセレネ殿の魔法剣などの物理攻撃は威力を発揮し、砂緒殿の雷や魔戦車の魔法攻撃は跳ね返しておる気がする。恐らくその天空からの砂緒殿の物理的重量落下攻撃も威力を発揮するのではないかと思うが……」
『うむ、では早速飛びましょうかフルエレ!』

 大猫乃主の言葉に早速スナコは表に留めてある蛇輪に乗り込むため外に向かおうとした。

「ちょっと待って下さいスナコ様、その攻撃は本当にちゃんと当たるのでしょうか?」
「ライラちゃんの言う通りだね。どんな強い攻撃も当たらなければ意味が無い」
『今何時ですか?』

 スナコは有能メイドに聞いた。

「はい、今は午後の三時ですね」
「なんやかんややってる間にもうそんな時間かよ」
『微妙な時間ですねえ』
「あたしゃ今直ぐに飛んでカガチが寝てる間に確実に当てる方が良いと思うぞ」

 セレネは直ぐにリベンジしたい気分だった。

「いや駄目でしょうな」
「はぁ? 何でだ??」

 いきなり否定的な事を言うシューネにセレネとスナコが睨みつけた。

「君達の蛇輪とかは胸の装甲が破壊されているな? あの状態ではウチューとやらに飛び出ると危険なのではないか? まあ良く分からない世界ではあるが……」

 いきなり的確な事を言われて、スナコセレネはたじろいだ。

「そうなんか?」
『ええ、そうでした。宇宙空間には空気が無くて迂闊に普通の人が出ると血が沸騰するとかしないとか。私は硬化すれば良いですがフルエレは……』
「私、我慢するわよ!」
「我慢するとか言う問題じゃないでしょ」
「それならば、我がGSX-R25の胸部装甲を供出しましょう。それで大急ぎで我が軍の整備兵達に修理させましょう」

 渡りに船の提案だが、スナコセレネはムスッとして黙り込んだ。

「有難うシューネさん! 私達の蛇輪の修理お願いするわ!!」
「いえ、女王陛下のお役に立てれば……セレネ殿、修理した胸部装甲が変形に干渉しないかテストを行って頂きたい」
「何であたしが」

 セレネは横を向いた。

「じゃあ私がっ!」
『いや、フルエレは天空に飛翔する為に休息を取ってもらいます』

 フルエレが手を上げたが、スナコに制止された。

「そ、そう? じゃあセレネお願いね」
「…………」

 セレネは甚だ不満であった。

「ではこうしよう、なんやかんやで皆休息が取れておらん。蛇輪の修理を急ぎ、日没でカガチが活動を再開するまでに少しでも休息を取ろう。そして日没と共に地上班と、砂緒殿とフルエレ殿の二手に分け、地上班は砂緒殿の落下ポイントにカガチを誘引して固定する事としよう。基本はピンク魔呂の不思議な固定スキルを使い、もしル・ツーにも誘引する力があればそれも使っての話だ」

 大猫乃主に反対する者は居なかった。作戦はそれで決まった。
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