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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
カガチ後⑫ 正体……
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『いつも一緒にいるって誰だよ、めんどくせえ奴だな……』
不気味な事を言い出す謎の声にセレネは一層恐ろしくなった。
『どうしましょう、蛇輪ル・ツー組との魔法通信が途絶しました!』
フゥーが慌てて猫弐矢と雪乃フルエレ女王を交互に見て相談した。
『セレネには何か考えがあるんでしょ、あの子に任せておけば大抵の事は大丈夫よ。大方猫弐矢さんやシューネの言う通りに千岐大蛇を誘引し続けるのがシャクに障るから、無言を貫いてるだけだと思うわ!』
『うん、僕もそんな感じがするよ。彼女が頑張ってくれてる内に、僕達が出来る事をしよう!』
偶然が物凄く好意的に解釈されていた……
『では迂回させてGSXの残機を川上に派遣しよう! フゥーには悪いが、ヌッ様にも川の流れを変える工事を手伝って欲しい!』
司令部に居残る貴城乃シューネは、彼には珍しく申し訳無さそうに言った。
『いいえ、本来なら夜明けまで戦うはずだったんです、セレネ様が頑張って下さってるのに私が休む訳には行きません!』
『僕もフルエレちゃんも頑張って手伝うよ!』
『そうね、頑張りましょう!』
セレネを最大限美化しつつ、ヌッ様組はシューネと相談して南の川の流れを変える事に決めた。
『ほらほら~~まだ分かりませんか~~? 貴方の心の友じゃないですか~~』
蛇輪の操縦席ではまだ鬱陶しいクイズが続いていた……
『うらーーー!! いい加減にせえや、はよ言えやーーっ!』
『セレネ落ち着いて、なんとなく分かった……もう私が当てるわよっ』
『ははは、メラン様お察しの通り私が日蝕白蛇輪です。いつもお世話になっております』
その操縦席でセレネはコケた。
『おーまーえーー? 喋れたんかよ!? 一体砂緒とフルエレさんが乗り始めてどんだけ経つんだよ? 今まで黙ってて何で急に突然喋り出した? 何の心境の変化だよ怖いわ』
セレネは天井や壁や床を次々に見ながら大声で叫んだ。
『いやいや喋るって結構魔法エナジーが必要になるのです。だからなるべく操縦者の負担にならない様に黙っていました。それと多少人見知りな性格と言えるかもしれません』
『人見知りとか魔法機械の癖に嘘くさいわ』
『失敬なっ!』
『え?』
今度は急に怒り出してびっくりする。
『私はこれでも元は、海と山とに挟まれた小さき王国の国宝、真実の鏡なのですよ! これまでずっとずっとフルエレ様の御幼少の頃から始まり、やがて私に搭乗してル・ツーと戦ったり月に行って砂緒と初々しく抱き合ったりキスしたりと、彼女の成長をずっと見守って来たのですよ!』
『聞きたくないわそんな話』
『いやー色々あったわねえ』
横から聞いていたメランが口を挟んだ。
『それだけではありませんよ! もちろん貴方が通学する為に私に乗り込み、中でメイド服から制服に着替えたりする時の、しなやかな貴方の肢体もしっかりと見守っていました!』
『ただの変態だろーがっ』
『安心して下さい、私は人間の男では無いのです、これからも中で着替えて下さいお願いします』
『お願いします言うてる時点でただの変態の男だろーが』
『ル・ツーは大丈夫よね?』
メランが不安気に操縦席内を見た。
『今、夜明けまで時間を潰さないといけないという緊急事態です、その為に敢えて喋る事にしたのです。さぁ、皆さんで忌憚なく話し合いましょうぞ!』
『どんなつまらん緊急事態だよ……てか、声は違うが、やっぱりなんとなく砂緒に雰囲気が似てるよなあ』
『で、ですよねえ』
何故か慌ててメランも同調する。
『そりゃそうでしょう、何故なら蛇輪である私も砂緒も元をただせば元は一枚の真実の鏡の割れた片割れ同士、同じと言えば同じ存在です』
この辺の話はセレネは度々砂緒から聞いていたが、メランは初耳であった。
『ごめん、訳が分からないわ。鏡と同体て???』
『うんメランさんこそゴメン、深く解説するのはめんどくさいから省くわ』
詳しくは是非、メドース・リガリァ攻略辺りを読んで下さい……
『……という事なのです。女王雪乃フルエレ様こと、海と山と国の夜宵姫を不幸な運命から守る為に、時間を越え転生を繰り返しやがて真実の鏡は二つに分かれ、一方は私日蝕白蛇輪として魔ローダーとなり、もう片割れはウェキ玻璃音大王や砂緒となってチャランポランに生きているのです……』
『チャランポランに生きるなよ』
長い解説を聞いてもなおメランは、にわかには信じ難い話ではあった。
『へェーー? あのおとぎ話に出て来る有名な等ウェキ玻璃音大王が砂緒さんの前世の前世だって? しかもそのでぱーとって何よ?? 意味が分からないわ……』
最近全く出て来ない忘れ去られた要素であった。
『そんで? 何であたしらがカガチを放置して帰っちゃいけない理由があるんだよ? それが聞きたいわ』
『そうでした、そこまでが長かった』
『私も聞きたいよー』
同じく長い時を生きる兎幸も興味津々だった。
『これは、私が命を懸けてお守りする雪乃フルエレ様が大変傷つく事なので、口が裂けても決して彼女に話さないと、この場に居る人間だけの話としてもらえますか?』
それまでいい加減だった蛇輪の声が真面目に語った。
『……当たり前だよ、真実の鏡だとかのあんただけじゃない、あたしも彼女を同盟の女王と見込んでお迎えしたんだ。彼女を傷付ける事は決してしないよ! なぁ兎幸先輩もメランさんも、でしょ?』
『当然』
『同じく~~』
機械の癖に一呼吸置いた。
『実はフルエレ様の不幸を修正し続ける為に私は生きていると言いましたが、ある時に気付いたのです、フルエレ様の不幸を修正すればするほど、機体内に彼女の不幸が蓄積している事に……』
『不幸が蓄積する?』
『はい、私は彼女の不幸な運命を修正していると思っていたのですが、実はそうでは無くて私は魔法クーラーの室外機の様に、彼女の不幸を分離して蓄積していただけの様なのです……』
この異世界にもクーラーはあった。
『魔法クーラーの室外機?』
『分かりやすいけどそんな単純なモノなのかよ』
メランもセレネもそれぞれ不幸な運命の固形化という話に首を傾げた。
『でもそれとチマタノカガチと何の関係があるんだよーっ!』
同じ魔法機械として飲み込みが早い兎幸が叫んだ。
『んだんだ訳が分からんが。何でそれでフルエレさんが傷ついてあたしらが帰っちゃダメなんだよ?』
『実は……あのカガチこそがその不幸の固形化した物なんです……』
『へ?』
セレネはたらっと汗が一筋流れた。
『もしかして……?』
『あのチマタノカガチは蓄積した不幸な運命を凝縮して此処に捨てて行った物です……』
不気味な事を言い出す謎の声にセレネは一層恐ろしくなった。
『どうしましょう、蛇輪ル・ツー組との魔法通信が途絶しました!』
フゥーが慌てて猫弐矢と雪乃フルエレ女王を交互に見て相談した。
『セレネには何か考えがあるんでしょ、あの子に任せておけば大抵の事は大丈夫よ。大方猫弐矢さんやシューネの言う通りに千岐大蛇を誘引し続けるのがシャクに障るから、無言を貫いてるだけだと思うわ!』
『うん、僕もそんな感じがするよ。彼女が頑張ってくれてる内に、僕達が出来る事をしよう!』
偶然が物凄く好意的に解釈されていた……
『では迂回させてGSXの残機を川上に派遣しよう! フゥーには悪いが、ヌッ様にも川の流れを変える工事を手伝って欲しい!』
司令部に居残る貴城乃シューネは、彼には珍しく申し訳無さそうに言った。
『いいえ、本来なら夜明けまで戦うはずだったんです、セレネ様が頑張って下さってるのに私が休む訳には行きません!』
『僕もフルエレちゃんも頑張って手伝うよ!』
『そうね、頑張りましょう!』
セレネを最大限美化しつつ、ヌッ様組はシューネと相談して南の川の流れを変える事に決めた。
『ほらほら~~まだ分かりませんか~~? 貴方の心の友じゃないですか~~』
蛇輪の操縦席ではまだ鬱陶しいクイズが続いていた……
『うらーーー!! いい加減にせえや、はよ言えやーーっ!』
『セレネ落ち着いて、なんとなく分かった……もう私が当てるわよっ』
『ははは、メラン様お察しの通り私が日蝕白蛇輪です。いつもお世話になっております』
その操縦席でセレネはコケた。
『おーまーえーー? 喋れたんかよ!? 一体砂緒とフルエレさんが乗り始めてどんだけ経つんだよ? 今まで黙ってて何で急に突然喋り出した? 何の心境の変化だよ怖いわ』
セレネは天井や壁や床を次々に見ながら大声で叫んだ。
『いやいや喋るって結構魔法エナジーが必要になるのです。だからなるべく操縦者の負担にならない様に黙っていました。それと多少人見知りな性格と言えるかもしれません』
『人見知りとか魔法機械の癖に嘘くさいわ』
『失敬なっ!』
『え?』
今度は急に怒り出してびっくりする。
『私はこれでも元は、海と山とに挟まれた小さき王国の国宝、真実の鏡なのですよ! これまでずっとずっとフルエレ様の御幼少の頃から始まり、やがて私に搭乗してル・ツーと戦ったり月に行って砂緒と初々しく抱き合ったりキスしたりと、彼女の成長をずっと見守って来たのですよ!』
『聞きたくないわそんな話』
『いやー色々あったわねえ』
横から聞いていたメランが口を挟んだ。
『それだけではありませんよ! もちろん貴方が通学する為に私に乗り込み、中でメイド服から制服に着替えたりする時の、しなやかな貴方の肢体もしっかりと見守っていました!』
『ただの変態だろーがっ』
『安心して下さい、私は人間の男では無いのです、これからも中で着替えて下さいお願いします』
『お願いします言うてる時点でただの変態の男だろーが』
『ル・ツーは大丈夫よね?』
メランが不安気に操縦席内を見た。
『今、夜明けまで時間を潰さないといけないという緊急事態です、その為に敢えて喋る事にしたのです。さぁ、皆さんで忌憚なく話し合いましょうぞ!』
『どんなつまらん緊急事態だよ……てか、声は違うが、やっぱりなんとなく砂緒に雰囲気が似てるよなあ』
『で、ですよねえ』
何故か慌ててメランも同調する。
『そりゃそうでしょう、何故なら蛇輪である私も砂緒も元をただせば元は一枚の真実の鏡の割れた片割れ同士、同じと言えば同じ存在です』
この辺の話はセレネは度々砂緒から聞いていたが、メランは初耳であった。
『ごめん、訳が分からないわ。鏡と同体て???』
『うんメランさんこそゴメン、深く解説するのはめんどくさいから省くわ』
詳しくは是非、メドース・リガリァ攻略辺りを読んで下さい……
『……という事なのです。女王雪乃フルエレ様こと、海と山と国の夜宵姫を不幸な運命から守る為に、時間を越え転生を繰り返しやがて真実の鏡は二つに分かれ、一方は私日蝕白蛇輪として魔ローダーとなり、もう片割れはウェキ玻璃音大王や砂緒となってチャランポランに生きているのです……』
『チャランポランに生きるなよ』
長い解説を聞いてもなおメランは、にわかには信じ難い話ではあった。
『へェーー? あのおとぎ話に出て来る有名な等ウェキ玻璃音大王が砂緒さんの前世の前世だって? しかもそのでぱーとって何よ?? 意味が分からないわ……』
最近全く出て来ない忘れ去られた要素であった。
『そんで? 何であたしらがカガチを放置して帰っちゃいけない理由があるんだよ? それが聞きたいわ』
『そうでした、そこまでが長かった』
『私も聞きたいよー』
同じく長い時を生きる兎幸も興味津々だった。
『これは、私が命を懸けてお守りする雪乃フルエレ様が大変傷つく事なので、口が裂けても決して彼女に話さないと、この場に居る人間だけの話としてもらえますか?』
それまでいい加減だった蛇輪の声が真面目に語った。
『……当たり前だよ、真実の鏡だとかのあんただけじゃない、あたしも彼女を同盟の女王と見込んでお迎えしたんだ。彼女を傷付ける事は決してしないよ! なぁ兎幸先輩もメランさんも、でしょ?』
『当然』
『同じく~~』
機械の癖に一呼吸置いた。
『実はフルエレ様の不幸を修正し続ける為に私は生きていると言いましたが、ある時に気付いたのです、フルエレ様の不幸を修正すればするほど、機体内に彼女の不幸が蓄積している事に……』
『不幸が蓄積する?』
『はい、私は彼女の不幸な運命を修正していると思っていたのですが、実はそうでは無くて私は魔法クーラーの室外機の様に、彼女の不幸を分離して蓄積していただけの様なのです……』
この異世界にもクーラーはあった。
『魔法クーラーの室外機?』
『分かりやすいけどそんな単純なモノなのかよ』
メランもセレネもそれぞれ不幸な運命の固形化という話に首を傾げた。
『でもそれとチマタノカガチと何の関係があるんだよーっ!』
同じ魔法機械として飲み込みが早い兎幸が叫んだ。
『んだんだ訳が分からんが。何でそれでフルエレさんが傷ついてあたしらが帰っちゃダメなんだよ?』
『実は……あのカガチこそがその不幸の固形化した物なんです……』
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セレネはたらっと汗が一筋流れた。
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