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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
カガチ後⑥ 禁断のお姫様抱っこ
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「い、いや、今回は砂緒はアレだな、色んな事情があってだな」
「砂緒さんは同盟の重要な役目がありますので、今回は居残ってくれてますよ! ねえ兎幸ちゃん」
「う、うんー?」
しどろもどろなセレネを庇う様に、本当はフルエレ女王に追放されてしまった砂緒と同盟の名誉を守るべくメランが適当な嘘を付いた。
「そうか、それは残念だね。砂緒くんが居ないと巨大な雷も雷の魔法剣も使えない。まあ効果があるのかどうか分からない訳だけど」
「魔法剣ならあたしも氷の魔法剣が使えるがな」
猫弐矢は蛇輪の話題であるにも関わらず、何故か名前の通り真っ黒く刺々しい意匠のル・ツー漆黒ノ天を見上げながら言った。
「私のル・ツー黒い稲妻Ⅱが気になりますか?」
「いやいや僕達のクラウディア王国の旗機、ル・ツー漆黒ノ天はカッコいいなって」
「いやいや私のですよ」
「ははは、アレは何時か返してもらうからね」
メランと猫弐矢がお互い笑顔を引きつらせながらも譲らなかった。
「じゃあもう結婚しちゃえばいいじゃないっ!」
兎幸が物凄く適当な事を言ったが、二人は思いも寄らない発言に言葉が詰まった。
「い、いや僕はそういう訳には」
しかし最初に口を開いた猫弐矢をフゥーがちらっと見た。メランや兎幸は加耶クリソベリルの事など知らない。
「それはいい考えですね、メランさんはどういうタイプが好きなんですか?」
セレネが意地悪く兎幸の冗談に乗った。
「砂緒さんみたいなタイプかな~~なんて嘘嘘」
「遠慮せずに上げますよ」
「いや要らんて」
何やらとぼけた会話が続いて、フゥーはセブンリーフ組の警戒心の無さに内心呆れていたが、立場上もう突っ込む事は出来ずに無言で聞き流した。
どどどどどどど……
「ん?」
等と魔戦車隊長に渋い顔で睨まれながらも一行が適当に時間を潰している時に、遠くの方から凄まじい速さで何かが近付いてくる様な音が聞こえて来た。
「まだ間に合ったぁーーーーーっ!」
騒音の正体は、フゥーや美柑達を追い掛けて来た紅蓮アルフォードであった。
(紅蓮!?)
しかしやって来たのは紅蓮一人では無く、彼は両手に大事にお姫様抱っこで雪乃フルエレ女王を抱えていた。
「も、もう紅蓮くん降ろして頂戴っあ、あありがとう」
「あぁゴメン気付かなかった。フルエレちゃんはい……」
突然人々の前にお姫様抱っこで現れて多少赤面したフルエレが、スカートを押さえながらピョンっと紅蓮の腕から飛び降りた。
(紅蓮くん? フルエレちゃんだと!? 紅蓮てめーーーっ! お姉さまもお姉さまよ、やはり何て恐ろしい人なのもう紅蓮を手懐けて)
なるべく声を出せないパピヨンマスク姿の美柑は、心の中で紅蓮に激怒していた。しかしそれ以上に過去のイメージと違う現在の姉の姿に戸惑ってしまう。
「フルエレさんお姫様抱っこタクシーとは豪勢ですねえ」
「やめてよセレネ、貴方達の戦闘に遅れてはダメと必死だったのよ! 他意は無いのっもう」
先程よりも激しく赤面したフルエレが両拳を握り目を閉じて叫んだ。この時点でカガチが活動再開する日没まで残り四五分と言った所である……
「美柑遅れてゴメンゴメン、フルエレちゃんをライラとか言うボディガードから引き離すのに手間取っちゃって。大丈夫だった?」
「はぁ?」
今度は何事も無かったかの様に笑顔で美柑の手を取ろうとする紅蓮に呆れかえった。
(やっぱり紅蓮て、神聖連邦帝国の王子で許嫁が何人も居るから感覚がズレきってるのね!?)
美柑はカッカッしながら紅蓮の手を弾いた。
「いいなあ私もやってもらいたいわぁ」
「うんいいよ君の名前は?」
「い、いいいですいいです」
「紅蓮てめーっ」
メランが言った言葉に紅蓮が安易に応じた直後であった。
ぎぎぎ、ぎぎぎっ
突然鈍い音を立てて、中に誰も乗っていないハズのル・ツーの片腕が振り上げられた。その拳は固く握られて、あたかも誰かに殴り掛かるかの様なポーズであった。
「げげっ!? 一人でに魔呂が動いたっ」
「ええっル・ツーにこんな機能が?」
「いや、そんな話聞いた事ないよ……」
その様子を見て、紅蓮がさっとフルエレを抱き寄せて庇った。
「フルエレちゃん気を付けてっ」
(ぐれーーーん!?)
「い、いいですいいです、大丈夫ですから」
「我が女王に勝手に抱き着くなバカッ」
今度はセレネがフルエレを奪って庇った。
ぎぎぎ……ぐおーーーっ
その様子を見ていて、今度はル・ツーが片足を上げて紅蓮を狙って踏むかの様な動作を始めた。
「ぎゃーーーっまた勝手に動いた!?」
「絶対誰か乗ってるでしょ??」
紅蓮の言葉が聞こえたかの様に、巨大な足の動きはぴたっと止まった。実はこの機体には試験的に導入された五分だけ可動出来る、大型蓄念池が搭載されていた……
「ふぉっふぉっふぉっ時として魔ローダーは不可思議な行動をする物だよ。きっとこのル・ツーの意思であろう」
気が付くと突然人々の前にみすぼらしい漁師の男が現れた。
「誰だよこの爺さん、今は関係者以外立ち入り禁止だよ」
セレネが漁師のみすぼらしい身なりを見て、あからさまに嫌な顔をする。
「おや、髪の長い美少女よ、ワシの事を忘れたかな、以前に道を教えた親切な漁師だよ」
「あーーーそんな事もあったかなあ? んー分かったからもう出てってくれや」
何処までも一般人には冷たいセレネであった。
「……セレネくん、本当にル・ツーには誰も乗っていないのかい?」
「乗ってませ~~ん!」
「そうか……」
猫弐矢は去り行く漁師を見ながら言った。
「あのう……皆さま方、再びお盛り上がりの所申し訳無いが、日没まで約三十分となりました。そろそろ千岐大蛇の目覚めに備えて頂かないと……」
遂にしびれを切らした魔戦車隊長が恐々とだが怒気を孕んで言った。巨大魔ローダー・ヌッ様に金輪と同じスキルを備えた蛇輪とが揃った時点で、一同に楽勝ムードが広がっており、特にセブンリーフ組には全く緊張感が無かった。
「そうねっじゃあフゥーちゃん早速ヌッ様とやらを生成してっ! 魔力なら私が融通するわっ!」
「は、はい……」
フルエレに促されてフゥーは球体に走った。
「砂緒さんは同盟の重要な役目がありますので、今回は居残ってくれてますよ! ねえ兎幸ちゃん」
「う、うんー?」
しどろもどろなセレネを庇う様に、本当はフルエレ女王に追放されてしまった砂緒と同盟の名誉を守るべくメランが適当な嘘を付いた。
「そうか、それは残念だね。砂緒くんが居ないと巨大な雷も雷の魔法剣も使えない。まあ効果があるのかどうか分からない訳だけど」
「魔法剣ならあたしも氷の魔法剣が使えるがな」
猫弐矢は蛇輪の話題であるにも関わらず、何故か名前の通り真っ黒く刺々しい意匠のル・ツー漆黒ノ天を見上げながら言った。
「私のル・ツー黒い稲妻Ⅱが気になりますか?」
「いやいや僕達のクラウディア王国の旗機、ル・ツー漆黒ノ天はカッコいいなって」
「いやいや私のですよ」
「ははは、アレは何時か返してもらうからね」
メランと猫弐矢がお互い笑顔を引きつらせながらも譲らなかった。
「じゃあもう結婚しちゃえばいいじゃないっ!」
兎幸が物凄く適当な事を言ったが、二人は思いも寄らない発言に言葉が詰まった。
「い、いや僕はそういう訳には」
しかし最初に口を開いた猫弐矢をフゥーがちらっと見た。メランや兎幸は加耶クリソベリルの事など知らない。
「それはいい考えですね、メランさんはどういうタイプが好きなんですか?」
セレネが意地悪く兎幸の冗談に乗った。
「砂緒さんみたいなタイプかな~~なんて嘘嘘」
「遠慮せずに上げますよ」
「いや要らんて」
何やらとぼけた会話が続いて、フゥーはセブンリーフ組の警戒心の無さに内心呆れていたが、立場上もう突っ込む事は出来ずに無言で聞き流した。
どどどどどどど……
「ん?」
等と魔戦車隊長に渋い顔で睨まれながらも一行が適当に時間を潰している時に、遠くの方から凄まじい速さで何かが近付いてくる様な音が聞こえて来た。
「まだ間に合ったぁーーーーーっ!」
騒音の正体は、フゥーや美柑達を追い掛けて来た紅蓮アルフォードであった。
(紅蓮!?)
しかしやって来たのは紅蓮一人では無く、彼は両手に大事にお姫様抱っこで雪乃フルエレ女王を抱えていた。
「も、もう紅蓮くん降ろして頂戴っあ、あありがとう」
「あぁゴメン気付かなかった。フルエレちゃんはい……」
突然人々の前にお姫様抱っこで現れて多少赤面したフルエレが、スカートを押さえながらピョンっと紅蓮の腕から飛び降りた。
(紅蓮くん? フルエレちゃんだと!? 紅蓮てめーーーっ! お姉さまもお姉さまよ、やはり何て恐ろしい人なのもう紅蓮を手懐けて)
なるべく声を出せないパピヨンマスク姿の美柑は、心の中で紅蓮に激怒していた。しかしそれ以上に過去のイメージと違う現在の姉の姿に戸惑ってしまう。
「フルエレさんお姫様抱っこタクシーとは豪勢ですねえ」
「やめてよセレネ、貴方達の戦闘に遅れてはダメと必死だったのよ! 他意は無いのっもう」
先程よりも激しく赤面したフルエレが両拳を握り目を閉じて叫んだ。この時点でカガチが活動再開する日没まで残り四五分と言った所である……
「美柑遅れてゴメンゴメン、フルエレちゃんをライラとか言うボディガードから引き離すのに手間取っちゃって。大丈夫だった?」
「はぁ?」
今度は何事も無かったかの様に笑顔で美柑の手を取ろうとする紅蓮に呆れかえった。
(やっぱり紅蓮て、神聖連邦帝国の王子で許嫁が何人も居るから感覚がズレきってるのね!?)
美柑はカッカッしながら紅蓮の手を弾いた。
「いいなあ私もやってもらいたいわぁ」
「うんいいよ君の名前は?」
「い、いいいですいいです」
「紅蓮てめーっ」
メランが言った言葉に紅蓮が安易に応じた直後であった。
ぎぎぎ、ぎぎぎっ
突然鈍い音を立てて、中に誰も乗っていないハズのル・ツーの片腕が振り上げられた。その拳は固く握られて、あたかも誰かに殴り掛かるかの様なポーズであった。
「げげっ!? 一人でに魔呂が動いたっ」
「ええっル・ツーにこんな機能が?」
「いや、そんな話聞いた事ないよ……」
その様子を見て、紅蓮がさっとフルエレを抱き寄せて庇った。
「フルエレちゃん気を付けてっ」
(ぐれーーーん!?)
「い、いいですいいです、大丈夫ですから」
「我が女王に勝手に抱き着くなバカッ」
今度はセレネがフルエレを奪って庇った。
ぎぎぎ……ぐおーーーっ
その様子を見ていて、今度はル・ツーが片足を上げて紅蓮を狙って踏むかの様な動作を始めた。
「ぎゃーーーっまた勝手に動いた!?」
「絶対誰か乗ってるでしょ??」
紅蓮の言葉が聞こえたかの様に、巨大な足の動きはぴたっと止まった。実はこの機体には試験的に導入された五分だけ可動出来る、大型蓄念池が搭載されていた……
「ふぉっふぉっふぉっ時として魔ローダーは不可思議な行動をする物だよ。きっとこのル・ツーの意思であろう」
気が付くと突然人々の前にみすぼらしい漁師の男が現れた。
「誰だよこの爺さん、今は関係者以外立ち入り禁止だよ」
セレネが漁師のみすぼらしい身なりを見て、あからさまに嫌な顔をする。
「おや、髪の長い美少女よ、ワシの事を忘れたかな、以前に道を教えた親切な漁師だよ」
「あーーーそんな事もあったかなあ? んー分かったからもう出てってくれや」
何処までも一般人には冷たいセレネであった。
「……セレネくん、本当にル・ツーには誰も乗っていないのかい?」
「乗ってませ~~ん!」
「そうか……」
猫弐矢は去り行く漁師を見ながら言った。
「あのう……皆さま方、再びお盛り上がりの所申し訳無いが、日没まで約三十分となりました。そろそろ千岐大蛇の目覚めに備えて頂かないと……」
遂にしびれを切らした魔戦車隊長が恐々とだが怒気を孕んで言った。巨大魔ローダー・ヌッ様に金輪と同じスキルを備えた蛇輪とが揃った時点で、一同に楽勝ムードが広がっており、特にセブンリーフ組には全く緊張感が無かった。
「そうねっじゃあフゥーちゃん早速ヌッ様とやらを生成してっ! 魔力なら私が融通するわっ!」
「は、はい……」
フルエレに促されてフゥーは球体に走った。
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