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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
スナコちゃん再々降臨!! ⑨ 大猫乃主と貴城乃シューネ
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「おおっおお……」
「おおよ……」
意気揚々とスナコとセレネが突き進むと、エントランスや廊下など仮宮殿のあらゆる場所で希望を失いうな垂れる人々が、立ち上がって目を潤ませて手を組んで頭を下げて歓迎した。
キュキュッ
『セレネさん見て下さい、人々がOH~~とか言いながら我々にひれ伏しています。よっぽど私の雷攻撃が人々を心胆寒からしめたのでありましょうなァ』
「ああっそうだろうな! 残念ながら千岐大蛇は倒せなんだが、クラウディアの人々には強烈なインパクトを与えてしまった様だよ……」
砂緒とセレネは人々の賞賛が全て自分達への物だとすっかり思い込んでいる。
「セレネさん砂緒さん、ちょっと落ち着いてくだ……」
その二人を落ち着かせようとメランが話し掛けた瞬間だった、悪フルエレがにこっと笑いながら彼女を止めた。
「もう少し泳がせましょ、ね?」
「ふフルエレさん、貴方……」
しかしその間もまるで映画十戒の様に、砂緒達が進めば進む程人々の賞賛の波は左右に広がって行く。
『よ~し、このまま司令部に突き進んで民が我らを称賛する様子を見せ付けましょう!』
「もしかしたらこのままクラウディアを支配出来るんじゃないか?」
『くっくっくっありえますね。二人してこのクラウディアに新婚旅行に来てから幾星霜、遂に夜叉夫妻としてこの地に君臨する日が来ようとは』
「な、何勝手に新婚旅行とか夫妻とか言ってるんだよ、フルエレさんの前だゾ、恥ずかしいだろーが」
セレネは軽く頬を赤らめてぷいっと横を向いた。
「せ、セレネさん、よ、良く見て」
「ダメよ」
「ヒッ」
我慢し切れずに再び止めようとするメランを、さらにフルエレがまた止めた。
ダーーーンッ!
『たのも~~、どうしたのかね? ん、司令部の連中は逃げてしまったのかね?』
遂にスナコが思い切り司令部のドアを叩き開けると、その中に居るハズの猫弐矢達はおらずもぬけの殻となっていた。
「おや~~全員逃げてしまったのかな、くくく」
等とスナコに合わせてセレネが高笑いを始めようかという直後。
「ち、父上!! とうとう此処においで下さったのですね」
「王様……この方が王様なのですか!?」
「王よ、やはり貴方は民をお見捨てにならなかった!」
スナコセレネの後ろで、部屋の外から人々の感激する声が響いた。二人はゆっくりと振り返り部屋の外を見た……
「うむ……其方に後事を託して以降は、決してこの仮宮殿には来ぬと、たとえ神聖連邦帝国の約束した高層神殿がなかなか建てられぬとも、此処には一歩たりとて近寄らぬと決めておったのであるが……雪乃フルエレ女王陛下に強く呼び止められてな……考えを変え一度戻る事とした」
人々が何重もの円になって取り囲む中心に、涙を流し跪く猫弐矢の肩と頭に優しく手を置く漁師の老人が居た。
『えっ何これ?』
「漁師マニアか? 漁師が珍しいのか??」
スナコとセレネが怪訝な顔でその様子を見ていると、後ろから腕を組んだ貴城乃シューネが話し掛けて来た。
「あの方が、瑠璃ィキャナリー様がこの国に開国を迫った時に後事を全て猫弐矢と猫名兄弟に託し、姿を隠した大猫乃主殿こと前代のクラウディア王その人だな。ついでにカガチは残念であったな」
「この方が……猫弐矢さまのお父様、そしてクラウディアの真の王様、ああぁ」
シューネの横でこの地に来たばかりのフゥーまでもが涙をボロボロ流してその様子を眺めている。
「……セレネ、スナコちゃん、貴方達はよく頑張ったわ、決してカガチに負けた事を悔やまないで。勝つ事より挑戦する事の方が大事なの! だから1Nミリも恥ずかしくないの。きっと人々は王様を称賛する振りをして、実はセレネの事も称賛してたのよ! だからセレネもその低い胸を張って強く生きて前に進んで欲しいの、いいわね? 勘違いした事は全然恥ずかしく無いからねっ」
何故かフルエレは半笑いでセレネの肩に手を置いた。
「フルエレさん傷口に塩を塗り込むみたいな……」
メランは肩をすぼめ首を振った。
カーーーーーッ
人々の賞賛が自分へでは無く、後ろから歩いて来た大猫乃主前王への物であったと気付き、一気に火が吹き出そうな程にセレネの顔は真っ赤になった。スナコには無効であった……
「わーーーーーーーっ」
(フルエレさんにまで胸の事をいじられたー!?)
直後にセレネは首を振りながら泣いて走って行った。
「あっセ、セレネさん!? ちっこれで勝ったとか思うなコラー」
スナコも思わず地声で負け惜しみを叫び、泣きながら走ってったセレネを追い掛けて行った……
「フルエレ殿、あの二人は? このクラウディアの民の為に戦ってくれた二人、是非皆で礼をしようと思っていたのだが」
「ううん、いいの。あの二人はああやって裏表なく本心をさらけ出す所が凄いのよ、直ぐにノコノコと戻ってくるわっ」
「そ、そういう事なのね!? 敢えてああやって勘違いさせる事で、カガチを倒せなかった悔しさを次の高みへと昇華させているのね!?」
フルエレが適当に言った事をメランは真に受けた。しかしフルエレはただ二人にちょっと意地悪してみたい乙女心が出ただけであった。
「そんな事より、貴城乃シューネ殿お初にお目に掛る。前代の王大猫乃主だ、息子達が世話になったな」
人々を避けさせ、猫乃主がシューネの前に進み出た。
「ははっお初にお目に掛れて光栄の至りで御座います、大猫乃主前クラウディア王よ。今この地は大変な事態に見舞われております。貴方様のご尊顔を拝する事が出来、民達も大変に勇気付けられた事でありましょう」
「うむ……」
人々に緊張が走る中、シューネは雪乃フルエレ女王にするのと同じ様に、胸に手を当てて跪いた。傲岸不遜な彼もよっぽどカガチ騒動で参っているのかも知れない。
「しかし王様、後を継いだ私の不徳の致す所で、兄猫名と妹猫呼が共に家を出たまま戻りません」
「いや猫名の事はもう良い、あれは自ら其方に反逆する道を選んだ。もはやこの国の者では無い。それよりも猫呼の方が心配じゃ……あれは今元気にやっておるのか」
大猫乃主は遠い目をして天井を見上げた。
「その事なら、猫呼さんなら私達と一緒に暮らしておりますわ。というよりも私はいつも猫呼の事務処理能力の高さに助けられているの! 何でもかんでも一切合切あの子に任せっきりよっ」
「フルエレさんその言い方だと家事押し付けてイジメてるみたいに聞こえますよ!?」
メランがフルエレに耳打ちした。
「いや、女王陛下の瞳を見ておれば、猫呼が安心して暮らしている様子が目に浮かびますぞ」
「それは僕も。一瞬だけですがあの子に会えました。あの子も猫名兄の事を探していて……今はまだ帰れないと」
その兄は今、サッワとププッピ温泉で羽を伸ばしていた。
「兎幸も猫呼の事大好きだよ! でも、お爺さん私と会った事ってあるの??」
兎幸が不思議そうな顔をして猫乃主を見た。
「い、いや兎幸さんと、いやいや兎幸殿に会った事など無いですぞ。何かの勘違いでしょう。この様な年寄りなど」
「そ~お?」
皆はこりゃなんかあるわと思ったが、敢えて突っ込む者は居なかった。悠久の時を生きる魔法自動人形の兎幸は、度々冬眠しながらも色々な人々と出会っている様だった……
「そんな事より父上、一体どうすればチマタノカガチを倒せるのでしょうか?」
「いつ何時奴が目覚めて再び此処に攻め込んで来るかも分かりませんな」
「連中が日中に攻撃して刺激しましたからなあ、どの様な変化を起こしますかホホ」
猫弐矢が仕切り直し、シューネと夜叛モズが危機を思い出した。
「うむ……若い頃にバックパック一つで各地を旅したワシも実はあの様な怪物は観た事が無い。しかし……どうもル・ツーもしくは蛇輪に誘引されておる事は分かった。」
「何かこの二機どちらかに関係が?」
大猫乃主はアゴに手を当てて考えた。
「おおよ……」
意気揚々とスナコとセレネが突き進むと、エントランスや廊下など仮宮殿のあらゆる場所で希望を失いうな垂れる人々が、立ち上がって目を潤ませて手を組んで頭を下げて歓迎した。
キュキュッ
『セレネさん見て下さい、人々がOH~~とか言いながら我々にひれ伏しています。よっぽど私の雷攻撃が人々を心胆寒からしめたのでありましょうなァ』
「ああっそうだろうな! 残念ながら千岐大蛇は倒せなんだが、クラウディアの人々には強烈なインパクトを与えてしまった様だよ……」
砂緒とセレネは人々の賞賛が全て自分達への物だとすっかり思い込んでいる。
「セレネさん砂緒さん、ちょっと落ち着いてくだ……」
その二人を落ち着かせようとメランが話し掛けた瞬間だった、悪フルエレがにこっと笑いながら彼女を止めた。
「もう少し泳がせましょ、ね?」
「ふフルエレさん、貴方……」
しかしその間もまるで映画十戒の様に、砂緒達が進めば進む程人々の賞賛の波は左右に広がって行く。
『よ~し、このまま司令部に突き進んで民が我らを称賛する様子を見せ付けましょう!』
「もしかしたらこのままクラウディアを支配出来るんじゃないか?」
『くっくっくっありえますね。二人してこのクラウディアに新婚旅行に来てから幾星霜、遂に夜叉夫妻としてこの地に君臨する日が来ようとは』
「な、何勝手に新婚旅行とか夫妻とか言ってるんだよ、フルエレさんの前だゾ、恥ずかしいだろーが」
セレネは軽く頬を赤らめてぷいっと横を向いた。
「せ、セレネさん、よ、良く見て」
「ダメよ」
「ヒッ」
我慢し切れずに再び止めようとするメランを、さらにフルエレがまた止めた。
ダーーーンッ!
『たのも~~、どうしたのかね? ん、司令部の連中は逃げてしまったのかね?』
遂にスナコが思い切り司令部のドアを叩き開けると、その中に居るハズの猫弐矢達はおらずもぬけの殻となっていた。
「おや~~全員逃げてしまったのかな、くくく」
等とスナコに合わせてセレネが高笑いを始めようかという直後。
「ち、父上!! とうとう此処においで下さったのですね」
「王様……この方が王様なのですか!?」
「王よ、やはり貴方は民をお見捨てにならなかった!」
スナコセレネの後ろで、部屋の外から人々の感激する声が響いた。二人はゆっくりと振り返り部屋の外を見た……
「うむ……其方に後事を託して以降は、決してこの仮宮殿には来ぬと、たとえ神聖連邦帝国の約束した高層神殿がなかなか建てられぬとも、此処には一歩たりとて近寄らぬと決めておったのであるが……雪乃フルエレ女王陛下に強く呼び止められてな……考えを変え一度戻る事とした」
人々が何重もの円になって取り囲む中心に、涙を流し跪く猫弐矢の肩と頭に優しく手を置く漁師の老人が居た。
『えっ何これ?』
「漁師マニアか? 漁師が珍しいのか??」
スナコとセレネが怪訝な顔でその様子を見ていると、後ろから腕を組んだ貴城乃シューネが話し掛けて来た。
「あの方が、瑠璃ィキャナリー様がこの国に開国を迫った時に後事を全て猫弐矢と猫名兄弟に託し、姿を隠した大猫乃主殿こと前代のクラウディア王その人だな。ついでにカガチは残念であったな」
「この方が……猫弐矢さまのお父様、そしてクラウディアの真の王様、ああぁ」
シューネの横でこの地に来たばかりのフゥーまでもが涙をボロボロ流してその様子を眺めている。
「……セレネ、スナコちゃん、貴方達はよく頑張ったわ、決してカガチに負けた事を悔やまないで。勝つ事より挑戦する事の方が大事なの! だから1Nミリも恥ずかしくないの。きっと人々は王様を称賛する振りをして、実はセレネの事も称賛してたのよ! だからセレネもその低い胸を張って強く生きて前に進んで欲しいの、いいわね? 勘違いした事は全然恥ずかしく無いからねっ」
何故かフルエレは半笑いでセレネの肩に手を置いた。
「フルエレさん傷口に塩を塗り込むみたいな……」
メランは肩をすぼめ首を振った。
カーーーーーッ
人々の賞賛が自分へでは無く、後ろから歩いて来た大猫乃主前王への物であったと気付き、一気に火が吹き出そうな程にセレネの顔は真っ赤になった。スナコには無効であった……
「わーーーーーーーっ」
(フルエレさんにまで胸の事をいじられたー!?)
直後にセレネは首を振りながら泣いて走って行った。
「あっセ、セレネさん!? ちっこれで勝ったとか思うなコラー」
スナコも思わず地声で負け惜しみを叫び、泣きながら走ってったセレネを追い掛けて行った……
「フルエレ殿、あの二人は? このクラウディアの民の為に戦ってくれた二人、是非皆で礼をしようと思っていたのだが」
「ううん、いいの。あの二人はああやって裏表なく本心をさらけ出す所が凄いのよ、直ぐにノコノコと戻ってくるわっ」
「そ、そういう事なのね!? 敢えてああやって勘違いさせる事で、カガチを倒せなかった悔しさを次の高みへと昇華させているのね!?」
フルエレが適当に言った事をメランは真に受けた。しかしフルエレはただ二人にちょっと意地悪してみたい乙女心が出ただけであった。
「そんな事より、貴城乃シューネ殿お初にお目に掛る。前代の王大猫乃主だ、息子達が世話になったな」
人々を避けさせ、猫乃主がシューネの前に進み出た。
「ははっお初にお目に掛れて光栄の至りで御座います、大猫乃主前クラウディア王よ。今この地は大変な事態に見舞われております。貴方様のご尊顔を拝する事が出来、民達も大変に勇気付けられた事でありましょう」
「うむ……」
人々に緊張が走る中、シューネは雪乃フルエレ女王にするのと同じ様に、胸に手を当てて跪いた。傲岸不遜な彼もよっぽどカガチ騒動で参っているのかも知れない。
「しかし王様、後を継いだ私の不徳の致す所で、兄猫名と妹猫呼が共に家を出たまま戻りません」
「いや猫名の事はもう良い、あれは自ら其方に反逆する道を選んだ。もはやこの国の者では無い。それよりも猫呼の方が心配じゃ……あれは今元気にやっておるのか」
大猫乃主は遠い目をして天井を見上げた。
「その事なら、猫呼さんなら私達と一緒に暮らしておりますわ。というよりも私はいつも猫呼の事務処理能力の高さに助けられているの! 何でもかんでも一切合切あの子に任せっきりよっ」
「フルエレさんその言い方だと家事押し付けてイジメてるみたいに聞こえますよ!?」
メランがフルエレに耳打ちした。
「いや、女王陛下の瞳を見ておれば、猫呼が安心して暮らしている様子が目に浮かびますぞ」
「それは僕も。一瞬だけですがあの子に会えました。あの子も猫名兄の事を探していて……今はまだ帰れないと」
その兄は今、サッワとププッピ温泉で羽を伸ばしていた。
「兎幸も猫呼の事大好きだよ! でも、お爺さん私と会った事ってあるの??」
兎幸が不思議そうな顔をして猫乃主を見た。
「い、いや兎幸さんと、いやいや兎幸殿に会った事など無いですぞ。何かの勘違いでしょう。この様な年寄りなど」
「そ~お?」
皆はこりゃなんかあるわと思ったが、敢えて突っ込む者は居なかった。悠久の時を生きる魔法自動人形の兎幸は、度々冬眠しながらも色々な人々と出会っている様だった……
「そんな事より父上、一体どうすればチマタノカガチを倒せるのでしょうか?」
「いつ何時奴が目覚めて再び此処に攻め込んで来るかも分かりませんな」
「連中が日中に攻撃して刺激しましたからなあ、どの様な変化を起こしますかホホ」
猫弐矢が仕切り直し、シューネと夜叛モズが危機を思い出した。
「うむ……若い頃にバックパック一つで各地を旅したワシも実はあの様な怪物は観た事が無い。しかし……どうもル・ツーもしくは蛇輪に誘引されておる事は分かった。」
「何かこの二機どちらかに関係が?」
大猫乃主はアゴに手を当てて考えた。
応援ありがとうございます!
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